会計ニュース・コレクター(小石川経理研究所)

監査報告書の変革 - 「監査上の主要な検討事項(KAM)」の導入 -(KPMGより)

監査報告書の変革 - 「監査上の主要な検討事項(KAM)」の導入 -

KAM導入などの監査基準改正についての解説記事。会計士協会の監査基準担当の理事が書いているので、信頼できる内容と思います。

未公表情報がKAMとして開示されることについては、そんなに心配する必要はないとのことです。

「...企業の未公表の情報はすべてセンシティブな情報とは限りません。日本公認会計士協会が2017年に行った試行の結果、監査上の主要な検討事項の記述に含まれる企業の未公表の情報には、業界知識としては公知であるものや会計処理の流れを表現しているだけの情報も含まれており、そのような情報については、あまり心配する必要はないと思われます。センシティブな情報に該当するものとしては、例えば訴訟案件の詳細や取引先との間で守秘義務を負っているような企業機密に属する情報などが挙げられますが、そのような本当にセンシティブな部分については、記述の詳細さのレベルや表現を調節することにより、固有情報を含めつつ監査上の主要な検討事項を記述することは十分可能であると考えられます。」

監査以前の問題として、日本基準による注記が貧弱であることを指摘しています。

「試行において、監査上の主要な検討事項を導入する際の課題として認識されたのは、IFRSまたは米国会計基準に比べ、日本基準の財務諸表における注記が相対的に少ないため、監査上の主要な検討事項を記述する際に企業の未公表の情報に触れる可能性が高くなるのではないかという点です。会計基準による差は、監査上の主要な検討事項の記述レベルにも投影されることが想定され、監査部会においても、日本の開示の在り方についての議論をまずすべきという声も聞かれたところです。

日本基準においても、IFRS等と同様に、財務諸表等規則等の開示規則において、規則で特に定める注記のほかにも、利害関係者が適切に財務諸表を理解するうえで必要と認められる事項については注記しなければならないという、追加情報のバスケット条項が定められています。しかし、日本における開示慣行として、会計基準や規則で明示的に注記が求められている以上に開示することについては、一般に消極的であったように思われます。監査上の主要な検討事項により、利用者からのフィードバックを得る機会が促進され、従来の開示慣行の見直しが促される可能性があります。そのため、なるべく早い段階から、導入の議論を始めることが円滑かつ有意義な導入につながると考えられます。」

注記が貧弱なのは、金融庁や財務局など、企業開示を監督する役所が、規則さえ満たしていればいい、という考えで有報などをチェックしていて、情報の利用者にとって必要な重要情報がもれなく、かつわかりやすく開示されているかという観点が欠けていることも背景にあるのでしょう。

また、複数の処理方法がある場合しか、会計方針の注記をしなくていいというルール(企業会計原則、財規など)もおかしいと思います。複式簿記の原理から説明する必要はないとしても、財務諸表利用者の頭の中に、業種特有のルールも含めて、会計基準がすべて入っている(したがってどういう場合にひとつの処理しかなく、どういう場合に複数の処理があるのかと、それぞれの会計処理の意味するところを利用者がすべてわかっている)わけではないのですから、重要項目については必ず会計方針を書かせるようにすべきでしょう。例えば、会計方針で、のれんの減損テストについて、減損の有無にかかわらず、説明してあれば、KAMでのれん減損について書いても、それほど唐突感はないでしょう。
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