*** june typhoon tokyo ***

Especia@UNIT 【追記アリ】

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 2014年最初のライヴとして足を運んだのは、大阪・堀江系ガールズ・グループ“Especia”のワンマン“Especia va Bien en TOKYO”。会場は代官山のUNIT。この1月に2ndシングル『YA・ME・TE!/アバンチュールは銀色に』をリリースし、そのリリースイヴェントも兼ねているか。当初はチケットの売り上げがあまり芳しくないとの情報だったが、ネットやSNSなどでの宣伝効果もあって、蓋を開けてみれば300人超という観客を集客。後方の物販コーナーまで人が溢れる盛況ぶりとなった。

 昨年、Especiaを観賞したのは、2013年8月のWWWでのワンマン“Bailas con Especia”(→「Especia@WWW」)、同9月の新宿タワーレコードでのイヴェント(→「Especia@TOWER RECORDS新宿」)、同10月のタワーレコード新宿店15周年大感謝祭“~N/E/W/H/O/T/E/L~”(→「タワーレコード新宿店15周年大感謝祭~N/E/W/H/O/T/E/L~@新宿LOFT」)の3ステージ。ワンマンとなると昨年8月のWWW公演以来となる。短期間ではあるが、その成長ぶりを確かめるべく、開演を待った。

 彼女たちは、世間的(業界的?)にはアイドル枠として捉えられているし、実際、多くの人がそう見ていると思われる。ファンの人たちも“アイドルオタク”や“アイドル好き”風の人が多い。だが、そういったファン層ばかりで埋められているともいえないのが、他のいわゆるアイドル・グループと異なるところか。彼女らがアイドル・グループではなくガールズ・グループと名乗るのは、最近では“楽曲派”ともカテゴライズされる風潮も出てきた、アイドルらしからぬクオリティの高い楽曲たちにも理由がある。80年代から90年代初頭によく見かけたシティポップやヴェイパーウェイヴなど、アーバンをキーワードにした“バブル”感覚を現代に具現化させようとしていて、楽曲だけでなくヴィデオやデザインなどのセンスも今の時代観にはない独特なものだ。ゴージャスとチープの狭間を行く享楽性と、完璧な洗練性までいかない渋味やエグみを持った時代錯誤感が、その時代を知る世代には郷愁と憧憬を、知らない世代には新鮮な感覚として、今だからこその空気となっているのがウケている要因の一つかもしれない。

 その意味では非常に興味深いが、ガールズ・グループと名乗っているだけに、そのあたりはシビアな視点も必要だろう。歌唱力、安定感、パフォーマンス・スキル、正直どの点においても充分なものがあるとは決して言い難い。歌唱力の点では、キュートながらもパンチのある歌唱を披露する“困り系”脇田もなりが抜けているが、それでもまだ粗削りなところが多々ある。歌唱センスから言えば、本来なら脇田もなりとリーダーの“垂れ目系”冨永悠香をメイン・シンガーとして置きたいところなのだろうが、冨永悠香の歌唱は曲によって音感に不安定なところを見せたりもして、耳を傾けて“聴ける”レヴェルにはまだ達していない。他のメンバーにおいては、推して知るべしだ。

Especia_yamete ただ、面白いのは、重ねてライヴを観てくると、その成長ぶりに驚かされることだ。1stシングル「ミッドナイトConfusion」でサビ前にソロ・パートを持つ“ちょいワル系”森絵莉加は安定感においては冨永を凌ぐ感じまで伸びてきたし、声が弱々しく声量が乏しかった“癒し系”杉本暁音がこれまでには見せない“圧”の加わったヴォーカルを披露していた。脇田、冨永に追いつけ追い越せで森、杉本が加わってくれば、ヴォーカルのヴァリエーションもかなり増えるのではないか。やさぐれ感のある関西っぽさが滲み出る(今回のインディアン・ガール風?ルックスがバッチリとハマった)“クール系”三瀬ちひろ、他メンバーとは異なるダンス・パートでアクセントをつける“家畜系”三ノ宮ちかを加えた六者六様のオリジナリティは、他のグループにはない強みといえる。

Especia20140111_05 また、未完成ながらも、その伸びしろの多さをライヴ中に感じさせるところも魅力か。ナンブヒトシのラップとともに客席になだれ込みハイタッチをかわす「Good Times」で場内のヴォルテージを一気に上昇させて観客の心をギアを一気にトップへと導いたり、バンド・セットをセッティングしている間に関西出身グループならではのグダグダな寸劇を組み込んだり。短めのMCが数回ある以外は原則として楽曲を次々と披露していくスタイルなど、手を変え品を変え、観客を飽きさせない工夫が見える。
 特に注目すべきは、全パートではないにせよ、バンド・セットを導入していること。やはり、バンドを加えると、楽曲の伝達力が全く異なる。前半の歌を流してのパフォーマンスがダメということではないのだが、楽曲がより色鮮やかに映えるというか、心地よいグルーヴを作り出すサウンドにのせられて、メンバーの歌唱も後押しされるようにイキイキとしてくるから面白い。艶やかなサックスでアダルトなムードを描出すれば、パフォーマンスもちょっぴり大人びたものを感じたり、キラキラとした鍵盤を足せば輝かしく映えたり、ギターがグルーヴを奏でればファンキーなものになったりと、多彩なステージングが生まれる。後半にかけて次第に、目に見えるように上達度がメキメキと上がっていくのを体感しながらクライマックスへ。この時代観をよみがえらせるヴィデオや演出が彩を添えることも、フロアに“一体感”が生まれる要因の一つだ。ステージのメンバーの成長ぶりと観客の熱度が、一体感というキーワードをもとに高まっていく様子は、観ていて実に痛快ですらある。

Especia20140111_02_2 一緒に楽しめるライヴ、としては、現時点でもなかなかの達成度を誇っていると思う。だとすると、今後メンバーのクオリティが高まれば、より一層……と思うのは、早合点なのか。それとも、Especiaに興味を持ってしまった自身の期待からか。もちろん、素晴らしい楽曲制作陣とEspeciaという唯一無二の世界観を創り上げているスタッフの力量が大きなことは瞭然。現在ではその創り上げられたワールドを演じることで精一杯なのかもしれない。だが、これがメンバーがイニシアチヴを有した演出やパフォーマンスになったとしたら……と考えると、是非頑張ってもらいたいと祈ってしまわずにはいられないのだ。

 そして、この日の盛り上がりを感じるに、もう一つステップが上がれるかもしれないと思った。O-EASTやBLITZクラスの箱を埋められるのではないか。それなら、全編バンド・セットとVJがつけられるステージも構成出来るのではないか……。アイドル・グループは実に刹那的であっという間に終演迎えてしまうことが少なくないが、ガールズ・グループを名乗っていく意味でも、長期にわたって活動を続けていく意味でも、歌唱力、パフォーマンス力、ライヴ力を高めていくチャレンジを怠らず、一歩ずつ前へ突き進んで欲しいと願うばかりだ。

 これまで2枚のEPと2枚のシングルを発表。そろそろアルバムも期待される頃だが、どうなのだろう。そして、どこまで成長が窺えるか。しばらくはその推移を見守りたい。

◇◇◇

<SET LIST>
00 OPENING
01 ナイトフライ(with ナンブヒトシ)
02 Good Times(with ナンブヒトシ)
03 オレンジ・ファストレーン
04 パーラメント(va Bien Remix)
05 FunkyRock
06 不機嫌ランデブー
07 ナイトライダー
08 きらめきシーサイド
09 スカイタイム
10 MC(Do the Negative Thinking)
11 X・O〈BAND SET〉
12 センシュアルゲーム〈BAND SET〉
13 ステレオ・ハイウェイ〈BAND SET〉
14 雨のパーラー〈BAND SET〉
15 YA・ME・TE!(va Bien Remix)〈BAND SET〉
16 Twinkle Emotion
17 アバンチュールは銀色に(Special guest with マセラティ渚)
18 海辺のサティ(va Bien Remix)(Special guest with マセラティ渚)
19 ミッドナイトConfusion
≪ENCORE≫
20 トワイライト・パームビーチ(va Bien Remix)
21 MIDAS TOUCH
22 YA・ME・TE!


<MEMBER>
Especia are:
冨永悠香
三ノ宮ちか
三瀬ちひろ
杉本暁音
脇田もなり
森絵莉加

榎田紀史 a.k.a SakkWylde〈さっくん〉(g)
miifuu(key)
ちーくん(Sax)

ナンブヒトシ(MC)
マセラティ渚(LUVRAW/Pellycolo)(Talkbox/DJ)

ホンマカズキ(VJ)

◇◇◇
 
≪この日の小ネタ集≫

 バンド・セットをセッティングしている際に、場を持たせるべくグダグダな寸劇を展開したのだが、台本片手に読み合うというやっつけにもほどがある感が、大阪の笑いっぽかった。(本当か)

 清水マネージャーがバーテンダー、Schtein & Longerの横山佑輝がバーで飲む“たかじん”というタイムリーな人物設定で展開。そこへ、ライヴ終わりのEspeciaメンバー6人が打ち上げとして店に入り、もっと売れるためにどうすればいいかを呑み潰れかけている“たかじん”に聞くのだが……。

「最近のアイドルの武道館ライブブームについてどう思いますか」

「有名デザイナーをメンバーに入れないとダメなんでしょうか」
「裸同然のPVを撮影したりしないと売れないんでしょうか」

など、最近のとりあえず日本武道館でライヴをしたという既成事実を作りたがるアイドル・グループの風潮を皮肉ったり(それをやさぐれ感満載の三瀬が言うから面白い)、事務所の先輩アイドルBiSのことをディスったりと、知っている人は笑える内容。
 それ以上に、一番大人しそうな杉本が、

「結構ワガママボディなんですけど…」

といったのは、(ネタとはいえ)あかねファンには気になるところではないだろうか。(笑)

◇◇◇

やっぱり、楽曲センスは素晴らしいものがあるなぁ。

Especia「YA・ME・TE!」

Especia「アバンチュールは銀色に」

アナログ出るなら、絶対に買います。

◇◇◇

 Especiaはライヴでの写真・動画撮影が許可されているので、多くの写真・映像がネット上にアップされています。

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◇◇◇

【追記】
開演前のDJフクタケによるDJセット・リストがアップされていたので、参考まで。

TRIO/Da Da Da
MADONNA/Who's That girl
BLONDIE/RAPTURE
MALCOM McLAREN/BUFFALO GALS
ZAPP/I CAN MAKE YOU DANCE
KRAFTWERK/MUSIQUE NON STOP
THE POLICE/EVERY BREATH YOU TAKE
EURYTHMICS/SWEET DREAMS
YOKO ONO/WALKING ON THIN ICE-FOR JOHN
SPACE/MAGIC FLY
SPARKS/WHEN I'M WITH YOU
ERIC CLAPTON/BEHIND THE MASK
RAH BAND/SWEET FORBIDDEN
SCRITTI POLITTI/ABSOLUTE
BREAKOUT/SWING OUT SISTER ※
TOM JONES & ART OF NOISE/KISS ※
GERGE KRANZ/TROMMELTANZ(DIN DAA DAA)
Junior/Mama Used To Say ※
INNER CITY/BIG FUN

※はミッシェル・ソーリー選曲


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