森トラストが東京国税局に指摘された約400億円の申告漏れについて、国税不服審判所が全額を取り消す裁決をしたという記事。
「関係者によると、同社はホテル「虎ノ門パストラル」の跡地を売ることにして、取得価格とその時点の評価額の差額を損失として計上。国税局は「売却しようとした形跡はなく、損失計上できない」と判断、2012年3月期までの3年間で約400億円の申告漏れを指摘し、同社が審判所に審査請求していた。」
日経によると棚卸資産(会社の主張)か固定資産(当局の主張)かという点が問題だったようです。棚卸資産であれば、低価法が適用可能で、評価損を計上できることになります。固定資産だと、会計上減損処理することはありますが、その場合は、通常損金にはできません。
不動産開発会社なので、当初開発後売却の目的で取得した物件であっても、長期保有の方針に切り替えて、固定資産に振り替えたり、逆に、長期保有予定だった物件を、短期に売却したり(この場合は、いったん棚卸資産に振り替える場合もある)ということは、珍しくないのでしょう。会社の意思で区分はどうにでもなるといえますが、それにより、税務上の扱いが大きく変わることになります。
この「虎ノ門パストラル」の跡地のケースは、日経記事によれば、森トラストが高層ビルを建設するそうです。建設後にすぐに売るのか、あるいは、固定資産に振り替えて長期保有するのかについては、記事だけではわかりません。
申告漏れ400億円取り消し 森トラストに150億円還付(日経)(記事冒頭のみ)
公表裁決事例要旨 法人税法関係(国税不服審判所)←たぶんまだ掲載されていない?
この件とは関係ありませんが・・・
森トラスト社長「五輪後に経済の"崖"が来る」
不動産業界の重鎮が見通す、5年後の日本(東洋経済)
「50年前の東京オリンピックの後も日本経済が不景気に陥ったが、それでも当時は潜在成長率が10%程度あったため、徐々に活気を取り戻していった。一方、現在はそれほど成長率が高くないにもかかわらず、いっさいがっさいがオリンピックまでに構築される計画になっている。
オフィスビルは昨今の建築費高騰や労働力不足などによって建設工事が遅れぎみということもあり、東京オリンピックまでの短期間に竣工が集中する。地方創生などの政府施策も、オリンピックまでの期間に実施される見込み。オリンピック前に好景気の山、つまりその後の“崖”を築いているような感覚だ。
問題は、その後どうなるか、だろう。日本の潜在成長力が1%程度の状態であることを考えれば、需給バランスが崩れ、日本経済がひっくり返るぐらいの異変が起きるのではないか、と見る。50年前のオリンピック不況を経験していない方も多いだろうから、想定している以上に混乱が起きる可能性がある。」
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