レゲエ・ダブを活かしたソウル、ハウス、ヒップホップをミクスチャーしたようなスタイル“グラウンドビート”で80年代後半から90年代のクラブ・シーンを席巻したソウル・II・ソウル。DJ/プロデューサーのジャジー・Bが初代ヴォーカリストのキャロン・ウィーラーを引き連れてのショウを観賞。場所はビルボードライブ東京。その初日。
個人的にかなり“入れ込んだ”ソウル・II・ソウルだけにかなり期待していた当公演。とはいえ、ラップトップとギターにヴォーカルといった編制だとしたら萎えるなぁ……と思っていたら、バック・ヴォーカル3人にエレクトリック・ヴァイオリン2人を引き連れての10人編制と発表され、ますます期待を高めてのステージとなった。
中央奥にジャジー・B、その左にキーボードのエイドリアン・マッケンジー(彼は後半に2曲リード・ヴォーカルを執るが、前半は電子(パッド)パーカッションを担当)、右手にギターのカシュタ・タファリ。左端はトライアングルのフォーメーションで、バック・ヴォーカルのエマ・ブックノー、サマンサ・ペンネルズ、ジョディ・フィンドリーを配置。右端にはエレクトリック・ヴァイオリンのエレン・ブレアとジリアン・モーリーが横に並んでストリングスを奏でる。
ヴォーカリストは先発がキャロン・ウィーラー。シャルロット・ケリー、キーボードのエイドリアン・マッケンジーと続いて、本編ラストは再びキャロンといった流れ。アンコールではシャルロットも登壇し、ステージを締めくくった。
冒頭の「キープ・オン・ムーヴィン」のイントロで「バック・トゥ・ライフ」の一節を組み込んだりと、もうそれだけで興奮度は高まる一方だったのだが、キャロン・ウィーラーも黒の羽付きラメ入りのドレスを纏ってのダイナミックなダンスを見せてさすがの存在感を発揮。やはりヴォイス・オブ・“ソウル・II・ソウル”はこの人だと思わせる迫力があった。
続いて登場したヴォーカリストのシャルロット・ケリーはキンと張った“通る"ソウルフルな声をしているのだが、白人ならではのソウルフルなヴォーカルというか、ややソウル・II・ソウル色とは異なった感じ。天井のミラーボールが回ったディスコ・チューンなどではそのソウルフルな歌唱はしっくりくるものの、キャロンのイメージが強い自分には、ライダースーツのような黒いレザーの衣装(チャーリーズエンジェル風?)とロングのドレッドヘアという組み合わせのルックスも含めて、少なからず違和感があった。むろんキャロンは横ノリのグルーヴだが、シャルロットは上下のノリ、どちらかというとロックなどの尖った楽曲に合う感じも。これは、ブラックが持つ土着的なグルーヴ特有の“味”なので、致し方ないのかもしれないが。ただし、歌唱は上手い。その隙のなさも違和感に繋がったのかもしれない。
中盤ではジャジー・Bがステージ前方に出てきてトースティングするなど盛り上げた。非常に独創的な抑揚にあの太く腹に響くような声もソウル・II・ソウル・サウンドを象徴するものだが、この日一番の活躍をしたのは、バック・ヴォーカルの3人かもしれない。ソウル・II・ソウルの楽曲は前述の通り、レゲエ・ダブを活かしたというダブの要素が大いに占めているため、ヴォーカル・メロディを歌うメイン・ヴォーカルと同じくらいにサウンドに華を添えるバック・ヴォーカルの存在は欠かせない。「キープ・オン・ムーヴィン」「ラヴ・イナフ」「ゲット・ア・ライフ」と続く序盤から本編ラストの「バック・トゥ・ライフ」、アンコールの「フェアプレイ」「ジャジーズ・グルーヴ」まで、3人の動きをあわせたダンスを披露しながら、ヴォルテージを高める躍動するコーラス・ワークでオーディエンスを魅了していく。これでこそソウル・II・ソウルというステージがこの夜に生まれたのも、彼女ら3人の存在が非常に大きな意味を占めていたからに違いなく、ジャジー・Bもそれを認識していたからこそバック・ヴォーカル3名+ヴァイオリン2名という女性陣を両脇に配してきたのだと思う。
この日は座席もほぼ満席。なかにはビルボードライブへは初めて来場すると思われる人たちもいたようで、“ソウル・II・ソウル見たさ”に席を埋めた人々が少なくなかった。現在ではなかなか聞かれない“グラウンドビート”というフレーズだが、また続けて聴きたい、体感したいと多くが思ったのではないか。
ソウル・II・ソウルの新譜としての情報は聞かないが、2010年代のソウル・II・ソウルは一体どのような姿になっているのか。“トレンドは俺達が創る、そうだろ?”と『タイム・フォー・チェンジ』の帯には書かれてあったが、現在進行形のソウル・II・ソウルとは、ジャジー・Bが繰り出す“今”のサウンドはいかなるものか……。そんな興味を抱きながら、帰ってから再び『クラブ・クラシックス・ヴォリューム・ワン』をプレイヤーへと運びたくなる夜となった。
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<SET LIST>
00 INTRODUCTION
01 Keep on Movin'(feat. Caron Wheeler)
02 Love Enuff(feat. Caron Wheeler)
03 Get a Life(feat. Caron Wheeler)
04 Universal Love(feat. Caron Wheeler)
05 I Care(feat. Chalotte Kelly)
06 Missing You(feat. Chalotte Kelly)
07 TODAY(feat. Chalotte Kelly)
08 JOY(feat. Adrian McKenzie)
09 Make Believe World(feat. Adrian McKenzie)
10 Back to life (However Do You Want Me)(feat. Caron Wheeler)
≪ENCORE≫
11 Fairplay(feat. Caron Wheeler)
12 Jazzie's Groove
<MEMBER>
Jazzie B(Vocals)
Caron Wheeler(Vocals)
Charlotte Kelly(Vocals)
Emma Bucknor(Background Vocals)
Samantha Pennells(Background Vocals)
Jody Findley(Background Vocals)
Ellen Blair(Violin)
Gillian Morley(Violin)
Adrian McKenzie (Keyboards)
Kashta Tafari(Guitar)
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“ファンキー・ドレッド”ことジャジー・B。
今回はドレッドじゃなかったけれども。
キャロン・ウィーラー。
2004年の単独公演@duo music exchangeで、周りの観客を立たせて歌っていたら、アンコールで突如マイクを向けられ「リヴィング・イン・ザ・ライト」の一節を歌ったんですけど、覚えてますか。(笑)
しかも、思った以上に発した声が会場に響いて、キャロンに“Wao~”って言われた。(爆)
(ただ、残念ながら、その日の模様はDVDに収録されず)
名盤です。マスターピース。
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Soul II Soul - Keep On Movin'
Soul II Soul - Back To Life