*** june typhoon tokyo ***

BONNIE PINK@赤坂BLITZ

Bonniepink_one_00

 ボニーもマイケル・トリビュート。

 BONNIE PINKの5月リリースの10thアルバム『ONE』を引っ提げてのツアーの8公演目、<BONNIE PINK TOUR 2009 “ONE”>の赤坂BLITZの最終日公演を観賞してきた。新装した赤坂サカス内の赤坂BLITZには初めて。以前のBLITZは地下鉄千代田線の赤坂駅の出口まで階段を昇り、さらにBLITZまで左へカーブする階段を結構歩かなければならないという駅から近いのに遠く感じる構造だったが、赤坂サカスの誕生とともに整備され、千代田線改札から直結。階段も緩やかでいい。
 新装BLITZは以前よりも収容人数が減ったのか、ZEPPやAXと比べると狭くこじんまりとした感じ。高台の後方からだと天井(2階席)が近く上方の視界が遮られる。ステージを観るには支障はないが、気にはなるかも。

 メンバーはアイゴンこと會田茂一と高桑圭のHONESTYコンビに代わり、5thアルバム『Just a Girl』でプロデュースもしているLITTLE CREATURESの鈴木正人をバンマス/ベースに、ギターが八橋義幸、ドラムにはGREAT3の白根賢一。そしてキーボードには奥野真哉(SOUL FLOWER UNION)、パーカッションにNANAとおなじみの面子がバックを固める。ステージ前には夕闇の空と街並の背景にツアー・タイトル・ロゴが星座風に書かれていた幕が降りていた。

 さまざまなプロデューサーとの出会いから生まれた『ONE』は、BONNIE PINKのこれまでの幅広い音楽的振幅を凝縮させたアルバムだが、純粋な意味でそれをコンパクトに表現したステージだった。シンプルだが間延びもなく、変な気負いも感じられなかった。彼女の場合、楽曲的な質というよりも、精神的な質によって好不調が現れるタイプだと思うので、心に余裕を持ちながら疾走を楽しむというくらいがいいパフォーマンスを生むのだと思う。渾身のラストスパートよりも、ラストスパートへの軽快な助走の時の方が本来の力を発揮出来るというか。そういう意味では、毎回「さあ、これからって時でツアーが最終日になってしまうんで」という彼女の言質が、一番よい形で体現されたステージになったのではないだろうか。

 序盤の「Rock You Till the Dawn」から数曲はMCを挟まずにシンプルに楽曲を繰り出していく。レゲエ調のビートの上で軽やかに跳ねるようなポップネスが魅力の「フューシャ フューシャ フューシャ」は微笑ましく、「妄想LOVER」の“妄想~”のくだりでは、にやりとさせられるような甘い大人の色香がかすかに散りばめられていたりと、シンプルな進行ではあるが、それぞれに異なった味わいが楽しい。
 BONNIE自身は、楽曲制作の過程でのさまざまな出会いのなかでスウェーデンのプロデューサーマーティン・テレフェ(Martin Terefe)の、皆でああだこうだと話しながら楽曲を飾り付ける制作スタイルが印象に残っていたという。彼女のどこかアナログ的な(生の音を大事にする)姿勢とフィットしていたのかもしれない。そのマーティン・テレフェとの制作曲「Try Me Out」では、観客とのコール&レスポンスも含みながら、軽快なパフォーマンスを披露していた。
 
 個人的に注目していたのは、『ONE』の中でも特に異色とも言える「PLAY & PAUSE」。ネリー・ファータドのプロデュースで知られるカナダ人プロデューサー・チーム、トラック&フィールド(TRACK & FIELD)の制作曲。抑揚の激しいメロディをヒップホップ的アプローチとファルセットを多用したヴォーカルを駆使しながら軽やかな酩酊感と高揚感を生み出す中毒性の高いナンバーだが、ステージでも唯一といえるカラフルなスポットライトを交互にチカチカと点滅させた恍惚を煽るような演出がなされていた。ハイライトとなるラップ・パートもすんなりと決めてみせた。BONNIEがラップ? とイメージが湧かない人も多くいるだろうが、楽曲としても違和感なく挟み込まれているので、彼女の(いい意味での)雑食性が開花した楽曲なんだと思う。それにしても、このラップ、クレイグ・デイヴィッドの高速フロウに影響されたのだろうか。それと、まぁないとは思ったが、そのクレイグとの楽曲「Fed Up」は今回のステージではなし。ラストだし特別ゲストとかで来ないかなと98%ないとは思いながら期待したものの、予想通りクレイグの登場もなし。「A Perfect Sky」バブル(苦笑)の時だったら、可能性は高かったかもしれないけれど、元来のBONNIE PINKファンとクレイグ・デイヴィッドが結びつくかというとあまり想像出来ないので、それはそれでいいか。(爆)

Bonniepink_one_02 エンディングとともに本公演でのトピックとなったのは、中盤で配されたマイケル・ジャクソン・メドレー。“天にいるキング・オブ・ポップまで歌声よ届け”と、「ブラック・オア・ホワイト」「ビリー・ジーン」「ロック・ウィズ・ユー」をセレクト。「ブラック・オア・ホワイト」では右手にシルバーのラメを施した手袋、「ビリー・ジーン」では白のハットを被るマイケル・トリビュート。“アオ”や“ホゥッ”といったアドリブも忠実に組み入れたり、足元さえ見なければ完璧なムーンウォーク(笑)も披露したりと、熱いパフォーマンスとなった。年代的にもそうだろうが、海外へ行く機会の多い彼女にとって、自身が思う以上にマイケルの話は他方から耳にすることが多いのだろう。先日のAIもそうだし、邦楽アーティストのライヴでそれぞれ追悼されるマイケルは、やはり偉大で最高のスーパースターだったのだと再確認。

 そしてもう一つのトピックのエンディングだが、本編は「Happy Ending」、アンコールでは「Tonight, The Night」。ともにコール&レスポンスを採り入れた一体化した空間となった。「Happy Ending」ではサビ部分を男性がメイン・メロディ、女性がハーモニー・パートをそれぞれ歌う演出。男性の声がやや小さめで、“男らしく~腹の底から~”と煽られたものの大音量とまではいかず、ある程度まで大きくなったところで“このあたりで許してあげよう~”とBONNIE姉に配慮してもらった形に。(笑)
 「Tonight, The Night」は、弾力とキレがある原曲とは趣向を変えて、夏らしい爽やかなボッサの要素を隠し味にしたようなアレンジに。途中で手拍子を使ってのコール&レスポンスを挟み込んだのだが、これがBONNIEが取る変幻自在のアドリブ・リズムに観客が呼応するというもの(パン・パン・パン・パンと手拍子すると、観客も同じように続ける。だんだんと手拍子だけじゃなく、“ニャー”だの“ワン”だの“フーフー”だの掛け声も組み合わせる形に……)。思わず“これ、楽しい~、もっとやろう!”となり、最終的にはBONNIEが指名したNANAが前に出てきてBONNIEに代わり先導役へ。さらに、NANAが“言い出しっぺの奥野さんも、バンドのみんなも、スタッフも、みんな出てきてください”という展開に。ただし、NANAの先導は、手拍子よりも“ピース・ピース”のようなジェスチャー系が多く、無音状態が続くため、ドラムの白根が途中でリズムを刻みに帰るというハプニングも。従来のライヴではそれほどコール&レスポンスは見られなかったが、一体化したいという気持ちが強く現れたのかもしれない。

 “最後はみんなでバンザイしたい”ということで、バンド・メンバー、スタッフらと一列に並んで礼&バンザイ。メンバーが去った後、感謝を述べるBONNIEだが、“まだ帰りたくないなぁ~”ということで、オーラスは“最後にふさわしい曲を”ということで、“最後”という言葉がタイトルになっている「Last Kiss」をギターの弾き語りで。この楽曲の質の高さはいうまでもなく、彼女の声を堪能するのにピッタリの選曲で、ステージの爽やかなクール・ダウンと次回への希望・期待を喚起させるに充分なものであった。
 ヘトヘトになるのではなく、余力を残して、腹八分目で終えるステージというのが、彼女にとっては素晴らしいパフォーマンスに繋がるんじゃないか、そう強く感じたステージだった。人々によって見方は異なるし、いわゆる“いいライヴだった”としても、パーフェクトでは決してない。“ただ、贅沢を言えば、もうちょっとだけこうだったら……”というくらいが、ステージ濃縮度という意味ではベターだし、次も参加したいという欲へと繋がるのだと感じた。


◇◇◇

<SET LIST>

00 INTRODUCTION
01 Rock You Till the Dawn
02 フューシャ フューシャ フューシャ
03 妄想LOVER
04 Princess Incognito
05 Won't Let You Go
06 Mint
07 One Last Time
08 Try Me Out
09 PLAY & PAUSE
10 秘密
11 Anything For You (Acoustic Version)
12 Michael Jackson Tribute Medley
BLACK OR WHITE
BILLIE JEAN
ROCK WITH YOU
BLACK OR WHITE
13 A Perfect Sky
14 Joy
15 Get on the Bus
16 鐘を鳴らして
17 Happy Ending
≪ENCORE≫
18 かなわないこと
19 Heaven's Kitchen
20 Tonight, The Night (Summer“Clap”Remix)
21 Last Kiss (Acoustic Version)

<MEMBER>

BONNIE PINK (Vo/G)
鈴木正人 (BAND MASTER/B)
八橋義幸 (G)
奥野真哉 (Key)
白根賢一 (Ds)
NANA (Per/Cho)

ランキングに参加中。クリックして応援お願いします!

名前:
コメント:

※文字化け等の原因になりますので顔文字の投稿はお控えください。

コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

 

  • Xでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

最新の画像もっと見る

最近の「ライヴ」カテゴリーもっと見る

最近の記事
バックナンバー
人気記事