オリンパスの粉飾が発覚したことにより、日本の大監査法人の評判が脅かされているという記事。
Olympus’s disclosure this week of a financial cover-up threatens to shatter the reputation of Japan’s leading auditing firms.
2009年6月までオリンパスの監査人であったあずさ監査法人が、ジャイラス買収の会計処理方法について意見が対立していたにもかかわらず、2009年3月期の財務諸表を承認したのはなぜなのか、謎となっている。
There is a mystery over why KPMG Azsa, which was Olympus’s auditor until June 2009, signed off on Olympus’s accounts in March 2009, even though it disagreed with the way Olympus accounted for its acquisition of Gyrus, the UK medical equipment maker Olympus acquired in 2008.
オリンパスはフィナンシャルアドバイザーに、ジャイラスの買収価格の約3分の1に相当する報酬を支払った。これは、ほとんどのM&Aのアドバイザリー報酬が買収価格の約1パーセントであることを考えると、異常に高額である。
Olympus paid its financial adviser about one-third of the $2.2bn it paid for Gyrus, an extremely high fee considering that most M&A advisory fees are about 1 per cent of the purchase price.
菊川会長(当時)はウッドフォード氏に対し、あずさ監査法人との間で、ジャイラスの会計処理に関して衝突があり、新日本監査法人に替えたと電子メールで述べていた。
Tsuyoshi Kikukawa, then Olympus chairman, admitted in an email to Michael Woodford, the fired chief executive, that Olympus had switched auditors from KPMG Azsa to Ernst & Young ShinNihon after it clashed with the former over the accounting of the Gyrus acquisition.
新日本監査法人が2009年6月に監査人を引き継いだ際に、あずさ監査法人が新日本監査法人に対し、どの程度の情報を提供したのかについても、問われるであろう。
Questions will also be asked about the extent of information KPMG Azsa provided Ernst & Young ShinNihon, when the latter took over as Olympus’s auditor in June, 2009.
日本の会計士協会のルールによれば、後任監査人は、会計処理に関して会社との間で対立があったかどうかを含む13項目を前任監査人に質問しなければならない。
Under Japanese accountancy rules, when an auditor takes on a company it is required to ask its predecessor 13 clearly defined questions, including whether there had been disagreements with the company over the handling of the accounts.
ちなみに、監査基準委員会報告書第33号「監査人の交代」(注:最新版ではありません。)13項をみると、監査契約締結前に質問すべき項目として、たしかに13項目挙がっていました(以下のとおり)。
(1) 経営者の誠実性について疑義があるか否か。
(2) 経営者から特定の報告内容を要請される等、意見表明における独立性を脅かす圧力があるか否か。
(3) 監査人の交代事由に関する前任監査人の見解。
(4) 被監査会社に都合の良い監査意見を求めている兆候があるか否か。
(5) 会計処理、表示及び監査手続に関して被監査会社との間に重要な意見の相違があるか否か。
(6) 経営者による不正若しくは従業員による重要な不正が存在している、又は兆候があるか否か。
(7) 重要な違法行為が存在している、又は存在している可能性が高いか否か。
(8) 重要な訴訟事件に関わっている、 又は関わっている可能性が高いか否か。
(9) 財務報告に係る内部統制に重大な欠陥があるか否か。
(10) 継続企業の前提に関する問題が存在するか否か。
(11) 監査の実施に必要な資料が提供されないなど、 監査業務への協力が得られない可能性が高いか否か。
(12) 期中交代の場合、既に発見している未訂正の虚偽の表示があるか否か。
(13) 過年度において、 最終的には訂正されたものの監査の過程で発見された重要な虚偽の表示があったか否か。
この事件については、会計士協会も調査を始めたそうですが、このような引き継ぎが適切に行われたのか、後任監査人は引き継ぎの結果を受けて、どのようなリスク評価を行い、監査手続に反映させたのかについて、厳しく問われることになります。
もちろん、FT紙がいっているように、前任監査人は、さらに、会社との意見の対立をどのように解消して、無限定適正意見を出したのかについても、調べられるでしょう。
このほか、青山学院の八田教授の厳しいコメントも掲載されています。
“Cash was being transferred, so if you analysed things thoroughly it should have raised questions. But there were no claims [by the auditors],” says Shinji Hatta, professor at the Accountancy School of Aoyama Gakuin University in Tokyo.
If the auditor had paid more attention to those signs, it could have sounded the alarm much earlier, he says. “For that, they bear a grave responsibility,” he says.
オリンパス:監査法人、09年に買収費用の不自然さ指摘(毎日)
オリンパス問題指摘の監査法人「クビ」に(日刊スポーツ)
Olympus: Where were the auditors?(英インディペンデント紙)
和文はこちら
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【コラム】監査法人はどこにいて、何を知っていたのか-J・ワイル(ブルームバーグ)
オリンパス 会計監査の調査も(NHK)
新日本監査法人年次報告書2011(PDFファイル)
