*** june typhoon tokyo ***

SWV@Billboard Live TOKYO


 90'sフレイヴァと今とを繋ぐ貫録のステージ。

 1992年に「ライト・ヒア」でデビューし、90年代R&Bまたはガールズ・グループ・シーンをリードした米・ニューヨーク出身のシスターズ・ウィズ・ヴォイセズことSWV。直前に大型野外フェス〈サマーソニック〉出演を経てのビルボードライブでの単独公演〈Billboard JAPAN Party X SUMMER SONIC Extra〉、東京ではラストナイトとなる24日、ミッドウィークの夜の2ndショウを観賞した。
 SWVのステージを観るのは、2012年のビルボードライブ東京での初となる公演以来。2016年2月には2005年の再結成からは2枚目となるアルバム『スティル』をリリースし、前述のサマソニ出演など、注目を浴びるなかでのステージ・パフォーマンスとなった。

 ちなみに、2005年の再結成以降にSWVを観たのは次のとおり。2008年の〈LADY SOUL GREATEST HITS TOUR〉はSWVのココ、ブラウンストーンのニッキー・ギルバート、そしてシャニースという3組のアーティストのパッケージ・ステージだ。「SWVは東京を愛してる」というように、ほぼ毎年来日してくれている。

◇◇◇

・2008/06/20 LADY SOUL GREATEST HITS TOUR@Billboard Live TOKYO
・2012/08/22 SWV@Billboard Live TOKYO

◇◇◇



 バック・バンドは、ステージ左からドラムのジミー・ヒル、ベース(兼キーボード)のチャブラ・C・メーサー、キーボードのアレクシス・ヒル(ステージ前面に出てフロアを煽って盛り上げに一役も二役も買っていた)のミニマルな編成。以前にはココの夫がドラムとしてやって来たこともあったが、今回はなし。ベースのチャプラ・C・メーサーは引き続いての帯同となる。SWVの3人は前回はそれぞれが異なる色のパンツ姿だったが、今回はリリーが赤、ココが緑、タージが青にそれぞれ髪を染めての登場。カジュアルなアーミージャケットをまとってステージインすると、早くもフロアに歓喜が沸き起こる。MC含め陽気に振る舞うリリー、繊細かつソウルフルなコーラスでハーモニーを厚くするタージ、そして圧倒的な声量と安定感で一瞬でオーディエンスの耳を奪うココ。ビッグヒットを重ねていた90年代のコンビネーションがそのまま2016年夏の東京に現れた。

 バンド・イントロからの「キャン・ウィー」を経て「アイム・ソー・イントゥ・ユー」になる段階で、オーディエンスのギアはかなり上がっていた。そして、早くも「ライト・ヒア」を繰り出すと、“バック・トゥ・ザ・90's”のかけ声がなくとも、一気にあの時代のグッド・ヴァイブスがフロアを支配していく。
 多少細かいことをいえば、ジミー・ヒルのドラムがタイトでドライな音を出しすぎたのか、特に序盤はやや彼女らのコーラスワークを削ぐような音鳴りに聴こえてしまったことと、1曲がフルコーラスでなくメドレー風の短尺にまとめられていたことが気がかりではあった。ただ、見方を変えれば、スムーズな流れを意識したコンパクトなステージに仕上げてきたともいえるが。

 それはそうと、彼女らが再結成後もトップ・パフォーマンスを維持していられるのは、やはり“現役”であり続けているということ。ここでいう現役とは、ステージに立っているという意味と今の時代にも存在感を誇れる楽曲を提供し続けているということだ。
 2012年来日時には『アイ・ミスト・アス』を引っ提げて、この2016年には『スティル』というアルバムを放ってからのツアーとなる。序盤からキラー・チューンの「ライト・ヒア」などを惜しげもなく披露出来るのは、もちろんヒット曲の多さもあるが、最新の楽曲でも十分に勝負出来るというクオリティと自信があるからに他ならない。

 「あらゆる男性に送る歌よ」とリリーが語りかけて始まった「エイント・ノー・マン」、「次はシンプルな歌。女性だったらわかるはず」と告げてスタートした「MCE」(イントロから「レディ・イン・マイ・ライフ」を想起させるマイケル・ジャクソン・マナーが美味)と、男女それぞれに問いかけるメッセージ・ソングを最新作『スティル』から引っ張ってくるなども、過去曲と遜色ない楽曲をしっかりと持っているからこそ。そこにパワフルなココ、エレガントさを失わずにパッションを伝えるリリー&タジーのコーラスが絡むのだが、キャリアを重ねたヴェテランならではの貫禄が備わっているのだから、鬼に金棒というもの。力みのない押し引きを効かせた自然体でのパフォーマンスは、オーディエンスのあらゆる緊張も見事に取り除いていく。

 中盤には雨粒が背後のカーテン一面に映し出されて歌い上げるセクシーでセンチメンタルな人気曲「レイン」や会場を3区分してのコール&レスポンスで盛り上げた「ゼイル・ネヴァー・ビー」、さらにはリリーがリードを執りローリン・ヒルよろしくのフージーズ・カヴァー・ヴァージョン「キリング・ミー・ソフトリー」を配置。メンバーの自己紹介がてらのソロ・パートを組み込んだりとフロアにエネルギッシュな熱をもたらすスイッチを入れると、“タメ”を作るかの如く「ダウンタウン」のショート・ヴァージョンを助走をとり、さらにオーディエンスにスタンディングを求め、ほぼ総立ちでの「ドゥ・ヤ」「コ・サイン」「ウィーク」の3連打で本編は幕。熱覚めやらぬままアンコールの拍手に応えて再びステージインするSWVの3名が最後の最後に選んだのは「エニシング」。1994年の映画『アバヴ・ザ・リム』(邦題:ビート・オブ・ダンク)サントラ提供曲で、ウータン・クラン客演部分のラップもしっかりとフロウし、インパクトを残してのエンディングとなった。

 90年代R&Bのスムーズなグルーヴという土台を壊さず、2010年代にも浮つかない浸透性を(アルバムや楽曲でやるだけでなく)ステージ上のパフォーマンスでも実践してしまうところは、彼女らの持つ輝かしい才能とこれまで培ってきた熟達の技が秀でているということになろう。ボディラインやルックスにはやや熟度が高まっているところはあっても、彼女らのコーラスやハーモニーを聴けば、瞬時にコンフォータブルなグルーヴと空間を創り出してくれる。70分では名残惜しい、スタイリッシュでコンテンポラリーなSWV流ショートムーヴィーを堪能したような気分に、胸の内も微笑ましさで満ちたのだった。



◇◇◇

<SET LIST>
00 INTRODUCTION
01 Can We(*3)
02 I'm So Into You(*1)
03 Right Here(*1)
04 You're The One(*2)
05 Ain't No Man(*5)
06 Use Your Heart(*2)
07 Rain(*3)
08 MCE(Man Crash Everyday)(*5)
09 There'll Never Be(Switch Remake)(*4)
10 Killing Me Softly(Covered by The Fugees ver.)
11 Downtown(*1)
12 Do Ya(*4)
13 Co Sign(*4)
14 Weak(*1)
≪ENCORE≫
15 Anything(*1)

(*1)Song from album『It's About Time』
(*2)Song from album『New Beginning』
(*3)Song from album『Release Some Tension』
(*4)Song from album『I Missed Us』
(*5)Song from album『Still』

<MEMBER>
Cheryl“Coko”Clemons(vo)
Tamara“Taj”Johnson(vo)
LeAnne“Lelee”Lyons(vo)

Alexis Hill(key)
Chabra C Mercer(b,key)
Jimmy Hill(ds)




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コメント一覧

野球狂。
まったく問題ありませんよ
http://blog.goo.ne.jp/jt_tokyo
Hide Grooveさん、拙ブログをブックマークしていただき、恐縮です。他愛もないことをその時の気分でしか書いてないのですが、僅かでも何かの暇つぶしになれば幸いです。
Especiaに興味がある方は周囲にあまりいないので、こちらも嬉しい限りです。

「Weak」については、いいんですよ。あの文章にはそんなミスを吹き飛ばすほどの思いが詰まってましたからね。自分もよくスペルミスどころか日本語のミスをしまくりますし(笑)

他の熱心な音楽ブロガーさんと違って、あまり書く時間もないので不定期なブログですが、よろしくお願いします。
Hide Groove
返信ありがとうございます!
野球狂。さん、温かい返信ありがとうございます。このブログ、個人的に興味深いアーティストを取り上げてくれているので、過去に遡り読んでます😁(今後のESPECIA記事…同感ですよ)

スペルのミスってました。情けない。
『Weak』を『Week😓』
触れずに返信を書いて頂いた野球狂。さんの優しさに感謝!💨
ブックマークしましたので、今後もお付き合い宜しくお願い致します!
野球狂。
ファルセット!!
http://blog.goo.ne.jp/jt_tokyo
Hide Grooveさん、初めまして。コメントありがとうございます。
中野サンプラザに行かれてたんですね! 自分は行けなかったのですが、その時ぶりということはさぞかし感慨深かったのではないかと思います。
「There'll Never Be」のコーラスはココもその歌声に驚き喜んだのではないでしょうか(笑)会場の観客もその姿を見て楽しませてもらったと思います。

自分も以前、キャロン・ウィーラーのライヴでマイクを向けられて歌ったことがありまして(苦笑)……あの時間は何とも言えないものですが、なにはともあれ貴重な体験ですよね!

拙ブログで少しでもあの時間の余韻に浸れるお役に立てたのなら幸いです。

こちらこそありがとうございました。
Hide Groove
同じ時間に同じ場所で…
初めまして、ブログを読みながらあの時間を思い出していました。SWVのライヴは二回目、前回はSWV初来日20年ほど前の中野サンプラザでした。
今回、とても楽しみにしていたので会場入りして彼女達のアイコンTシャツを早速購入🎵
席はど真ん中前から二つ目のテーブルでSWVと三メートル程の最高の席でした。
ライヴが始まるとウズウズしてた気持ちが爆発💣踊り狂ってました。
『THERE'LL NEVER BE』コール&レスポンス、COCOがステージから降りてきた時、予感はありました…俺にマイクが来るんじゃないか😓
COCOがそっと背中に手を置いてくれた瞬間、もう倒れそうでしたが、マイクを口元にそっと運んでくれたCOCOの優しさに、男には高すぎるキーでしたが、カスカスのファルセットで歌ったのは自分であります。COCOのハグ…凄く良い香りがしました。あの時間あの場所で『WEEK』は涙が自然に溢れていました。
長くなりましたがあの興奮がまだ冷めておらず、こちらのブログを読みながら温かい気持ちが甦ってきました。ありがとう!
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