主要国の金融当局の集まりである金融安定化フォーラム(FSF)が、先進7カ国財務相・中央銀行総裁会議(G7)に対し、世界的な金融市場混乱への対応策に関する最終報告を行ったという記事。
記事によれば「08年中間決算での情報開示厳格化」と「証券化プロセスの透明性向上」が挙げられています。12月決算を想定しているので中間決算(2008年第1四半期~)といっているのだと思いますが、日本の金融機関の場合はこの3月の本決算も含まれるのでしょう。
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FSFの正式なプレスリリースや報告書は、金融庁のサイトを経由してみることができます。
金融安定化フォーラムによる「市場と制度の強靭性の強化に関する金融安定化フォーラム(FSF)報告書」の公表について(金融庁のサイトより)
プレスリリースを見る限り、日経新聞があおっている時価会計見直し論は取り上げられていません。12日の日経記事(朝刊3面)では、この報告書で「金融システムを守るため時価評価適用見直しなどを検討すべきだと指摘した」というように時価会計基準を適用するかどうかを見直すように書かれています。しかし、プレスリリースでは「International standard setters should enhance accounting, disclosure and audit guidance for valuations.」((金融商品の)評価に関する会計・開示・監査の指針を基準設定主体が強化すべき)というごく当たり前のことしかいっていません。全体としてみれば、評価に関しては、会計処理も監査も厳しくやれという趣旨のようです。
正確な情報は原文でご確認下さい。
以下補足です(4月16日)。
金融庁のホームページにプレスリリースの仮訳が出ていました。そのうち会計に関係のありそうな部分(その一部)を引用します。(強調はこちらでつけました。)
「1 .市場参加者によるリスク開示
リスク・エクスポージャー、価格評価、オフバランス機関及び関連する方針についてのより有意義で一貫した定量的・定性的情報の金融機関による開示の強化は、市場の信頼を回復する上で重要である。(以下省略)」
「2 .オフバランス機関に対する会計・開示基準
(中略)
・国際会計基準審議会(IASB)は、オフバランス機関に対する会計・開示基準を加速度的に改善するとともに、国際的なコンバージェンスに向けて、他の基準設定機関と協力すべきである。」(「オフバランス機関」の「機関」は原文では「vehicles」です。)
「3 .価格評価
今回の市場の混乱により、価格評価の実務及び開示における潜在的な脆弱性と、市場が存在しないような状況下における公正価値評価が困難であることが明らかとなった。国際的な基準設定機関は、評価に関する会計・開示・監査のガイダンスを拡充させるべきである。金融機関における評価プロセス及び関連する監督上のガイダンスは強化されるべきである。この論点に対応すべく、
・IASBは、評価、評価手法及び評価に伴う不確実性に関する開示を向上させるべく、基準を強化する。
・IASBは、市場が活発でなくなった場合における金融商品の価格評価に関するガイダンスを拡充する。これに向けて、2008 年中に専門家によるアドバイザリーパネルを設立する。
・金融機関は、価格評価に関する厳格な手続きを確立するとともに、評価手法及び評価に伴う不確実性に関する開示も含め、価格評価に関する信頼に足る開示を行うべきである。
(中略)
・国際監査・保証基準審議会(IAASB)、主要な各国の監査基準設定機関及び関連する規制当局は、市場の混乱から得られた教訓を検討し、必要があれば、複雑な或いは流動性の乏しい金融商品の評価及び関連の開示に対する監査のガイダンスを強化すべきである。」
「4 .証券化プロセスと市場の透明性
(以下省略)」
オフバランス取引(連結範囲)、金融商品の評価方法、金融商品の評価に関する開示、複雑または流動性の乏しい金融商品に関する監査、などが今後(といってもこの3月決算からだと思いますが)の課題になりそうです。
日経新聞があおっている時価会計見直し論らしきものはどこをみても見当たりません。あえて挙げるとすれば「市場が活発でなくなった場合における金融商品の価格評価に関するガイダンス」をIASBが作るという点ですが、今より緩くするとはいっていません。
金融機関側も、「価格評価に関する厳格な手続き」と「評価手法及び評価に伴う不確実性に関する開示」を含む「価格評価に関する信頼に足る開示」が求められています。時価はどうせわからないのだから、いい加減な評価でいいというわけにはいきません。もっとも、このレポート自体に強制力はなく、金融庁の指導次第なのかもしれませんが・・・。
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