東芝の5月15日の記者会見の模様を伝える記事。このページと次のページが、質疑応答の部分です。
監査にふれている箇所を一部抜粋しました。
「記者1 テレビ東京のオオハマです。社長におうかがいします。先月と比較した場合、いわゆる監査法人との溝というのは、平行線のままなのでしょうか。それとも解消されつつあるのでしょうか。来月、有価証券報告書の提出も控えていますが、そちらの目処というのはたっていらっしゃいますか?
綱川智氏(以下、綱川) 現在、監査法人さんとは、双方とも前向きに決算手続きをすすめようと、いわゆる協力関係、協調してやろうということで、話しております。」
「記者2 朝日新聞のカワダと申します。冒頭で社長がおっしゃっていたように、今回の赤字9,500億円について、重く受け止めるとおっしゃっていましたが、具体的にどういうふうに受け止めていらっしゃるのかという点と。あと今回、決算短信が公表できなかった理由を詳しく教えてください。一方、見通しについてはステークホルダーのために発表したということですが、その点も詳しく教えてください。
綱川 第1点目ですけど、これだけ巨額の赤字を出したということで、このあたりは大変重く受け止めています。それから決算につきましては、手続き等の詳細について回答できないわけですが、先ほども申し上げたとおり、我々のスタンスとしては、監査に協力して、監査に制約を与えることはしないと。それから決算書類等について、具体的なご指摘を受けているわけではないので、誠実に協力していくという姿勢で、続けてまいりたいと思います。
また見通しということで、決算短信については、まだ発表できないということで、数字を出させていただきました。
記者2 それに絡んで、監査法人さんとの関係で、この発表を見ますと、調査については前回完了したとおっしゃっていましたけども、調査を含めて終わってないということなんですか?
綱川 調査につきまして、我々執行サイドとしては、会社内の監査委員会のほうにも協力しますし、PwCあらたさんという、独立系監査法人に対しても協力するということでございました。前回、2月、3月と調査をしていて、4月11日の時点でほぼ調査は終わったと、監査委員会のほうで考えたということであります。
今回の年度に関しましては、まだ監査手続きが完了してないので、今後も調査を続けるということです。」
「記者3 すいません。東洋経済、ヤマダと申します。3点ございます。1点目が、監査法人の溝がまだ埋まっていないんですけれども、これに関してS&Wの調査の、損失の認識時期の問題というふうにまだ理解してていいのかということと、前回の時に一定の確度をもって損失認識できた証拠がないというようなことをおっしゃってたんですけども。
逆の言い方をすると、確度はなくても一定の損失認識みたいなことをどこかのレベルでしてたんじゃないかなと思うんですが、数十万通のメールと数十人のインタビューをやったということですので、このへんがどこまで損失というのが認識されていて、どういうふうにあがらなかったのか、それが監査法人とどういうふうにもめているのかについて教えてください。これがまず1点目です。
綱川 監査法人さんとの溝という話ですが、とくに溝ということではなくて、両者一体となって、早くステークホルダーのみなさまのご心配を一刻も溝を埋めるように協力してやっているということでございますが、その1つのアイテムにこのストーン・アンド・ウェブスターの、この認識の時期ということがあるというのは、それは事実でございます。
それで、今、調べているわけですけど、ポイントは、具体的に決算書類についてどこが悪い、どこがバランスシートの問題だという具体的なご指摘までいっていないということで、それが事実でございまして、ただその示唆のあったところの調査を続けているという状況でございます。
記者3 いや、監査でどうかというのではなくて、会社としては確度がなくてもどのぐらい……決算に織り込むというのは確かに確度が必要だと思いますので、ゆるいものでもなんらかの損失認識というのはあったんでしょうか? それはどういうレベルであって、なぜあがらなかったんでしょうか?
綱川 我々執行部としては、とくに認識してるものはございません。」
「記者4(注:共同通信) 次に決算に関連することなんですが、先ほど調査のほうは継続というお話もあったんですけども、前回、佐藤委員長のほうで、過去の部分についてはもう調査する必要がないという趣旨の発言をされたと記憶をしているのですが、過去の部分の調査についても、今回、年度末決算を出すにあたり、PwCあらたさんが必要だとおっしゃるのであれば応じる意向はあるのでしょうか?
綱川 できるだけ協力して、調査に応じたいと考えています。
記者4 その場合、過去の調査まで遡ると、通常で考えれば、とても有価証券報告書、期限内に難しいかと思うんですけれども、これは延長やむなしでも調査に応じるんでしょうか?
綱川 そのへんはやっぱり期限というものもあるので、そのへんは話し合いの下で、お互いに話し合って協調して監査手続を進めたいと思っています。」
「記者7 NHKのヤマダと申します。社長におうかがいいたします。先ほど、回答の中で監査法人とは引き続き協調してやっていくという話だったのですが、これはPwCあらたと引き続きやっていく、今のところ、監査法人の変更はないということでよろしいでしょうか?
綱川 16年度の3月期、これに関しまして、PwCあらたさんと、しっかりやっていこうということです。今後の話については、特に決めていることはありません。
記者7 では、第1期の監査法人の変更については、まだわからないということですね。
綱川 特に何か決まったということは聞いていません。」
「記者7 時間をかければ、監査法人を変更せずに決算を確定できるという自信があるということでよろしいでしょうか
綱川 そのように努めてまいりたいと思います。」
「記者9 時事通信のオオツカと申します。2問あります。監査のことに対するスタンスでお聞きしたいのは、これから時間がかかっていくなかで、なんとしてもちゃんと監査意見、適正意見もらおうと考えるのか、それともどこかの時点でやはり限界があるということで、もうタイムリミットが来たら、その時点でまた調査を、この前のように打ち切って、決算発表を行おうと考えるのか、どちらですか?
綱川 監査意見をいただけるように、我々協力して進めていきたいと思います。
記者9 それは打ち切ってやることはしないということですか?
綱川 今の時点ではそのようなことは考えておりません。」
「記者10 週刊ダイヤモンドのムライです。監査について改めて確認させていただきたいんですけれども。現状、3Qで完了した調査について、改めて4Qに入ってその調査をもう一度やっていると、そういう理解でいいんですか?
平田 お答えします。3Qの時点では、弊社の監査委員会のほうの調査の結論をまとめたというところで、残念ながらその時点では監査法人様、あらたさんのご評価がまだ終わっていないということで、そのご評価を継続的にしていただいているということです。
それでその評価というのは、なにも一方的にあらたさんだけがやるという話ではなくて、いろいろな当社に対するご質問、それに対して我々が回答していくというかたちでの評価が進んでまいりますので、監査法人さんと東芝との間で協同して今、評価を進めているという状況でございます。
この評価がちょっと遅れておりまして、きちんと決算が出せない状況になってございまして、大変申し訳ないと思ってございます。
記者10 今、評価手続きのなかでPwCあらたさんから質問が来ているということですけれども、主に先方の疑問、質問のポイントというのはどういったところにあるんでしょうか?
平田 評価の中身については、大変申し訳ないんですけれども、いろいろな事情がございますので、この場で具体的なお話は控えさせていただきたいと思います。今回延びた理由として、やはりストーン・アンド・ウェブスターのここの損失、時期の問題ですね、こういったところが主体になっているとお考えいただいてけっこうだと思います。
記者10 その損失認識時期について、改めて東芝としてもう一度調査していると、そういうことでいいんですか?
平田 はい。弊社としては、今のところ、特段15年度の決算については問題がないと思ってございますし、あらたさんのほうから改めて特定して、まあ会計用語で申し訳ありませんけれども、「この仕訳がおかしい」ということを伝えられているわけではございません。
ただ、監査法人様がきちんと評価をしていくというのは、これはもう監査手続でございますので、監査法人様のご意向に沿って弊社も対応して動いているというところでございます。
記者10 お話聞いてるかぎり、かなり溝があるというふうに理解をせざる得ないんですけれども、この点も改めてなんですけれども、6月末に向けて、この期限も間に合わない可能性があるというふうに考えてよろしいんですか? 社長にお願いしたいんですけど。
綱川 そのようなことがないように、先ほどから申し上げているように、協調して努力をしたいと思っています。」
記者たちの方は、無限定適正は無理だと、会社にいわせたかったようですが、会社側は、まだ現監査人(あらた)に協力して、無限定を目指すのだといっています。前回の会見のときのような、これ以上監査法人につきあっていられない的な発言は控えているようです。
また、もめているポイントとして、損失の認識時期の問題があるということは、会社側も認めているようです。東洋経済の記者が「ゆるいものでもなんらかの損失認識というのはあったんでしょうか」としつこく聞いているのに対し、社長が「我々執行部としては、とくに認識してるものはございません」と回答しているのは、微妙な発言です。裏読みすれば、執行部は知らなかった(蚊帳の外だった)が、現地(WHの現場)は早くから知っていた(かもしれない)ということになります。
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