*** june typhoon tokyo ***

浦和×FC東京@埼スタ【YBCルヴァンカップ】


 今季、浦和に4敗目を喫して、ルヴァンカップ終了。

 第1戦、ホームの味の素スタジアムで1-2と逆転負けを喫したFC東京。浦和にアウェイゴール2得点を与えたため、第2戦では最低2得点以上が必要となった試合。開き直って攻め続けるしかないというシンプルなスタンスだったが、蓋を開けてみれば今度は先制すら出来ずに前半のうちに2失点を食らう体たらく。後半の中盤以降は多くの選手の足が止まり、心身共に疲弊しての惨めな敗戦となった。

 両チームとも日本代表の選手を送っているが、森重、丸山とチーム要のCB二人を代表に抜かれたFC東京と西川、槇野、柏木と抜かれても選手層が厚い浦和とではチームに与えるダメージの差が小さくなかったというのは、あるといったらある。しかしながら、圧倒的な実力差で全く歯が立たないというほどではなかった。細かいところを突けばさまざまあるが、大まかにまとめて言えば、普段通り出来ることを遂行した浦和とそれが出来なかったFC東京の差がそのまま得点数の差に出てしまったのだと思う。

 前からプレッシャーを掛けて得点を積み重ねていかなければならないFC東京だったが、中盤から最終ラインの押し上げが遅く、それゆえボランチ前後にスペースを与えてしまってばかりでは、前へ繋ごうにも繋げない。特に、田邉、梶山の両ボランチが素早く前を向いてボールを供給することがなく、ほとんど一度最終ラインへはたいてしまうため、ボールを前線へ動かす速度が遅く、相手陣内へ押し込む道筋を自ら消してしまっている状態。ボックス付近へ運んでいったとしても、パスを繋ぐだけでシュートアクションまでに時間が掛かり、相手陣内へ重心を移した矢先にボールロストして反撃を食らうことの繰り返しで、シュートを撃てずに消化不良、シュートで終わらずボールを奪われてカウンター対応に追われて疲弊するという悪循環に陥ったまま、あっという間に失点を重ねていった。

 ただ、浦和に穴がない訳ではなかった。前線からのプレッシャーと中盤以降が連動しボールの出しどころを抑えられれば、元来両端に広くポジションをとり前線に5人並ぶような形になる特殊な浦和の陣形は、守勢に回れば人数が足らなくなる。そこを突き、厚みを持った前線との距離を拡げられれば、浦和の攻撃も停滞していき、その陣形を崩させることも可能となる。リーグ戦でのアウェイ戦、ムリキ、バーンズが躍動した試合の前半はまさにそのような形で浦和から早々に2得点を奪って見せた。

 だが、実際はほぼノープレッシャーの中で巧みにサイドチェンジを使われ、中央ばかりに人数を掛けて守ろうとするFC東京を嘲笑うかのようにサイドのフリーの選手へボールが渡ると、そのボールを追うことで手一杯になり、マークもずれて、ゴール前へ次々と斜めから走り込んでくる浦和攻撃陣の重圧に耐えしのぐことが出来ないまま、時間が過ぎていくばかり。いくら個の実力があるとはいっても、ロングフィードの出し手と受け手に人を寄せられずフリーな状態という余裕があれば、長い距離だとしても精度の高いキックやパスをすることはそれほど難しいことではない。

 それに引き換えFC東京は、狭い地域での細かなパス交換やドリブル突破で打開しようと試みるものの、始動が遅く、球離れも悪いために相手の寄せの圧力に屈し、焦りを生んで正確性の低いパスによるパスミスや背後から迫った相手からボールを奪われるなどを繰り返し、チャンスの芽を自ら摘んでしまう。終盤80分頃からようやく浦和最終ラインの左右前後に出来たスペースへ走り込む展開が生まれると、その流れの中で中島翔哉が1点を返すが、そこまで。ナビスコカップからルヴァンカップと名を変えてのカップ戦の最初の王者を決めるステージへの切符を、興梠のハットトリックという願ってもない勢いをつけてFC東京は送り出してしまった。

 普段通りのプレーをするための土台を築きながら共通認識の下でビルドアップしていく浦和と、窮屈なプレイへと自らが追い込んでしまい、ギャンブル性の高いプレーを選択せざるを得ずにミスを多発させた東京。その差が本来の実力差以上のパフォーマンスや結果へと結びついてしまったといえる。常にボールを相手ゴールへと推し進める強度を高めなければならないということ、そして常に逡巡せずにシュートを撃つということが結局はゴールや勝利に近づくんだということを、いま一度叩き込まねばならない。

 普段通り、という意味では、采配からそれは露呈していた。本職CB二人を代表で、DFにおいてはユーティリティに起用できる徳永を怪我で欠いてはいたが、これまでSBに配されたことはあるにせよ、東京での試合でCBを経験していない橋本を不利な状態からスタートする第2戦にスタメン起用させるのは大いに疑問が残る。もちろん采配には"相手の裏をかく”秘策も有効手段となりうるが、その一見秘策や奇策と取れる作戦の成功例は、実はしっかりとした裏打ちがあってのものがほとんど。チームの選手層事情があるにせよ、要となるポジションにおいてのギャンブル性は果たして必要だったか、首を傾げるばかりだ。

 首を傾げるということについてはもう一点。試合終了後、ゴール裏は「ユール・ネヴァー・ウォーク・アローン」のチャントと拍手で選手を迎えたが、個人的には賛同しかねる。リーグ、カップ戦の違いはあれど、1年に同じ相手に4度も(しかも同じような内容で)負けたチーム・選手に、その場面で健闘の歌と拍手は果たして必要だっただろうか。やみくもにブーイングをすればいいとは思わないが、少なくともプロのサッカー選手たちだ。そのプロフェッショナルの気概を見せられずに終わったならば、叱咤することがあってもいいと思う。口では重要な試合で思うような結果が出せずに申し訳ないと言っても、その悔しさが本当の意味で身に染みているのかどうか。高い壁を乗り越えるためならなおのこと。今季はブーイングも致し方ないと感じた場面でも“ユルネヴァ”で励ますことが多かった気がする。それがすなわち結果となって表われる訳ではないが、頂点を常に目指すのであれば、慰めるばかりではここぞという場面での反骨精神を得られない。

 この敗戦はルヴァンカップだけでなく、このままだと次回以降の浦和戦へも大きく影響を与えかねないほどのものだと思うが、良かったことにも言及しておく。SBを担った小川、室屋の若手は(特に小川は駒井にエリア内でファールを犯してPKを与えてしまったりと)納得のパフォーマンスを出せたとは言い難いが、今後のスキルアップのための糧としてはいい経験が出来たはずだ。そして、最後まで仕掛けた中島翔哉やネイサン・バーンズの姿勢があったからこそ(焼け石に水ではあったが)、アウェイで得点を奪うことも出来た。

 ちなみに、今季現時点において、リーグ戦で浦和からホーム、アウェイどちらも得点を挙げたのは鹿島、神戸とFC東京の3チームのみ。カップ戦(ルヴァンカップ)も含めると、勝敗は別にして必ず浦和から得点を挙げているのはFC東京ただ1チームである。失点が多く敗れてはいるが、毎試合得点を奪えている。そこに今後において継続すべき課題と勝利へのヒントが隠されているはずだ。

 FC東京の次の試合はリーグ2ndステージ第15節、こちらも苦手としている鹿島が相手となるが、この悔しさを結果という形で払拭すべく準備して欲しい。
 それと、個人的には、GK秋元とDF陣との連係がもう一つ噛み合っていないので、一度ヴェテランの榎本を起用して、試合の中での経験や見方を得る機会を作ってもらいたい。

◇◇◇
 
【YBCルヴァンカップ 準決勝第2戦】
2016年10月09日/埼玉スタジアム2002/14:04キックオフ
観衆:26,876人
天候:曇、無風
気温:23.6度/湿度:54%
主審:西村雄一/副審:宮島一代、西尾英朗/4審:平間亮/追加副審:飯田淳平、上田益也

 浦 和 3(2-0、1-1)1 FC東京

得点:
(浦):興梠慎三(24分)、興梠慎三(38分)、興梠慎三(53分、PK)
(東):中島翔哉(81分)

≪スターティングラインアップ≫
47 GK 秋元陽太
06 DF 室屋成
29 DF 吉本一謙 → 高橋秀人(60分)
37 DF 橋本拳人
25 DF 小川諒也
10 MF 梶山陽平
27 MF 田邉草民 → ネイサン・バーンズ(46分)
17 MF 河野広貴 → 水沼宏太(70分)
38 MF 東慶悟
39 MF 中島翔哉
09 FW 平山相太

≪サブスティテューション≫
31 GK 圍謙太郎
04 MF 高橋秀人
22 MF 羽生直剛
32 MF ユ・インス
48 MF 水沼宏太
16 FW ネイサン・バーンズ 
20 FW 前田遼一

≪マネージャー≫
篠田善之

◇◇◇

【YBCルヴァンカップ】

≪準々決勝≫
第1戦 2016/08/31(水)19:30△FC東京 1-1 福 岡(H・味スタ)
第2節 2016/09/04(日)19:00〇FC東京 2-0 福 岡(A・レベスタ)

≪準決勝≫
第1戦 2016/10/05(水)19:30×FC東京 1-2 浦 和(H・味スタ)
第2節 2016/10/09(日)14:00×FC東京 1-3 浦 和(A・埼 玉)

≪決 勝≫
第1戦 2016/10/15(土)13:05 G大阪×浦 和(埼 玉)





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