日本監査役協会が実施したアンケート結果によると、内部統制報告制度における「重要な欠陥」について「初年度は残る可能性が高い」と回答した企業が12・4%(新興市場は22・7%)あるという記事。
そもそも、内部統制の「重要な欠陥」という概念自体が非常に理解しにくいものです。財務諸表の重要な虚偽表示かどうかであれば、どういう科目でどれだけの金額が間違っていたのかという結果に基づいて判断すればよいのですが、内部統制の場合は、その不備による結果の大きさや、不備により虚偽表示が発生する可能性(確率)の大きさを、評価時点で見積もって判断するという難しい作業です。また、全社的統制やIT全般統制のように、財務報告に与える影響が間接的な統制について、「財務報告に重要な影響を及ぼす可能性が高い」かどうかを判断するのも簡単ではありません。
おそらく各監査法人で今後法人内の事例を集めて考え方を集約していくのでしょう。「重要な欠陥」のケースが多数出てくるような解釈をとるなという圧力が、各方面(金融庁や経済界)から強まるかもしれません。
そうはいっても、会計士協会の「実務上の取扱い」で例示している「前期以前の財務諸表につき重要な修正をして公表した場合」「企業の内部統制により識別できなかった財務諸表の重要な虚偽記載を監査人が検出した場合」「上級経営者層の一部による不正が特定された場合」に該当すれば、厳しい判断になることは確実です。内部統制の形式的な不備であれば、解釈の問題かもしれませんが、実際に重要な虚偽表示が発生した場合には、それを防止・発見する内部統制が整備運用されていたかという点にさかのぼらざるを得ません。
一方で、金融庁サイドからは、導入初年度である程度「重要な欠陥」が残るのはしょうがない、そういうケースが出てきても大騒ぎするな、というキャンペーンが行われているようです。ただ、横並び意識が強い日本の企業にそれが通用するかどうかはわかりません。上場廃止にはならないようですが・・・。
日本監査役協会のプレスリリース
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