東証マザーズ上場の「アイ・シー・エフ(ICF)」(現オーベン)が、大阪市の広告会社を買収する際に過大評価した虚偽の企業情報を公表した疑いが強まり、大阪府警と証券取引等監視委員会が強制捜査に乗り出すという記事。
「今回、過大評価された疑いが強いとされるのは、「大阪第一企画」。04年12月、アイ社は「主要な新聞社や雑誌社との取引実績がある」などとして大阪第一企画に約8億円の評価をつけ、株式交換の形で買収すると公表した。
関係者によると、大阪第一企画は同年9月末に債務超過に陥っていたが、翌月から元暴力団幹部の男(57)が実質的に経営する情報提供会社「梁山泊」からの広告の発注量が急増し、業績は一気に好転した。
しかし、実際の業務の大半は書面のやりとりだけで、梁山泊と関係が深い別の広告会社に丸投げされていた。売上高は事実上の水増しで、公表された取引実績は実態に乏しかったという。」
「梁山泊」がこの広告会社に名目だけであれ仕事を回すこと自体は違法ではないのでしょう。しかし、そのことにより買収先の評価額を意図的に水増しし、その水増しされた評価額に基づいて自己株式を交付したのであれば、詐欺または(ICFの経営者が絡んでいる場合には)背任になります。
バージン諸島の会社利用し株「還流」か ICF疑惑
こちらの記事によれば、そもそも、株式交換で自己株式を交付した相手は、広告会社のもともとのオーナーではなく別の投資会社だったようです。ライブドア事件では、株式交換の実質的な相手であるファンドが連結範囲かどうかで議論になりましたが、今回のケースでは、ICFと投資会社が外部の特定のグループの支配下にあったという疑惑であり、連結問題ではありません。しかし、前にも書いたように、一連のスキームの利益が会社本体ではなく、外部(経営者を含む)に吸い上げられたのであれば、ライブドアのケースより悪質だといえます。
「IT関連会社「アイ・シー・エフ」(ICF)をめぐる不透明な企業買収疑惑で、本来はアイ社と広告会社オーナーとの間で直接行われたはずの株式交換が、実際には取引直前に広告会社を買収した租税回避地のカリブ海・英領バージン諸島の投資会社との間で行われていたことがわかった。投資会社はアイ社と密接な関係にあったといい、新株がアイ社関係者に還流した可能性がある。」
このケースが、記事に書かれているようなスキームだったとして、不正な財務報告に該当するかどうかは微妙なところです。この買収の会計処理をパーチェス法でやっていれば、買収先の資産(とくにのれん)を過大計上していたということになります(キャッツ事件と同じ構図です)が、持分プーリング的処理でやっている場合には、買収先の適正な簿価を引き継いでいる限り、特に問題はないということになります。
契約書の日付を操作か 株価つり上げ疑惑のICF
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