日産ゴーン事件関連記事。ゴーン氏の報酬過小記載分といわれる額を足すと、株主総会で決議した金額を超えるとのことです。
「日産自動車の前会長、カルロス・ゴーン容疑者(64)の報酬過少記載事件で、日産の全取締役の報酬総額が、ゴーン容疑者の過少記載分を加えると、直近2年分は株主総会で決議した上限額を超えていたことが11日、関係者への取材で分かった。会社法の規定に違反していた疑いがあり、東京地検特捜部は、再逮捕容疑に含まれるこの2年分の過少記載は特に悪質とみて調べている。」
「日産では20年6月の株主総会で全取締役の報酬総額について、上限額を29億9千万円と決定。有価証券報告書によると、直近3年分の報酬総額は、27年度15億3500万円(うちゴーン容疑者記載分10億7100万円)▽28年度18億3600万円(同10億9800万円)▽29年度15億6400万円(同7億3500万円)-だった。
関係者によると、ゴーン容疑者の実際の報酬額は27年度が約22億円、28、29年度はそれぞれ約24億円。ゴーン容疑者の過少記載分を加えた全役員の総額は27年度は約27億円だが、28年度は約31億円、29年度は約32億円で、この2年度は上限額を超えたことになる。」
ということは、少なくとも、総会で承認された額を超過する分は、会社に支払義務はない、したがって会社の費用ではなく、未払金を計上することもできない、当然、有報の役員報酬欄の記載も不要ということになります。
また、そもそも、10年前の総会で承認されたのは、あくまで役員報酬ですから、承認された限度額の中から役員退職後のコンサル報酬を支払うことまで、承認したわけではないでしょう。
「ゴーン前会長に役員報酬一任」 日産取締役会が文書化(朝日)
こちらの記事は、取締役会が、ゴーン氏への過小記載とされる分の報酬を承認したのかどうかという点に関わる問題を取り上げています。
「日産自動車の前会長カルロス・ゴーン容疑者(64)が役員報酬を過少記載したとして逮捕された事件で、ゴーン前会長に役員報酬の決定を一任することが取締役会で2年ごとに諮られ、決定事項として文書に残されていたことが関係者への取材でわかった。東京地検特捜部は文書を入手し、報酬額の確定に関する重要な証拠とみている模様だ。」
「関係者によると、取締役の任期(2年)に合わせる形で2年に1回、役員の報酬額はゴーン前会長に一任すると取締役会で決定していた。前会長が社長兼最高経営責任者(CEO)だった時期は「CEOに一任」とし、17年に会長に退くと「会長に一任」と変更された。異論はなく、取締役会の内容は決定事項として文書に残されているという。」
上記産経記事によれば、ゴーン氏の過小記載報酬とされる金額を含めると、総会決議を若干超過しているとはいえ、大部分は、総会で承認された限度額に収まるようです(ゴーン氏の報酬を大幅に減額した後も限度額を減らしてなかったのでそうなる)。その限度額を、どう配分するかは取締役会の権限ですから、そこがゴーン氏に一任されていれば、確定した報酬だと、特捜部はいいたいのでしょう。
しかし、今述べたように、株主総会で承認したのは、あくまで役員報酬であり、また、それを受けて、取締役会でゴーン氏一任を決めたのも、役員報酬の配分に限った話でしょう。役員退任後のコンサル報酬支払まで一任したといえるのでしょうか。そんなことが認められるのであれば、総会で承認された報酬限度額の余りは、一任された者がどんな名目でも支出できるということになりますが、会社法の解釈としてそういうことはありえないのではないでしょうか。法律専門家の見解を聞きたいところです。
いずれにしても、会社の正式の機関で承認されていない限り、ゴーン氏らがどんな精緻な文書を作ろうと、会社を法的に拘束することはなく、したがって、会計上も費用や未払金・引当金を計上すべきではない(当然、役員報酬の記載にも含めるべきではない)と思われます。
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