日本公認会計士協会は、監査業務の引継が不十分であったなどとして、東証マザーズ上場企業の中間監査を行った会員2名に対する懲戒処分(会員に与えられた権利の停止5ヶ月)を、2008年1月5日付で公表しました。
協会のプレスリリースによると、問題の会社はカジュアルダイニングレストランを全国展開し2003年2月に東証マザーズに上場しています(その後2005年6月に上場廃止)。2004年3月期まではA監査法人が担当していましたが、2004年9月中間期の監査の途中でB監査法人に急きょ交代しました。しかしB監査法人は同年12月14日に監査人辞任を申し入れ、今回処分を受けた会計士はその翌日に監査契約を締結し、5日後の12月30日には無限定有用の中間監査報告書を会社に提出しています。
協会の綱紀委員会では、(1)監査受嘱時におけるリスク管理の妥当性、(2)監査業務の引継の十分性、(3)監査実施計画及び監査手続の十分性、(4)前渡金に係る監査手続の十分性、(5)審査の状況、について検討したところ、この会計士は十分な監査手続を実施していなかったなどの結論を出しています。
プレスリリースによれば、問題となっている前渡金は、中間期末で1,394百万円残っており、B監査法人が辞任理由の中でその資産性を疑問視していたものです。十分な引継を行っていれば(引継を行っていなくても前任監査人の辞任理由を理解していれば)、たった5日間で無限定有用の意見を出すことはできなかったはずです。プレスリリースを読む限りでは、(監査ではなく分析的手続などが中心の中間監査であるという点を考慮しても)あまりにもずさんな監査であったといわざるをえません。
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