*** june typhoon tokyo ***

浦和×FC東京@埼スタ【J1リーグ】

 2003年を最後にアウェイ浦和で未勝利を今年も更新。

 雷雨の影響で1時間遅れてスタートした雨中の決戦は、このカードで抜群の相性を誇る浦和がまたしてもFC東京を避け、しっかりと勝ち点3を獲得。厳しいことをいうようだが、確かにFC東京の選手はハードワークをしたとは思うが、この試合後に拍手を送っているようでは、一生埼玉スタジアムで浦和には勝てないだろう。下位には勝てても毎年上位を争うチームに競り勝てない体質は、今年も払拭することが出来なかった。アウェイ浦和は“鬼門”という以上に、自らのサッカーを構築・完遂出来ないゆえの敗戦だといえる。

 FC東京は前半からボールを支配する時間帯はあった。寧ろ、今季低調に喘ぐ浦和がペドロヴィッチを解任し、低迷から上向こうとしているチーム状況が窺えるようでもあった。ただ、FC東京と圧倒的に違うのはゴールへ向かう推進力や意志疎通がなされていること。FC東京は攻撃の時間帯という意味では浦和を大きく上回った。ただし、ボールを保持していても前へのチャレンジがそれほど多くなく、カウンターとなる場面でも味方の上がりを待っているのか、確実なパスコースを探しているのか分からないが、ハーフウェーを過ぎたあたりでスローダウン。浦和に帰陣する時間帯を与えてしまって、結局自らパスコースやスペースを逃してしまう攻撃に終始。

 それに対して浦和は、ここぞという時には前線から最終列までスイッチが連動して入り、考える隙を与えないほどの素早いパス交換やダイレクトタッチで面白いようにFC東京のディフェンスを掻い潜っていく。そして、常に前へとチャレンジしているゆえ、多少ディフェンスにボールを当てられても、前への圧力が高さが奏功して当てられたボールも運よく攻める方のスペースや浦和の味方の方へと弾かれていく。興梠の1点目の武藤のポストプレー、そして2点目の興梠のシュートの当たり具合などは決して意図したものではなく、お世辞にも綺麗な形ではなかった。それでもゴールへと向かう姿勢を共有していたからこそ、形が悪くとも繋げられることがかえってFC東京守備陣にとっては予想外の動き出しになり、対応出来ないままあっけなくゴールを許してしまうことになった。

 FC東京は浦和に得点を許した5分後に追いついたのは良かった。米本からのパスを大久保嘉人がややタメた後に室屋の走り込みを狙って右サイド裏へ浮き球のパス。室屋がワンタッチでグラウンダーで折り返したところをファーサイドから走り込んだ橋本が合わせた形はしっかりと“崩した”といえるプレーだった。
 それ以外では、後半の高萩のバーを叩いたシュートや終盤の中島のポスト直撃のシュートなど惜しい場面はあった。ただ、それも言ってみれば連動性というよりも個の力の部分が大きい攻撃でしかなかった。FC東京がボールを支配していた時間帯はシュートのタイミングを見計らい過ぎてるのか、シュートを撃てず仕舞いでカウンターを受けることの繰り返し。ビルドアップにスピードがないゆえ、相手も対応しやすい攻撃に陥ってしまっている。
 特に左サイドの太田の低調が際立っていた。左サイドの高い位置にポジションを取ることを許されながら、ボールが渡ってもほとんどが後ろへパスして戻してしまうゆえ、まったく左サイドの攻撃に繋がらない。単にボールを経由させているだけでしかないゆえ、相手の帰陣の時間を作っているようなもの。守備面では浦和の1点目に駒井にサイドを抜かれるなど対応も後手を踏むことばかりで、それでも一撃必殺のFKやクロスが冴えているならばまだしも、左足の精度も輝くことなく鈍ったまま。正直このレベルであれば、将来性や経験を踏まえても小川諒也を起用した方が断然いい。

 攻撃時にスローダウンするのは、常にスピーディな中でのボール捌きや判断の訓練をしていないからなのか。カウンターのチャンスにゴール前が手薄な状態にも関わらずゴールへボールを進める速度を緩め、遅れてきた味方の上がりを待ってチャンスの芽を潰してしまう橋本、相手から奪ったボールを持ち運ぼうとするも帰陣が速い浦和の選手に後ろからボールをかっさらわれてしまう高萩や米本など言い出したらキリがないが、その意識を改善しない限り、個で突破したゴール以外のゴール数は増えることはない。
 それに加えて、堅守だった守備が失われてしまっている。失点に関しては前節の神戸戦でようやく完封はしたものの、6月の横浜F・マリノス戦から前節の神戸戦を除いた8試合で失点が続いている。中盤と最終ライン、さらにはGKとの距離感も不安定で、必ず大きなスペースを与えている。それ以上に相手へのプレッシャーや対応への始動が遅い。この日の得点シーンでもゴール前に人数を揃えながらも浦和の攻撃陣を抑えられないのは、スペースのケアなり対面なりの対応が機能していないということ。1失点目のゴールも駒井のクロスを武藤に通させた徳永が、その後もう一度興梠に詰めていかなければならないところだったが、足が止まって立ち尽くすだけ。攻撃時もそうだが、徳永はパワフルな競り合いでは勝るものの、こうした素早い判断が必要とされる場面に弱さを見せてしまう。
 
 また、戦術面でも消化不良が露見。1点を追いかける後半開始に前田に代えてピーター・ウタカをピッチに投入してきたが、これが誤算。雨に打たれて重たくなったピッチに適応出来なかったのか、陰ながらポストプレーで貢献した前田の奮闘を失わせてしまうようなパフォーマンス。大久保もパスでの連係ミスを重ねて、好調には程遠い出来。それまでサイドから唯一推進力を持っていた室屋が、50分にスライディングを避けようとしてバランスを崩して転倒。負傷退場を強いられてしまうと、スピードある永井を投入するも、前方へロングボールを送って走らせるという攻撃を仕掛ける訳でもなく、意図が不明瞭。そもそも連動性を捨てての単騎攻撃に掛けるには早い時間帯だった。
 その10分後に米本に代えて中島をピッチに送るが、ドリブルで崩してゴール前へ進出しようという気概は評価出来るものの、浦和のディフェンスに弾かれてボールロストする場面も多く、味方の運動量の消費を加速させてしまう悪循環となってしまっていた。

 残り11試合でACL圏内の3位までの勝ち点差は12となり、試合数よりも勝ち点の数値が上回ってしまった。現実的にはFC東京のACL圏内は非常に困難と言えるだろう。攻撃を仕掛けることが出来る中島のポルトガルへの移籍が秒読み、室屋の怪我も心配されるなか、今季は現実的な目標に切り替えた方がいい。それは即ち、攻守において組織や連動性を高めた上での個を発揮させる土台作りへ方針を展開し、FC東京としてのサッカー構築に注力することだ。結果としてそれで勝利が付いてくるのであればいい、重要なのは一喜一憂する結果ではなく、長く基盤となるべきサッカーを植え付けること。ピッチ上で戦えない選手はネームヴァリューがあろうと控えに回し、練習で奮闘する若手の経験と融合させるべきだ。今のFC東京には不動のポジションに配される選手は一人としていないことを強く意識して、常に試合で余力を残さない奮闘を見せてもらいたい。

◇◇◇

【明治安田生命J1リーグ戦 第23節】
2017年08月19日(土)20:00 試合開始 埼玉スタジアム2002
入場者数 31,818人
天候 雨 / 気温 24.6℃ / 湿度 85%
主審 廣瀬格 / 副審 宮島一代、清水崇之 / 4審 清水勇人

 浦 和 2(2-1 / 0-0)1 FC東京

≪得点≫
(浦): 興梠慎三(17分)、興梠慎三(30分)
(東): 橋本拳人(22分)

◇◇◇

【FC東京 メンバー】
≪スターティングメンバー≫
GK 01 大久保択生
DF 22 徳永悠平
DF 14 チャン・ヒョンス
DF 05 丸山祐市
MF 08 高萩洋次郎
MF 02 室屋 成  → 永井謙佑(51分)
MF 37 橋本拳人
MF 07 米本拓司  → 中島翔哉(62分)
MF 06 太田宏介
FW 20 前田遼一  → ピーター・ウタカ(46分*)
FW 13 大久保嘉人

≪サブスティテューション≫
GK 33 林 彰洋
DF 04 吉本一謙
MF 10 梶山陽平
MF 23 中島翔哉
MF 38 東 慶悟
FW 15 永井謙佑
FW 09 ピーター・ウタカ

≪監督≫
篠田善之

◇◇◇







































◇◇◇

【2017明治安田生命J1リーグ FC東京 日程】
第01節 02/25(土)14:00〇FC東京 1-0 鹿 島(A・カシマ
第02節 03/04(土)15:00〇FC東京 2-0 大 宮(H・味スタ
第03節 03/11(土)19:00✕FC東京 0-3 G大阪(A・吹田S
第04節 03/18(土)19:00〇FC東京 3-0 川 崎(H・味スタ
第05節 04/01(土)16:00△FC東京 3-3 鳥 栖(H・味スタ
第06節 04/08(土)19:00✕FC東京 1-2 札 幌(A・札幌ド
第07節 04/16(日)14:00✕FC東京 0-1 浦 和(H・味スタ
第08節 04/22(土)16:00〇FC東京 3-0 新 潟(A・デンカS
第09節 04/30(日)15:00〇FC東京 1-0 広 島(H・味スタ
第10節 05/07(日)14:00〇FC東京 2-0 仙 台(A・ユアスタ
第11節 05/14(日)15:00✕FC東京 1-2  柏 (H・味スタ
第12節 05/20(土)19:00△FC東京 1-1 神 戸(A・ノエスタ
第13節 05/28(日)16:00△FC東京 1-1 甲 府(H・味スタ
第14節 06/04(日)13:00〇FC東京 2-0 清 水(A・アイスタ
第15節 06/18(日)18:00✕FC東京 0-1 横浜FM(H・味スタ
第16節 06/25(日)18:00✕FC東京 0-2 磐 田(A・ヤマハ
第17節 07/02(日)19:00✕FC東京 1-3 C大阪(A・金鳥スタ
第18節 07/08(土)19:00△FC東京 2-2 鹿 島(H・味スタ
第19節 07/30(日)19:00△FC東京 1-1 新 潟(H・味スタ
第20節 08/05(土)19:00△FC東京 1-1 川 崎(A・等々力
第21節 08/09(水)19:00〇FC東京 2-1 大 宮(A・NACK5
第22節 08/13(日)19:00〇FC東京 1-0 神 戸(H・味スタ
第23節 08/19(土)19:00✕FC東京 1-2 浦 和(A・埼 玉

第24節 08/26(土)19:00 FC東京 vs 横浜FM(A・日産ス
第25節 09/09(土)19:00 FC東京 vs C大阪(H・味スタ
第26節 09/16(土)19:00 FC東京 vs 仙 台(H・味スタ
第27節 09/23(土)16:00 FC東京 vs  柏 (A・ 柏 
第28節 09/30(土)16:00 FC東京 vs 磐 田(H・味スタ
第29節 10/15(日)14:00 FC東京 vs 甲 府(A・中銀スタ
第30節 10/21(土)16:00 FC東京 vs 札 幌(H・味スタ
第31節 10/29(日)17:00 FC東京 vs 清 水(H・味スタ
第32節 11/18(土)14:00 FC東京 vs 鳥 栖(A・ベアスタ
第33節 11/26(日)13:00 FC東京 vs 広 島(A・Eスタ
第34節 12/02(土)14:00 FC東京 vs G大阪(H・味スタ




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コメント一覧

野球狂。
ご指摘ありがとうございました
http://blog.goo.ne.jp/jt_tokyo
武蔵赤さん、ご指摘ありがとうございました。悪意はなく接触プレーという意味で記していましたが、ご指摘どおり誤認となる表現でしたので修正いたしました。大変失礼いたしました。

また埼スタにお邪魔したいと思いますので、よろしくお願いします。
武蔵赤
こんにちは
室屋選手の怪我、大事に至らないと良いですね。で、ブログ内の記事中、室屋選手の怪我が槙野が削ったことになっていますが、自爆ですのでどうぞDAZNでもご確認頂き記事の修正をお願いいたしますね。
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