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【社説】ゴーンの「潔白」会見、主張に説得力(DOLより)

【社説】ゴーンの「潔白」会見、主張に説得力(The Wall Street Journal配信)

ゴーン氏の記者会見について、日本の報道では、逃亡しないで日本の法廷で弁明すべきとか、パフォーマンスだけで中身がないとか、無罪を「証明」するようなものがでてこなかったとか、ほとんど批判ばかりですが、海外メディアでは賛否両論のようです。

この記事は、どちらかといえばゴーン氏寄りです。

「われわれは陰謀論が好きではないが、日産幹部と日本の当局者が協力してゴーンに反する行為をしたとの説明は、数十年にわたって「日本株式会社」を見ていれば妥当に思える

ゴーンによれば、日本の企業幹部はゴーンのまとめたルノー、三菱自動車、日産のアライアンスでフランスとフランス人幹部の力が増していることにいら立っていた。彼らはアライアンスを終了させるか、せめて日本側の支配力を拡大するにはゴーンを排除する以外にないとの結論に至った。コーポレートガバナンス(企業統治)に関する日本の法律が彼らの武器になった。周知の通り不透明だからだ。

ゴーンの自己弁護の詳細は、今後挙がってくる具体的な証拠と照らし合わされるだろう。しかし、ゴーンの解任・逮捕後で最も説得力のある点の1つは、日産が企業開示に関する規則を破った罪を日本で認めたことだ。同社は、同様の容疑で訴訟を起こされている米テネシー州では無罪を主張している。

ゴーンは、犯罪に値するレベルに達していた要素はなかったはずだとの常識的な主張もした。役員室で決着をつけるべきことだった。」

日本の特捜事件で言えば、厚労省村木事件のような、完全に無罪なのに、検察のでっち上げ捜査により、あやうく有罪になりかけたという事件と違って、ゴーン事件の場合はあやしい取引もあったのでしょう。だからといって、特捜部がいきなり登場するような事件でもないように思われます。特に、役員報酬虚偽記載に関しては、10億円ではなく20億円ほしがったというのは、欲張りだとは思いますが、その願望を紙に書いたからといって、犯罪だというのはおかしな話です。日産が、アメリカの裁判で、虚偽記載を否定しているというのも初耳です。日本での日産の説明と違います。

ゴーン氏名誉回復を目指す、日本と日産に反撃 WSJインタビュー(WSJ)(有料記事)
ゴーン氏名誉回復を目指す、日本と日産に反撃(Yahoo))

虚偽記載疑惑について、比較的詳しく弁明しています。

「ゴーン氏は日本の検察が最初に起訴したときの罪状の根拠も非難した。ゴーン氏は日産の有価証券報告書に数年間にわたって報酬を過少に記載したとしたとして起訴されたが、本人は起訴内容を否定している。

ゴーン氏によると、開示せずに繰り延べ報酬として数千万ドルをゴーン氏に支払うアイデアを最初に思い付いたのは本人ではなく、日産の幹部だった。

開示されている以上の金額をゴーン氏に支払おうと部下が話し合いを始めたのは2010年頃だった、とゴーン氏は説明した。ゴーン氏が競合他社に移るのではないかと懸念していたからだという。この年、日本では上場企業幹部の報酬の開示が義務付けられ、ゴーン氏の報酬は減額されていた。

ゴーン氏は「多くの提案を聞いたが、どれも実行されなかった」と話した。適法性が課題で、提案の中には適法ではないものもあったという。「われわれは(提案を)検討しないことに決めた」とゴーン氏は話した。

有価証券報告書に記載されなかったゴーン氏の繰り延べ報酬は92億円とされる。米国では昨年、証券取引委員会(SEC)が、ゴーン氏が退職時に自身にコンサルティング料を支払うなどの計画を検討していたことを明らかにした。

結局、追加の報酬は支払われていないとゴーン氏は主張。「何が問題なのか、私には分からない」と語った。」

「10日のインタビューでゴーン氏は、日産の一部の幹部からゴーン氏を引き止めるために「必要なことはなんでも」する用意があると言われたと語った。ゴーン氏によると、その中には側近だったグレッグ・ケリー氏や、ゴーン氏が逮捕されたときの日産の最高経営責任者(CEO)だった西川廣人氏が含まれていた。」

日産側の反論は...

「日産に近い人物によると、日産の幹部の間では、ゴーン氏の報酬が少ないとは考えられていなかったという。この人物は、ゴーン氏が「いつももっと金を欲しがっていて、そのための計画を立てていた。われわれは彼がしたことを知っている。彼が何をしたかはわれわれが行った調査が示している」と話した。」

日産側から提案したのか、ゴーン氏側が主導したのかは、あまり重要な問題ではないように思われます。ゴーン氏主導で計画したとしても、法律的に、会社に報酬支払い義務が成立していたのか、仮に成立していたとしても、それはいつの期の費用なのか(退職後のコンサルティング費用であれば退職後の費用ではないか)といった疑問点が浮かびます。

いずれにしても、ゴーン氏は日本に戻るつもりはないでしょうから、日本のマスコミに悪口を書かれたからといって、ダメージはあまりないのでしょう。海外メディアで主張がある程度認められたのであれば、会見は成功だったのでしょう。

ゴーン氏といっしょにつかまったケリー氏の容疑は、虚偽記載だけです。その裁判の行方が注目されますが...

ゴーン逃亡で置き去りのケリー被告、WSJに語る
主要証人なしに「公正な裁判ができるのか」
(WSJ)
ゴーン逃亡で置き去りのケリー被告、WSJに語る(Yahoo))

「ゴーンは、自分を引き留めるために報酬を増やす方法を、ケリーを含めた日産幹部が模索していたと述べている。両被告によると、規制当局への報告で開示することなくゴーンに追加報酬を支払う方法を議論したが、仮定の話であって同社を拘束するものでもないため、金額を公表する必要はなかったと主張している。

ゴーンは日本で追起訴されているが、その起訴内容も否定している。だが報酬を巡る公判には、両被告が共に出廷するはずだった。」

「ケリーは早朝に自宅近くの皇居の周囲を走るのが公判前の日課だと話した。その後は弁護士の事務所で1日8時間を費やす。事務所では、検察に提供された公判用の膨大な電子書類に一つ一つ目を通す。たいてい昼には休憩を取り、近所のコンビニで買ったサンドイッチかおにぎりを食べる。休憩後は再び、書類の精査に戻る。

米国でケリーの弁護士を務めるジェイミー・ウエアハムは「無駄骨を折るという例えがどうあれ、それを超えた次元だ」とし、「全てを手作業でやらなければならない。このデータを精査するには何百人もの弁護士がいても一生かかる」と述べた。

ケリーは何を探しているのかさえ正確にはわからないという。「こうした議論の多くは5年、6年、7年前に起こったものだ」と指摘。検察と司法取引する機会も与えられたが、受け入れなかった。「結局のところ、真実を話さなければならなかった。われわれは法的助言を受けながら、カルロス・ゴーンを引き留める適切な措置を試みたというのが私の見解だ。いかなる刑法にも違反しなかった」」

ケリー氏の妻は会計士だったそうです。

「会計士を引退した妻のディーは日本語のクラスに登録することで学生ビザを取得し、日本で夫と住めるようになった。孫がいる同夫人は、周りは20代の学生ばかりだと笑いながら語りながらも、夫のそばにいるためにはこれしか方法がなかったと考えている。ビザの保有は成績を維持できるかどうかにかかっている。」

日産元幹部ケリー被告、公正な裁判は困難と妻が懸念表明(ブルームバーグ)

「先月レバノンに逃亡したゴーン被告の証言なしでは、ケリー被告は検察当局の主張に十分に抗弁できない可能性があると、ケリー被告の妻が電子メールで表明した。」

ゴーン被告逃亡で裁判の行方不透明に-日産、ケリー被告の公判分離も(ブルームバーグ)

「元検事の郷原信郎弁護士は今後の公判について、「ゴーン氏の事件と分離してケリー氏の事件を進めることになるだろう」との見方を示す。ケリー被告の公判で重要な証人となるゴーン被告が不在のため、証人尋問ができないことになるが、「裁判自体は行えなくはない」と述べた。

その上で「ケリー氏の裁判が有罪になるか無罪になるかで、ゴーン氏の逮捕が正当だったかについての判断にもなる。そういう意味では注目すべきだ」と話した。」

もしケリー氏が虚偽記載について無罪になったら、プライベート・ジェット機で日本に戻ってきたゴーン氏の逮捕シーン(逮捕容疑は虚偽記載)をテレビ局に撮影させていたパフォーマンスは何だったのかということになるでしょうし、検察につられて、ゴーン氏・ケリー氏らを告発した金融庁(監視委)も面目丸つぶれでしょう。

コメント一覧

kaikeinews
推定無罪か推定有罪かというのは、確定判決が出るまでの、被告の扱いのことでしょう。推定無罪の国でも、有罪判決が出れば、当然、判決で下された刑罰に従う必要があります。その逆に、推定有罪の国でも、村木事件のように無罪判決が確定すれば、その後は無罪の扱いとなります。
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