系列ノンバンクの不良債権、ダミー会社使い隠す 振興銀（朝日より）

系列ノンバンクの不良債権、ダミー会社使い隠す　振興銀

破綻した日本振興銀行が系列ノンバンクが抱える不良債権を隠すため、担保不動産を裁判所の競売で高値で買い取る「自己競落」を繰り返していたという記事。

「朝日新聞の調べでは、昨年１１月以降で、担保不動産を競落ビークルが自己競落した例が１４件見つかった。裁判所が不動産鑑定士の鑑定評価などから決める基準価格が計約２２億円なのに対し、落札金額は約３倍の計約６０億円だった。

　１４件で登場する競落ビークルは「飯田橋不動産販売」「ルーツ」「ボス」など７社で、いずれも振興銀と関係が深い融資先でつくる「中小企業振興ネットワーク」の関連会社。ルーツとボスは資本金が１万円しかなかった。」

「自己競落にかかわっていた「ネットワーク」の企業幹部は「振興銀の旧経営陣の指示で、ノンバンクの不良債権を隠すためにやった。競落ビークルはペーパーカンパニー。リーマン・ショック後の不況で融資先が経営難になり、同様の自己競落や『ネットワーク』内の企業間で高額の不動産取引を繰り返すようになった。その総額は数百億円にもなる」と打ち明ける。

　金融庁が５月に出した一部業務停止命令を受け、振興銀がつくった特別調査委員会も今月１０日発表の調査結果で、「ネットワーク」内の企業間で不良債権を買い取らせていたと指摘。「（振興銀の）貸し倒れ引当金の増大を回避する意図の下で行われた」としている。」

ダミー会社を使った担保物件の高値買い取りは、破綻した旧長銀などでも行われていた古典的な粉飾手法です。現行の会計基準では、連結範囲は支配力基準なので、そうしたスキームは成り立たないはずですが、振興銀の場合は、そもそも連結決算をしておらず（金融庁はなぜ（金商法対象以外の）銀行に連結決算を義務付けないのでしょうか）、また、ダミー会社との関係がやや複雑なので、見逃されてしまったのでしょうか。

振興銀破綻：「迂回融資が常態化」　特別調査委が指摘（毎日より）

こちらは、日本振興銀行の特別調査委員会の報告書を取り上げた記事です。

「特別調査委員会の報告によると、振興銀は融資先で作る「中小企業振興ネットワーク」参加企業を介し、迂回融資を続けてきた。ネットワークは０８年７月に設立され、上場企業など１１６社（５月時点）が参加。中核企業の保証会社「中小企業保証機構」が参加企業の実印などを管理し、役員を送り込むなど実質的に参加企業の経営を支配していた。

　同行の貸出残高約４３００億円のうち、ネットワーク参加企業向けは約２３０８億円（６月末時点）を占め、売上高５億円の企業に８８億円を融資していたケースもあった。これらの融資の多くは通常の融資ではなく、ネットワーク内の企業間で転貸しされた迂回融資とみられる。迂回融資の動機は、同一企業に対する融資上限額を定めた銀行法の大口信用供与規制の回避▽返済の滞りを防ぐための資金供給▽不良債権飛ばしの原資づくり－－などだったとみられる。」

迂回融資が、貸倒引当金の過少計上につながったとすれば、粉飾決算だったということになります。

金融庁、３月には振興銀のペイオフ視野
影響の見極めに時間（ドキュメント振興銀破綻・下）（日経）（全文は読めません。）

日経の12日の記事によれば、金融庁が銀行に4月に通知した検査結果では、迂回融資の問題などは明らかにされており、債務超過であるということが確実だったようです。

しかし、今年の3月決算をみると、赤字決算ではあるものの、債務超過にはなっていません。監査人は検査結果を見ていた（少なくとも銀行からヒアリングしていた）はずですが、なぜ、見逃してしまったのでしょうか。（同銀行のホームページを見ても監査報告書は掲載されていないので、もしかすると、監査していない（あるいは意見不表明だった）のかもしれませんが）

第8 期決算公告（PDFファイル）（振興銀ホームページより）

日本振興銀行の破綻と今後の業務について（預金保険機構）

「２千万円が消える…」　扉揺すって悔しがる預金者（朝日）

報道では影響は小さいといっていますが、何といっても日本初のペイオフですから、業績のあまり良くない中小金融機関には、影響が出てくるかもしれません。また、監査人の訴訟リスクということも考えなければなりません。もし粉飾があったとすれば、ペイオフで損害を被った預金者から訴訟を起こされる可能性は大いにあります。もちろん、日本初なのでどのくらいの確率かということはまったくわかりませんが・・・。

振興銀破綻：債務超過１８０４億円　提携交渉望み絶たれ（毎日）