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配当不能に?「評価損」で地銀を襲う新たなリスク 黒字でも債券評価損膨張で「分配可能額」が枯渇(東洋経済より)

配当不能に?「評価損」で地銀を襲う新たなリスク
黒字でも債券評価損膨張で「分配可能額」が枯渇

有価証券評価損拡大で、分配可能利益が枯渇する地銀が出てくるかもしれないという記事。

「分配可能額の算定には細かな計算を要するが、大まかに言えば、単体ベースでの「その他資本剰余金」および「その他利益剰余金」の合計額から、自己株式やその他有価証券の評価損などを差し引くことで弾き出せる。

つまり、有価証券の評価損は分配可能額を削っていく。評価損は損益計算書を経由せずに純資産を直接変動させるため、評価損が膨らんで分配可能額がなくなると、たとえ黒字決算であっても株主還元ができなくなってしまうのだ。」

福島銀行の例を挙げています。

「一例が福島銀行だ。2022年4~12月決算では5億円の最終黒字を計上したが、単体の貸借対照表に目を移すと印象が変わる。

2022年9月末時点で、同行のその他資本・利益剰余金は計81億円だった。ここに同年12月末時点のその他有価証券評価損75億円を差し引くと、実質的な分配可能額は6億円強しか残されていない。

評価損の内訳は外債などが51億円、円債が23億円。株式もわずかながら評価損を計上している。国内外の金利がもう一段上昇すれば、分配可能額が枯渇しかねない

福島銀の担当者は「分配可能額に対するモニタリングは継続している。状況に応じて、リスク資産の圧縮やヘッジなどを検討したい」と話す。」

福島銀行には、2008年3月期決算で違法配当をやってしまった前科があるそうです。

「分配可能額が枯渇しつつある地銀は福島銀に限らない。自己資本比率が低く、数十億円単位の評価損を抱える小規模な地銀は、同様の事態に直面している。」

島根銀行は、無理矢理、配当可能利益を増やしたそうです。

「2022年4~12月決算では4億円の最終黒字を計上した一方、2022年12月末時点でのその他有価証券の評価損は73億円に及ぶ。同年9月末時点で、同行のその他資本・利益剰余金は60億円程度しかなく、本来であれば分配可能額は失われているはずだった。

ところが、同行はくしくも12月末に優先株の発行で60億円を調達した。増資と並行して、資本金や資本準備金から60億円を剰余金へと振り替えたことで、評価損が膨張しても分配可能額が残る形となった。」

(会計監査人の監査範囲ではありませんが)2023年3月期決算の要注意事項では。

日本銀行も指摘しているそうです。

「日本銀行は3月14日に公表した2023年度考査方針の中で、外債などの評価損拡大によって、地銀の中に「分配可能利益への影響を含めリスク許容度の検証が十分でない先がみられた」と指摘した。」

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