goo blog サービス終了のお知らせ 

会計ニュース・コレクター(小石川経理研究所)

234億円債務超過、中国で大損失 江守グループホールディングス(福井新聞より)

234億円債務超過、中国で大損失 江守グループホールディングス

東証1部上場の江守グループホールディングスが、2015年3月期第3四半期連結決算で、貸倒引当金462億500万円を特別損失に繰り入れ、234億2400万円の債務超過に陥ったという記事。

「同社によると主力市場の中国経済の減速に伴い、金属資源関連の取引先の資金繰りが悪化。債務者区分などを見直したが、売掛金を中心とした資産の与信管理は後手に回り、大幅な貸倒引当金の積み増しを行わざるを得ない状況となった。」

同社中国子会社については、不正会計の問題がありましたが、調査の結果影響軽微とのことです。

「中国子会社の売り上げの実在性については、仕入れ先と販売先が異なるのが通常取引だが、実態は最終販売先が仕入れ先となる「売り戻し取引」があったと説明。子会社の経営トップだった取締役の前総経理(社長)が内部規則に違反し、江守GHDの承認を得ずに親族会社と取引を行い、本来は仲介手数料のみを純額として計上すべきところを、商品売買のように売り上げなどを計上していたという。ただ中国との会計制度の違いなどで影響は軽微として「組織ぐるみではなく、調査を通して架空取引や粉飾決算の疑義は晴れた」と結論付けた。同社は10年3月期までさかのぼって決算報告書を訂正した。」

しかし、現地のトップによる不正ですから、それなりに重要な問題です。

貸倒引当金繰入額(特別損失)の計上に関するお知らせ(PDFファイル)

なぜ、この第3四半期で処理したのかが気になるところですが、まず第2四半期までの会計処理については・・・

「入金状況に関しては、当第2四半期以前において、得意先と事前に合意し支払延長を行った経緯はあるものの、支払延長に応じることは単なる契約内容の変更であり回収不能となる遅延とは認識しておりませんでした。一部の債権について支払が遅延しておりましたが、過去の入金状況からみても回収は可能であると考えられ、また当社の貸倒引当金の計上ルールでは一定期間の遅延については一般引当とすることとなっており、このルールに従い当第2四半期決算においては個別引当は不要と判断いたしました。 」

第3四半期は・・・

「当第3四半期にはいってからは、中国における金融引き締めの影響、並びに取引を縮小したことに伴い得意先の資金繰りが悪化した影響から主要得意先に対する債権の回収も進まず、今後の回収可能性に疑義が生じたため、当第3四半期において主要得意先のほとんどについて、「破綻懸念先」と区分することとしました。 」

「中国子会社における貸倒引当金の見積り方法では、「破綻懸念先」に該当すると判断した場合には、担保や取引信用保険等の回収見込み額を控除の上、全額貸倒引当金を計上することとしております。「破綻懸念先」と認定したことにより引当率が 100%となったこと、また、担保等の価値や取引信用保険付保状況についても精査し、回収見込み額を慎重に見積もったことから、結果として貸倒引当金繰入額が巨額なものとなりました。」

危ない売掛金が膨れ上がった背景には与信管理の甘さがあったようです。

「・・・中国子会社の主要得意先の所属する特定の業界(金属資源等)が金融引き締めの影響を受け、得意先の資金繰りの悪化が見られました。このような状況のもと主要得意先の他の取引先に比べ、支払条件が有利であった中国子会社への注文が集中することになり、その結果、売掛金の増加につながりました。 」

昨年4月に異常を認識し、7月には社内検査チームを派遣し調べさせたそうですが、債権回収に乗り出したころから、遅延が急速に増えたそうです。

「主要得意先に対する新規取引を抑制し、債権回収を優先し始めた 2014 年8月頃から、得意先との関係が変化し、得意先の資金繰りにも影響が出た結果、これまで遅延のなかった得意先についても一部遅延が見られるようになりました。その後も、中国子会社の経営体制を変更し、新体制で債権回収に向けた努力を続けてまいりましたが、2014 年 12 月末時点ではほぼすべての主要得意先に入金遅延が出るという事態となり、その結果、巨額の貸倒引当金繰入額の計上となりました。 」

要するに、中国子会社からの与信が得意先の資金繰りの手段になっていたということでしょうか。

中国子会社における追加調査結果のご報告(PDFファイル)

「元総経理によって会社の承認なく親族会社と不明朗な取引が行われたことは事実であり、当該取引を通じ、一般の会社と取引した場合と比較して親族会社に不相当な利益が流出した可能性がありますが、親族会社との個々の取引価格の妥当性の評価は困難であることから、当該取引により中国子会社に損害が生じたことが判明した場合には、訴訟を含め適切な対応を取ってまいります。」

決算修正は、利益に与える影響はなく、表示の問題(関連当事者注記を含む)ということになっています。

結果としてそうなっただけなのかもしれませんが、不正調査を口実に、不正問題よりもずっと重要ともいえる巨額引き当てに関する開示を1か月遅らせることができたともいえます。

当サイトの関連記事(中国子会社の架空売上問題について)
名前:
コメント:

※文字化け等の原因になりますので顔文字の投稿はお控えください。

コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

 

サービス終了に伴い、10月1日にコメント投稿機能を終了させていただく予定です。
  • Xでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

最近の「企業会計」カテゴリーもっと見る

最近の記事
バックナンバー
人気記事