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会計ニュース・コレクター(小石川経理研究所)

大王製紙:会長が引責辞任…子会社から使途不明金借り入れ(毎日より)

大王製紙:会長が引責辞任…子会社から使途不明金借り入れ

大王製紙の会長が、子会社7社から計80億円超を個人的に借り入れたことが発覚して辞任したという記事。

「大王製紙によると、井川氏は10年度に23.5億円、11年4~9月に約60億円を借り入れ、うち約30億円は9月までに返済済みという。同社が今月7日に関連会社の総務担当からの内部通告を受け、全子会社52社を調査したところ、井川氏が事実を認め、16日朝辞表を提出した。使い道は「今は言えない」と答えているという。」

「同社が10年度に提出した有価証券報告書には、井川氏に対し23.5億円の貸し付けをした記載があるが、経営陣は問題視していなかった。」

たしかに、2011年3月期の有報をみると、関連当事者情報の注記で、記載されています。「資金の貸付については、市場金利を勘案して利率を合理的に決定しています」という注書きもあります(ただし受取利息18百万円は全額未収入金として残っている)。

したがって、有報提出の6月末時点で、少なくとも開示担当部署と監査人は、会長(当時は社長)への多額の資金の流出があったことを把握していたということになります。有報提出後は、誰でも知りうる状態にありました。異常な取引ですから、監査人と経営者の間のディスカッションや、監査人と監査役の間のディスカッションでも、議論されていたはずです。

これは、今月7日の内部通報がきっかけで調査したというのと矛盾することになります。考えられるのは、3月までの支出は正規の手続きを経ていたが(そうでなければ単なる違法支出であり貸付金として会計処理することもできない)、4月以降、正規の手続きを経ないで支出が行われたり、条件どおりの返済が行われなかったりして、見るに見かねた担当者が通報したといった状況です。

記事によれば、調査委員会を設置するそうですから、そのうちにくわしい事情が明らかになることでしょう。

(はからずも有報の細かい注記までは誰も読んでいないということがばれてしまいましたが・・・)

代表取締役の異動(辞任)に関するお知らせ(PDFファイル)

経緯・使途は調査中 会長の巨額借金で大王製紙会見(朝日)

大王製紙、創業家の井川会長が辞任 84億円個人的借り入れ(日経)

大王製紙、井川会長辞任 50億円の不適切な借り入れ(朝日)

辞任した会長の写真付き

(補足)

・もちろん、手続きさえ踏んでいればいいということではありません。(仮に承認がされていたとして)使途もわからない何十億円もの役員向け無担保貸付を承認するような取締役は、株主がクビにすべきでしょう。

・2011年3月期の内部統制報告書では内部統制有効という結論になっています(監査もその報告書を認めている)。たしかに、有報では関連当事者情報の注記に記載されているので、「財務報告にかかる」内部統制は有効という考え方もありうるのかもしれませんが、制度の趣旨からしてどうなのかなという感じはします。さらに、最低限の手続きすら行わずに資金を提供していた場合には、会社の財産を勝手に持ち出したということですから、貸付金処理することは、虚偽表示かもしれません。その場合には、(この取引に関する)「財務報告にかかる」内部統制も有効でなかったという結論になります。重要性の判断(役員が絡んでいるという質的重要性も考慮)にもよりますが、内部統制監査報告書を差し替えなければならないかもしれません。

大王製紙前会長の巨額借金、攻撃的オーナー経営が裏目(日経)
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