東芝不正会計問題で、同社の第三者委員会が問題を「組織的な不正」と認定するという記事。
「組織的な隠蔽(いんぺい)があったとみて第三者委が特に問題視しているのは、半導体事業だ。同事業では、原価を実際より少なく見せかけていた。東芝の会計監査をしている新日本監査法人の担当者が状況に疑いを持ったのに対し、本社の経理担当者はうその資料を示して「原価が安く抑えられているので利益を上げられる」などと説明していたという。経営陣が虚偽の資料作成を指示したことは確認できなかったが、組織全体として不正を隠蔽しようとしたと、第三者委は認定した模様だ。」
東芝との監査契約はたぶん継続されるのだと思われますが、自分たちをだましてきた人たちと、これからも付き合っていかなければならないというのは、なかなかたいへんでしょう。
監査人の責任の面からは、会社側の組織的隠ぺい工作があったとすれば、監査の限界を主張することはできそうです。
ただし、オリンパス事件後に制定された不正対応監査基準では、(当然の話ですが)経営者への質問だけではだめだといっています。経営者(会社側)の説明以外の証拠が必要であり、それを入手しているかどうかが問題です。
「監査人は、監査実施の過程において、不正による重要な虚偽の表示を示唆する状況を識別した場合には、不正による重要な虚偽の表示の疑義が存在していないかどうかを判断するために、経営者に質問し説明を求めるとともに、追加的な監査手続を実施しなければならない。」
「監査人は、識別した不正による重要な虚偽の表示を示唆する状況について、関連して入手した監査証拠に基づいて経営者の説明に合理性がないと判断した場合には、不正による重要な虚偽の表示の疑義があるとして扱わなければならない。
また、識別した不正リスクに対応して当初計画した監査手続を実施した結果必要と判断した追加的な監査手続を実施してもなお、不正リスクに関連する十分かつ適切な監査証拠を入手できない場合には、不正による重要な虚偽の表示の疑義があるとして扱わなければならない。」
(「不正による重要な虚偽の表示を示唆する状況」があるのに、経営者の説明を重視して、「経営者の説明に合理性」があるかないかを判断させるというのは、基準の欠陥と思われます。不正を示唆する状況があれば、経営者の説明よりも、その他の情報源や経営者の説明と矛盾する証拠の方を重視すべきでしょう。「関連して入手した監査証拠に基づいて」とはいっていますが・・・)
東芝の不適切会計問題 第三者委、監査法人の責任追及検討(産経)
「新日本は約3500人の公認会計士を抱える大手監査法人。東芝の決算を監査し、適正意見を出してきたが、その後、過去の不適切会計問題が発覚した。不適切な会計処理が複数年、幅広い事業分野で行われていたことが明らかになっているだけに、新日本の会計監査が十分だったか、第三者委が調べている。
新日本は「第三者委員会の報告が出るまではコメントできない」としている。今後は東芝が決算を修正するに当たり、訂正監査を行う見通しだ。
新日本は平成23年に過去の損失隠しが発覚したオリンパスの監査も担当。同社の第三者委には調査報告書の中で「責務を十分果たすことができなかった」と指摘された。その後、金融庁から業務改善命令を受けている。・・・」
東芝不適切会計、新日本監査法人立ち入り検査へ(読売)
「金融庁の公認会計士・監査審査会は、東芝の決算を監査した新日本監査法人に対し、公認会計士法に基づく立ち入り検査を行う。
構造的な問題が見つかれば、業務改善命令などの行政処分も検討する。・・・」
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