意地を見せて1点差に迫るも、6戦未勝利に。
台風と悪天候の影響もあり、FC東京は2日前に広島へ向かったものの、静岡・新富士付近で立ち往生。新幹線にて長時間“缶詰”にされ、やむなく静岡で宿泊後、陸路での西進を試みるも断念せざるをえず、一度帰京してから当日空路で広島入りを目指すこととなった。J1では磐田対横浜FM、京都対鹿島、C大阪対G大阪の3試合が早々と中止の判断が下る一方、今後の広島のハードスケジュールを鑑みるに併せて、TOTOをはじめとするサッカーくじでは指定試合の不成立を考慮してなのか、Jリーグは試合開催を決断。FC東京が広島戦に間に合わない際には試合放棄と同等で0-3の不戦敗に、1000万単位の罰金が科せられるなどの状況も考えられた。SNS等では、湘南がさらに1日早く動いて鳥栖入りし、プロ野球のヤクルトの選手たちが広島入りしている例を出し、FC東京のスケジュールを“悪手”として言及する者も現れた。
たとえば、「初めから空路で向かえばよかった」と言うが、仮に空路で向かう途中で台風の影響で着陸出来ず、引き返すことになったとしたら、どうなのか。「3日前に移動すれば」という者は、宿泊を前倒しにすると、Jリーグの旅費規程対象外となり、移動費用が発生することを知っていたのか。不可解な進路や速度で動く台風と、それとは関係なく東海・関東を見舞った大雨という影響を避けられたのは、あくまでも結果論。予測不可能な自然を相手に最善策を尽くすも、吉と出るか凶と出るかというところで、FC東京がとった選択が凶と出てしまっただけだ。結果として、FC東京は当日に山口県の空港から陸路で広島入りを果たし、広島との試合を実現させた。それ以上でもそれ以下でもない。試合開催を決断した経過については、今後の対応策としてJリーグが明らかにし、綿密に議論をしていかなければならない問題だが、当初の試合開始時刻にホームの広島とアウェイのFC東京、それぞれの選手たちがピッチに立っていたことが全て。善悪を決めるものではない。
東京から広島への移動に手こずり、コンディションが万全でないFC東京だが、試合開始の笛が鳴れば、それは関係ない。2分にFC東京は広島のミスからボールを奪うと、ディエゴ・オリヴェイラがペナルティエリアからシュートを放ち、ゴールを脅かす。いい試合の入りが出来たかと思わせたが、5分にペナルティエリア左からの満田のシュートが中村に当たって、ファーサイドへの浮き球となると加藤がダイレクトでシュート。土肥が頭でクリアするも、そのボールを収めきれなかった高が弾いたこぼれ球がトルガイ・アルスランの元に。そのまま右脚を振り抜くと、土肥の股下を抜けたシュートがネットを揺らし、広島が先制に成功した。
すると、試合の流れは一気に広島へ。FC東京は飲水タイム後にようやく初のCKを獲得して反撃へ移行しようとするも、広島の主導権は変わらず。32分にペナルティエリア右からのグラウンダーのクロスを森重が弾くも、そこに加藤が詰めてこぼれたボールに再びトルガイ・アルスランが反応。右脚を振り抜き、2得点目を挙げた。FC東京はボックス内の人数は足りていたが、土肥の相手へ詰める出足が鈍り、トルガイ・アルスランの精度の高いシュートに屈してしまう。
50分過ぎからようやくシュートを放つようになったFC東京。広島は、川辺の2枚目のイエローかという場面(主審はアドヴァンテージで流した)もあってか、川辺に代えて塩谷を投入。FC東京の攻撃がようやく見え始めたなかで、ペナルティエリアに侵入した松本泰志を高が倒してしまい、PKの判定に。これをトルガイ・アルスランが冷静に決めて、広島が3点目を奪い、ほぼ勝利を手中にしたかと思えた。
意地を見せたいFC東京は、64分に荒木遼太郎、エヴェルトン・ガウディーノを下げて、遠藤、俵積田を、71分に高、ディエゴ・オリヴェイラを代えて東慶悟、小柏をピッチに送る。広島もその間に満田を中島洋太朗に、新井を越道に、ハットトリックを決めたトルガイ・アルスランをドウグラス・ヴィエイラに、3枚替えを敢行して、広島にペースを呼び戻そうとしたが、選手投入でバランスを崩したか、疲労によって動きが鈍くなったか、オープンな展開へ移行。加藤や荒木隼人が好機にことごとくシュートを決められないでいると、79分に左サイドを突破した俵積田のマイナスのクロスに中央から走り込んできた小柏がシュートを決めて、FC東京が1点を返す。
その後、FC東京が広島陣内へ攻め込む時間が続き、アディショナルタイムに仲川がショートコーナーを選択。遠藤からのリターンを受けると、広島・中島をかわしてペナルティエリア右奥へ侵入。シュート性の速いクロスが広島DF陣に当たってオウンゴールを誘発。3対0から3対2と1点差に詰め寄った。だが、広島は何とか逃げ切りに成功。7連勝を果たし、町田を抜いて首位に躍り出た。FC東京は6戦未勝利に。長い低迷のトンネルを抜けることは叶わなかった。
強い広島に対して、FC東京が1点差まで詰め寄ったことを評価する向きも多いだろう。だが、それはあくまでも広島が3点を奪い、FC東京にとって厄介だったトルガイ・アルスランと川辺が下がって、広島がバランスを崩し、オープンな展開になったのも要因の一つ。前半の失点以降は、攻勢をかけることが出来なかった。それはやはり、FC東京は球離れとパススピードが遅いこと、トラップが甘いことに尽きる。さらにアタッキングサード以降の拙攻や、なによりシュートを打って攻撃を終わらせるという意識が足らなかった。狭い地域でのパス交換で打開出来ずにボールを奪われ、カウンターで高い位置をとっている両SBの裏を突かれて、ピンチを招くことの繰り返しだ。特にこの日は土肥、高、荒木が出足が遅く、ボールを奪われる狙われどころとなっていた。
ポジティヴな部分では、まずは、何と言っても、後半で顕著となった“負けられない”“このままでは終われない”という闘志だろう。仲川や中村、白井、小泉に後半から出場した小柏など、素早くゴールへ向かう姿勢がチーム全体で共有出来たところが、ゴールに繋がったといえる。精神的な部分ではあるが、そのがむしゃらさこそが、今のFC東京に足りない部分だった。攻勢を続けている時は、広島にある種の“緩み”が垣間見えたとしても、ダイレクトタッチや素早い縦パスなどプレーの質も上がり、久しぶりに攻撃に脅威をもたらした。2戦連続3失点、8月に入って3度目の3失点と守備には大いに修正とテコ入れが必要だが、8月を無得点で終わらずに済んだのは、再起へ繋げられる要素でもある。
疲労困憊だろうFC東京だが、次節まで2週間のインターバルがあり、リカヴァリに費やす時間があるのは朗報。新国立競技場となって以降、無敗の国立で名古屋を迎えることになる。リーグも残り10試合を切ったが、現時点で降格圏18位の磐田との勝ち点差は10(磐田は今節中止で1試合未消化)と、このところ勝ち点を積み重ねられていないFC東京にとっては、この流れを止めないと残留争いに巻き込まれる可能性が高くなってくる。“国立は無敗”という、ジンクスに頼り過ぎると痛い目に合うのが常だが、それが覆されるようだと、ますます残留争いが現実味を帯びてくる。その意味でも最も大切な2週間ということになろう。体力・コンディション回復は当然だが、今節の後半に見せた気持ちとチーム一丸となって立ち向かう精神力を欠如させず、不調から脱する勝利を掴み取るべく準備をしたい。
◇◇◇
明治安田J1リーグ 第29節
2024年8月31日(土)18:33KO
エディオンピースウイング広島
入場者数: 24,451人
天候:晴 / 気温:29.2℃ / 湿度:68%
主審:荒木友輔
副審:淺田武士、大塚晴弘
第4の審判員:武田光晴
VAR:高崎航地
AVAR:赤阪 修
広 島 3(2-0 / 1-2)2 FC東京
天候:晴 / 気温:29.2℃ / 湿度:68%
主審:荒木友輔
副審:淺田武士、大塚晴弘
第4の審判員:武田光晴
VAR:高崎航地
AVAR:赤阪 修
広 島 3(2-0 / 1-2)2 FC東京
【得点】
(広):トルガイ・アルスラン(5分)、トルガイ・アルスラン(32分)、トルガイ・アルスラン(63分、PK)
(東):小柏 剛(79分)、オウンゴール(90+1分)
〈試合経過〉
05分 得点 広島 トルガイ・アルスラン
29分 警告 広島 川辺 駿
32分 得点 広島 トルガイ・アルスラン
56分 交代 広島 川辺 駿 → 塩谷 司
63分 得点 広島 トルガイ・アルスラン(PK)
64分 交代 東京 荒木遼太郎 → 遠藤渓太 / エヴェルトン・ガウディーノ → 俵積田晃太
67分 交代 広島 満田 誠 → 中島洋太朗 / 新井直人 → 越道草太 / トルガイ・アルスラン → ドウグラス・ヴィエイラ
71分 交代 東京 高 宇洋 → 東 慶悟 / ディエゴ・オリヴェイラ → 小柏 剛
79分 得点 東京 小柏 剛
90+1分 得点 東京 オウンゴール
90+5分 警告 広島 ドウグラス・ヴィエイラ
【FC東京メンバー】
〈スターティングメンバー〉
GK 41 野澤大志ブランドン
DF 02 中村帆高
DF 32 土肥幹太
DF 03 森重真人
DF 99 白井康介
MF 08 高 宇洋
MF 37 小泉 慶
MF 71 荒木遼太郎
FW 09 ディエゴ・オリヴェイラ
FW 39 仲川輝人
FW 98 エヴェルトン・ガウディーノ
〈控えメンバー〉
GK 13 波多野豪
DF 44 エンリケ・トレヴィザン
DF 05 長友佑都
MF 10 東 慶悟
FW 11 小柏 剛
FW 22 遠藤渓太
FW 33 俵積田晃太
〈監督〉
ピーター・クラモフスキー
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【明治安田J1リーグ 2024シーズン FC東京試合日程】
第01節 02月24日(土)15:00△FC東京 2-2 C大阪(A・ヨドコウ)
第02節 03月02日(土)15:00△FC東京 1-1 広 島(H・味スタ)
第03節 03月09日(土)16:00✕FC東京 1-2 神 戸(H・味スタ)
第04節 03月16日(土)13:00〇FC東京 3-1 福 岡(A・ベススタ)
第05節 03月30日(土)15:00✕FC東京 0-3 川 崎(A・U等々力)
第06節 04月03日(水)19:30〇FC東京 2-1 浦 和(H・国 立)
第07節 04月07日(日)17:00〇FC東京 2-0 鹿 島(H・国 立)
第08節 04月13日(土)16:00△FC東京 2-2 東京V(A・味スタ)
第09節 04月21日(日)15:00✕FC東京 1-2 町 田(H・味スタ)
第10節 04月27日(土)14:00〇FC東京 3-1 新 潟(A・デンカS)
第11節 05月03日(金)15:00〇FC東京 2-1 京 都(H・味スタ)
第12節 05月06日(月)14:00〇FC東京 2-1 札 幌(A・札幌ド)
第13節 05月11日(土)17:00△FC東京 3-3 柏 (H・味スタ)
第14節 05月15日(水)19:00✕FC東京 1-3 名古屋(A・豊田ス)
第15節 05月19日(日)15:00△FC東京 1-1 横浜FM(H・味スタ)
第16節 05月26日(日)15:00✕FC東京 0-1 G大阪(H・味スタ)
第17節 05月31日(金)19:00〇FC東京 1-0 鳥 栖(A・駅スタ)
第18節 06月16日(日)18:00△FC東京 1-1 磐 田(H・味スタ)
第19節 06月22日(土)19:00〇FC東京 1-0 湘 南(A・レモンS)
第20節 06月26日(水)19:00〇FC東京 1-0 札 幌(H・味スタ)
第21節 06月30日(日)18:30✕FC東京 0-1 福 岡(H・味スタ)
第22節 07月06日(土)19:00✕FC東京 2-3 柏 (A・三協F柏)
第23節 07月13日(土)19:00〇FC東京 2-0 新 潟(H・国 立)
第24節 07月20日(土)18:00✕FC東京 1-2 鹿 島(A・カシマ)
第25節 08月07日(水)19:00△FC東京 0-0 G大阪(A・パナスタ)
第26節 08月11日(日)19:00✕FC東京 0-3 川 崎(H・味スタ)
第27節 08月17日(土)19:00△FC東京 0-0 東京V(H・味スタ)
第28節 08月24日(土)19:00✕FC東京 0-3 京 都(A・サンガS)
第29節 08月31日(土)18:30✕FC東京 2-3 広 島(A・Eピース)
第30節 09月14日(土)19:00 FC東京 ✕ 名古屋(H・国 立)
第31節 09月21日(土)19:00 FC東京 ✕ 浦 和(A・埼 玉)
第32節 09月28日(土)17:00 FC東京 ✕ 横浜FM(A・日産ス)
第33節 10月05日(土)15:00 FC東京 ✕ 鳥 栖(H・味スタ)
第34節 10月18日(金)19:00 FC東京 ✕ 神 戸(A・ノエスタ)
第35節 11月03日(日)14:00 FC東京 ✕ 湘 南(H・味スタ)
第36節 11月09日(土)14:00 FC東京 ✕ 町 田(A・国 立)
第37節 11月30日(土)14:00 FC東京 ✕ 磐 田(A・ヤマハ)
第38節 12月08日(日)14:00 FC東京 ✕ C大阪(H・味スタ)
◇◇◇