会計ニュース・コレクター(小石川経理研究所)

監査研究学会が東日本部会~コンバージェンスで厳しい意見も2007.07.23

税務研究会:週刊経営財務 Weekly Accounting News

IASBの山田辰己理事が、会計基準のコンバージェンスについて、日本が置かれている状況は危機的だと発言したという記事。

日本監査研究学会の東日本部会のフリー・ディスカッションでのコメントです。記事を読むと以下のような発言もあったようです。

「会計基準の国際的な統合化の競争では、残念ながら日本の基準は負けたといわざるを得ない。実際、日本基準は、日本以外では使われていない。また、金融庁が進めている同等性評価は違う見方をすると、IFRS(国際財務報告基準)と日本基準の差異を修正し、日本基準(の質)がIFRSに近くなったらEUで認めてあげましょう、というもの。合わせなさいと言われて、合わせているだけの作業に過ぎない。」

「金融庁のある立場は、日本が世界の3極の1つ、すなわち、IASBとアメリカと日本が世界の3極であるとの見解を示している。この考え方は当局間では適当かもしれないが、会計基準の設定レベルでは必ずしも適当とはいえない。IASBは、FASBとの統合だけを考えている。日本は、”乗るか、乗らないか”という選択を迫られている国として考えざるを得ない状況にある。」

要するに、今まで金融庁やASBJが、日本はコンバージェンスを着々と進めている、日本基準は国際的な基準と同等であり、海外市場でも認められるようになる、といってきたのは大本営発表だったことになります。

ただ、本物の大本営発表と違って、誰も当局の宣伝を信じていなかったので、罪は小さいのかもしれません。また、そういう大きな目標を掲げていたおかげで、会計基準の設定がある程度進んだということはいえます。

私見では、コンバージェンスを目標にすること自体が間違っているのではないかと思います。最終的に、(1)日本の資本市場への海外企業の受け入れを促進すること(ただし質の高い財務情報を開示させることを条件とする)と、(2)日本企業が海外でなるべく低コストで資金調達できるようにすることが達成できればいいのです。そのためには(1)IFRS準拠の財務報告を国内で認める(英語のままで)、(2)海外で資金調達する企業が2種類の財務諸表を作成しなくてもいいように、日本企業にもIFRSの使用を解禁する、という対策をとれば、目的の8割程度(目分量ですが)は達成されます。また、IFRSを使用する日本企業が数十社でも出てくれば、日本の実務や考え方をIFRSに反映させるチャンスも生まれることでしょう。日本の会計基準が国際的に認められるかどうかは、ここに至っては単なるメンツの問題にすぎません。

日本基準の開発は、海外資金調達の必要がない企業のために、国内のニーズを反映させながら、かつ、海外基準からあまりかけ離れたものとならないよう、着実に進めていけばよいと思います。海外で資金調達しようとする企業は、日本基準からIFRS(または米国基準)への移行というハードルを越える必要が出てきますが、日本基準自体のレベルも上がってきているので、やる気のある企業ならクリアすることは可能でしょう。

日本基準を認めないのは米国やEUの陰謀だといってだだをこねてもしょうがありません。

ちなみに、IASBのサイトをみてみると、インドがIFRSへの全面統合を決定したというプレスリリースが出ていました。

India announces convergence with IFRSs for public interest entities from 2011
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