日本公認会計士協会は、法規委員会研究報告第10号「財務情報の保証業務等の契約書の作成について」と同第11号「監査及び四半期レビュー契約書の作成について」を、2009年4月24日付で公表しました。
プレスリリースによれば、監査契約書の研究報告(11号)の方は、監査約款の見直しを行ったようです。
・守秘義務が解除される正当な理由として、「五 受嘱者が、監査業務において外部専門家を利用する場合」を追加
・監査報告書等の利用に関して、「転載等をする場合には、監査の対象となった財務諸表等及び内部統制報告書と一体として利用しなければならない。」旨を追加
・契約の解除に関連して、「委嘱者は、受嘱者から提出を受けた受嘱者の異動に至った理由及び経緯等に係る意見書等に記載されている内容をそのまま臨時報告書に記載しなければならない。」との条項を追加
といった点が比較的重要だと思われます。
その昔は、印紙代節約のため、契約書を省略したり1部しか作らずコピーで代用したりといったこともあったようですが、さすがに今はきちんと契約締結するよううるさくいわれます(当然といえば当然ですが)。
10号の方は、「財務情報の保証業務等の契約書」が対象で、具体的にはレビューと合意された手続の契約書を詳しく規定しています(ひな型もあり)。
我が国には、金商法に基づく四半期レビューの基準以外に財務情報のレビューの実施基準がないといわれています。この10号のひな型では日本の会計基準で作成された財務諸表を対象に「レビューに関する国際レビュー業務基準に準拠してレビューを行う」という例になっています。
つまり、
財務諸表・・・日本基準
レビュー・・・ISRE(国際会計士連盟による基準)
という実務を協会が認めたということになるのでしょう。
(補足)
監査報告書を監査の対象となった財務諸表等及び内部統制報告書と一体として利用するというのは正しい姿なのですが、J-SOXでは、監査報告書は有価証券報告書の中に含まれるのに対し、内部統制報告書は、有価証券報告書には含めないで、有価証券報告書とあわせて提出するルールです。つまり、厳密にいうと、もともと監査報告書と内部統制報告書は一体になっていないわけです。
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