金融庁は、「検査マニュアル廃止後の融資に関する検査・監督の考え方と進め方」を、2019年12月18日に公表しました。
「本文書は、金融システムの安定を確保するための健全性の維持を前提としつつ、金融機関が顧客の多様なニーズに応えるための創意工夫に取り組みやすくなるよう、融資に関する検査・監督の考え方と進め方を提示することを目的としている。」(「はじめに」より)
「本文書は、引当・償却について現状の実務を否定するものではなく、現在の債務者区分を出発点に、現行の会計基準に沿って、金融機関が自らの融資方針や債務者の実態等を踏まえ、認識している信用リスクをより的確に引当に反映するための見積りの道筋を示しています。」(プレスリリースより)
ルールとしての位置づけはよく分かりませんが、「議論のための材料であることを明示した文書(ディスカッション・ペーパー)」とのことです。
会計士協会などは、金融検査マニュアルの自己査定の箇所が廃止されると、銀行業の財務諸表等の作成の基本となる考え方が失われると主張していましたが、強行突破されたようです。
実際、検査マニュアルに基づく検査で不良債権が大幅に増え、それに追随して会計上の引当金も大幅に積み増すといったことが、つい最近まで行われてきたわけですから、検査マニュアルが会計基準の一部であることは明らかであるのに、その代わりとなる会計基準を整備することなく、廃止してしまうというのは、金融庁は何と無責任な役所なのでしょう。たぶん、会計基準を監督する部署と、銀行検査を担当する部門が、完全に縦割りになっており、検査担当部門は会計基準に関する見識を持っていないのでしょう。
引当・償却について現状の実務を否定しないといっても、廃止され、誰も責任をもたない文書を会計指針の一部にするわけにはいかないはずです。
預金等受入金融機関に係る検査マニュアル等を廃止しました。 (金融庁)
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