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会計ニュース・コレクター(小石川経理研究所)

特別調査委員会の調査報告書受領に関するお知らせ(2024 年 6 月期末の在庫評価額 693 百万円が過大計上)(日東工器)

特別調査委員会の調査報告書受領に関するお知らせ(PDFファイル)

日東工器(東証プライム)のプレスリリース(2024年11月1日)。

連結子会社(栃木日東工器)において棚卸資産過大計上の疑義があることを受け調査していた特別調査委員会の報告書を受領したとのことです。40ページほどの報告書が添付されています。

調査結果による影響額は以下のとおりです(未実現損益の影響等は含めていない)。直近では7億円ほどの棚卸資産水増しがありました。重要性を鑑み、2022年3月期以降の決算を対象とした訂正を行うそうです。

報告書によると、会社は、 TNK 社(栃木日東工器)(資本金 1 億円、売上高 54 億 15 百万円(2024年 3 月期))における棚卸資産過大計上疑義を2024年8月下旬に把握し、9月に特別調査委員会を設置したそうです。委員会には、弁護士の他、KPMGの公認会計士が加わっており、KPMGは調査補助者としても参加しています。

(売上高50億円の会社で7億円の在庫水増しはちょっとひどいのではないか)

「調査結果の概要」(報告書18ページ)より。

「当委員会の調査の結果、2020 年 3 月期以降の各期において、TNK 社の棚卸資産評価額を意図的に過大計上して利益を操作するとともに、在庫評価の切下げを回避する不正が継続され、下記第 5 のとおり、2024 年 6 月期末の在庫評価額 693 百万円が過大計上されたことが判明した。

こうした不正は X 係長が単独で実行したものであり、それ以外の役職員の関与は認められなかった。」

ということで、従業員単独の不正という結論になっています。

具体的な手口も説明されています(報告書19~21ページ)。仕掛品における架空の計画 No.を追加することは、評価額の過大というよりは、完全に架空資産の計上でしょう。ア~カは、在庫の積極的な水増し目的で、「キ 在庫評価額の切下げの調整」は評価減回避のためのものといえます。

システムから出てきた数値の異常の原因をよく調べず、間違った単価での計上を続けてしまったというところから、不正が始まったようです。

「ア 外注仕掛品の合計値の改ざん

X 係長は、2019 年 12 月初旬同年 11 月期の月次処理の過程において、外注仕掛品の金額が急減したことを認識し、自らその原因を調査したところ、材料コードがブランクとなっている材料費の単価が直前期に大幅に上昇していたものが下落したことに起因するものと理解した。本来、材料コードが付されていない材料費が存在することは基幹システムでは想定されておらず、X 係長がその時点で NK社の情報システム部門に照会をしていれば基幹システムのシステム外で処理する対応が行われた可能性があったが、X 係長は、直前期の数値が異常値であって決算時に自身のミスで見逃したと理解し、誰にも相談することなく上昇していた直前期の単価を使って外注仕掛品の金額を集計した。

そして、X 係長は、基幹システムの購買データなどの基礎データを修正することなく、在庫評価額の算定プロセスの過程で足元の下落した単価で在庫金額表を出力し、さらに上昇した単価での在庫金額表も出力した上、前者の最終合計値の頁のみを後者のものに置き換えるなどして外注仕掛品が過大計上された在庫金額表を作成して決算に使用した。

こうした手口による外注仕掛品の過大計上は、2020 年 3 月期から継続的に行われており、本件事案の不正が継続する契機となっている。

イ 棚卸計算書転記時の加算

X 係長は、基幹システムから在庫金額表を出力した後、エクセルフォームの棚卸計算書に転記する過程で金額を加算する手口による組立仕掛品や原材料などの過大計上を行った。

ウ 材料及び部品の単価の調整

材料費については、材料コード毎に、材料以外は部品 No.毎に基幹システム によって総平均単価が計算されるところ、X 係長は、基幹システムの購買データなどの基礎データを修正することなく、基幹システムで計算された材料コード又は部品の総平均単価とは異なる上乗せした総平均単価に計算結果を修正する手口による過大計上を行った。

エ 賃率の調整

社内加工費については、X 係長が作業時間を抽出して実際賃率を TNK WEB システムで計算した上で基幹システムに実際賃率を登録していたところ、X 係長は、当該登録を行う際に TNK WEB システムで算出された実際賃率とは異なる上乗せした賃率を基幹システムに入力する処理を行っていた。

オ 製造間接費の実際配賦比率の調整

製造間接費の実際配賦比率については、X 係長が TNK WEB システムで計算した上で基幹システムに実際配賦比率を登録していたところ、X 係長は、当該登録を行う際に TNK WEB システムで算出された実際配賦比率とは異なる上乗せした実際配賦比率に修正する処理を行っていた。

組立仕掛品における架空の計画 No.の加算

組立仕掛品については、計画 No.毎に総平均単価に数量を乗じて在庫金額を集計し、基幹システムから在庫金額表を出力するところ、X 係長は、基幹システムから出力された在庫金額表に架空の計画 No.を追加して在庫金額を過大計上する処理を行った。

在庫評価額の切下げの調整

TNK 社では、直近 3 年間の出荷数合計の 3 分の 2 を適正な在庫数量と認識して、期末の適正在庫数量からの超過分に総平均単価を乗じた金額を切り下げる処理が四半期毎に行われていた。X 係長は、基幹システムから原材料コード、資材部品 No.単位で総平均単価、棚卸数、適正在庫数及び低価在庫金額(評価切下げ金額)等が記載された CSV 形式のファイルを出力し、評価切下げの対象となる資材部品のみをシートにまとめる作業を担当していたところ、適正在庫数や出荷数合計の水増し本来評価切下げが必要となる資材部品を評価切下げの対象リストから削除する手口によって評価を切下げる金額を減少させる処理を行った。」(報告書20~21ページより)

X係長の供述(報告書22ページ)。

会計監査人である新日本監査法人は、在庫の増加傾向までは把握していたそうです。監査時に、X係長にもヒアリングしています(親会社を通じて間接的に)。

(報告書24ページより)

質問だけで済ませてしまい、詰めが甘かったということでしょうか。四半期レビューや期中監査では、仕方ないとしても、せめて、2024年3月期(水増し額がほぼ倍増)の期末監査の手続を見直していれば、もう少し早く不正を発見できたのかもしれません。

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