企業の検査データ改ざん問題などの不祥事を例に挙げて、内部統制報告・監査制度は役立たずだというコラム記事。
そもそも検査データ改ざんは、内部統制監査の対象外ですが...(ただし、それに関わる損失の会計処理など間接的には関係します。)
「もちろん、会社法が求める内部統制と、金融商品取引法が求める内部統制とでは守備範囲が異なることはわかる。内部統制報告書で監査法人がチェックするのは、金商法上の財務報告に関連したプロセスが中心であることは百も承知だ。
しかし金商法の目的に投資家の保護を掲げている以上、現在の内部統制報告書のあり方が投資家保護には何の役にも立っていないように見えるのは筆者だけではあるまい。「根拠となる法律が異なる」の一言で片付けられない。
以前、三菱自動車や東洋ゴム工業がやはり製品データの改竄に手を染めていたことが発覚したとき、このコラムで「金融庁の幹部が、三菱自動車などの内部統制報告書は虚偽記載ではないのか、という問題意識を持っている」と紹介したことがあるように、行政もそのあり方に違和感を持っている。
しかも、「財務報告の信頼性」だけなら十分に担保されているのかと言えば、そうではあるまい。近年の粉飾決算を振り返れば、どう大目に見ても、報告書もその監査もまったく当てにならなかった事例もあったではないか。企業側もたった2ページの報告書を作成するのに、バカにならない大きなコストを負担しているのに、それが無駄になっているようにしか見えない。別の言い方をすれば、内部統制報告書という制度が有用性も実効性も持たず、危地に立たされているということだろう。」
監査付きの内部統制報告書を出す出さないにかかわらず、会社には内部統制を整備・運用する義務があるわけですから、J-SOXだけのための追加コストがどのくらいなのだろうかとも思いますが、制度が始まって10年くらいたっているので、見直しの検討は必要なのでしょう。制度をいったん作ってしまうと、その効果の検証がなされないまま、ずるずると継続していくという傾向があるようです。
なお、会計士協会機関誌「会計・監査ジャーナル」8月号で解説が掲載されていますが、会計士協会から「内部統制報告制度の運用の実効性の確保について」という研究報告が出ており、「開示すべき重要な不備」事例の分析、制度運用上の課題などを示しています。
当サイトの関連記事(上記研究報告について)
その2(上記研究報告にふれた協会記者会見について)
会計スキャン 武田薬品工業(FACTA)(記事冒頭のみ)
FACTAの8月号では、武田薬品工業のシャイアー社買収を取り上げているようです。基本的に経営判断の問題なので、よほど手続きがずさんであるなどの事情がない限り、内部統制でこれにストップをかけるのは難しいでしょう。もちろん、買収後ののれん減損を適切に行うのには有効ですが、後の祭りです。
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rey
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