全ての監査の核心にはリスク評価があり、重要な虚偽表示のリスクに関して、識別し、評価し、対応するという目標こそが、監査手続を動かすものであるが、新しいリスクアプローチ監査基準導入後10年以上経過しているにもかかわらず、(米国の)一部の監査人はいまだに新しい基準の適用に手こずっているという記事。AICPA機関誌に掲載された注意喚起の記事です。
2016年のAICPAピア・レビュー・プログラムのデータによると、1割以上の監査事務所が、AU-C Section 315とAU-C Section 330に準拠していないとのことです。(日本の監査基準委員会報告書315「企業及び企業環境の理解を通じた重要な虚偽表示リスクの識別と評価」、330「評価したリスクに対応する監査人の手続」と同様のものと思われます。)
Data collected by the AICPA Peer Review Program in 2016 show that more than 1 in 10 firms failed to comply with AU-C Section 315, Understanding the Entity and Its Environment and Assessing the Risks of Material Misstatement, or AU-C Section 330, Performing Audit Procedures in Response to Assessed Risks and Evaluating the Audit Evidence Obtained.
多くの監査人(特に中小企業を監査している監査人)は、適切にクライアントのリスクを検討することなしに、質の高い監査を実施することができると信じているのだそうです。
By analyzing the data, the Peer Review team uncovered a misconception in practice that is having a major impact on audit quality: Many auditors, especially those auditing small- to medium-size entities, believe they can perform a quality audit without properly considering their client's risks.
こうした考え方は、根本的に不正確であり、監査基準違反につながります。この記事では、ピア・レビュー・チームが見つけた不備例と、改善のためのヒントにふれています。
This thinking is fundamentally inaccurate and is leading to violations of professional standards. This article walks through a few examples of what the Peer Review team has found, along with some tips to help promote compliance.
以下、不備例のポイントを見出しだけ紹介します。日本の金融庁検査や協会品質管理レビューの事例集でも、よく出てくるものだと思います。
RISK ASSESSMENT IS VERY LIMITED OR NONEXISTENT
リスク評価が非常に限定的である、または実施されていない
NO LINKAGE BETWEEN ASSESSED RISKS AND PLANNED RESPONSES
評価されたリスクと計画された対応がリンクしていない
(リスク評価とリンクさせないで実証手続を行うことは、目隠しをしたままダーツを投げるようなものだそうです。)
IMPROPER USE OF THIRD-PARTY PRACTICE AIDS
サードパーティー製の実務支援ツールの不適切な使用
(そもそも、サードパーティー製の実務支援ツール(監査手続書など)が使われていないので、これは日本では指摘されていないかもしれません。しかし、協会が作った監査ツールの使用が不適切だという指摘はあったと思います。記事では、サードパーティー製ツールの使用自体は否定していません。)
FAILURE TO PROPERLY RESPOND TO SIGNIFICANT RISKS
重要リスク(特別な検討を必要とするリスク)に対して適切に対応していない
(重要リスクを不正リスクに限定したり、虚偽表示リスクが高いアサーションをすべて重要リスクとしている事務所があるが、それは不正確な理解だそうです。)
REPEATING THE SAME APPROACH FOR CLIENTS IN THE SAME INDUSTRY
同じ業種のどのクライアントに対しても同じアプローチを行っている
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