クリスマス・イヴの多摩川クラシコは哀れな終焉に。
川崎は確かに巧さと強さを見せていた。FC東京が好調であっても結果としては同じだったかもしれない。だが、それ以上に納得出来ないのは、相手へ向かう闘志や気持ちが戦前の言葉を裏切るようにほとんど見えなかったということだ。リーグ戦1stステージ9位、同2ndステージ9位、年間も9位という中途半端が拭えない順位同様に、何となくサッカーをやって何となく勝ち負けを繰り返したそれ以上のものが、今年の総決算としてタイトルを是が非でも獲りたいと言葉では示したチームからは感じられず、川崎の威力に押し込まれるがまま、無様な敗戦を喫した。
ボールを奪うと前へ前へとボールを素早く繋ぎ、ゴールへ近づくにつれてスピードと迫力を増す川崎に対し、ゆっくりとハーフウェーを越えると狭いスペースでパスをこねくり回して相手のプレッシャーを受けるとすぐに後ろか横へ一旦ボールを戻し、高い位置でボールを奪うも一気に相手ゴールへとひたむきに走ることはなく、味方の上がりを待つことが大前提にでもあるかのように相手の帰陣を許すハーフスピードな持ち上がりでシュートチャンスを逃し、シュートを撃てないまま相手にボールを奪われるFC東京。
スピードで圧倒しないのであれば、パスやクロスに高い精度が求められるが、それもなし。敵陣深いスローイングはチャンスにならず、受け手の動きがないために出しどころを失って簡単にボールをロスト。ライン際へボールを追うスピードや懸命さもその意識の差が大きく表われて、負けるべくして負けたといった内容だった。
唯一アグレッシヴと思われる積極果敢にシュートを放った中島もその精度は低く、攻撃陣はその中島頼みと言われても致し方ないほどに積極性を失っていた。森重をはじめ全体的に身体が重そうで、個々の判断力も素早さを失い、乏しかった。何より何としてでも勝ってやろうという気概があまり感じられなかったのは非常に残念極まりない。
さらには、ベンチワークにも疑問が残った。故障個所があったという前田を先発させたが、いつものようなポストプレーは見られず。後半から交代となった徳永、コーナーキックの精度も欠き、全体的にパフォーマンスが低調だった水沼、この面々は果たして先発を託すべき要素があったのだろうか。高橋は懸命さは見えるも、周囲とのコンビネーションが合わずにその意気込みも空回り。また、途中出場となった小川、平山、阿部はピッチの流れを変えるどころか、試合に上手く入れずに出場後しばらくは足にボールが着かない状態が続いていた。平山こそ最後に得点を決めたが(得点という結果を出せば、FWとしてはそれでよしとするのかもしれないが)足元も不安定だったし、阿部に至っては水沼との交代がまったく有効でないことを示しただけ。
個人的は、今回ベンチ入りならなかった林やネイサン・バーンズあたりが好調をキープしていたと思うが、ネイサン・バーンズは前述の先発陣や平山、阿部よりも出場の序列が低いというのであれば、来季は戦力として捉えてないのとほぼ同意になろう。少なくともこの日のメンバーの中では前への推進力はチーム随一だと思うが、その選択肢を選べない篠田監督はじめとする首脳陣にも、やはり大きな課題が積み重なっていると言えそうだ。城福体制を立て直したということではもちろん評価されていいが、そもそもより高みを目指して躓き、低迷に喘いだところを元の出発点近くに戻しただけといえば、それまで。問題はそこからどうやって高みへ上るために壁を打ち破っていくか、なのだ。
また、サポーターの気迫も川崎に軍配か。試合前から声を出し続ければいいという訳ではないが、風間監督最終年、無冠で終わらせないという気概が、大きな一つの声となってチームを十二分に後押ししていたと思う。東京は声は出ていない訳ではないが、どこかまとまりがなく、やや一体感を欠いていた感じも。
元日決勝の舞台への道は閉ざされ、2016年のFC東京は終わった。今後は次第に去就が明らかになってくる選手も少なくないだろう。下手に勝ち進んで始動までの期間を徒に短くし、来季の準備が整わないままシーズンをスタートさせてしまうという今季のような幕開けは回避出来そうだとポジティヴに考えるしかないか。
過ぎたことは仕方ないが、この不甲斐なさを不甲斐ないままで終わらせるか成長を閉ざしてしまうか、これを糧に飛躍に繋げられるかは来季にかかっている。ホーム最終戦で森重が口にした“プロフェッショナル”なチームへ生まれ変わるためのチャンスはそう転がっている訳ではない。しっかりと胸に刻み、痛感し、来季への準備へ取り掛かってもらいたい。
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【第96回 天皇杯全日本サッカー選手権大会 準々決勝】
2016年12月24日/味の素スタジアム/16:04キックオフ
観衆:29,378人
天候:曇
気温:10.9度/湿度:27%
主審:佐藤隆治/副審:田中利幸、山際将史/4審:中村太
FC東京 1(0-2、1-0)2 川 崎
得点:
(東):平山相太(90+1分)
(川):大久保嘉人(20分)、エウシーニョ(28分)
≪スターティングラインアップ≫
47 GK 秋元陽太
06 DF 室屋成
03 DF 森重真人
05 DF 丸山祐市
02 DF 徳永悠平 → 小川諒也(45分)
04 MF 高橋秀人
27 MF 田邉草民
48 MF 水沼宏太 → 阿部拓馬(75分)
38 MF 東慶悟
39 MF 中島翔哉
20 FW 前田遼一 → 平山相太(63分)
≪サブスティテューション≫
31 GK 圍謙太郎
25 DF 小川諒也
29 DF 吉本一謙
10 MF 梶山陽平
44 FW 阿部拓馬
09 FW 平山相太
16 FW ネイサン・バーンズ
≪マネージャー≫
篠田善之
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【第96回 天皇杯全日本サッカー選手権大会】
第4回戦 2016/11/09(水)19:00〇FC東京 2-1 Honda FC(味スタ)
準々決勝 2016/12/24(土)16:00✕FC東京 1-2 川 崎(味スタ)
準決勝 2016/12/29(木)15:05 A(横浜FM✕鹿島)✕ B(大宮✕川崎)(日産ス)
決 勝 2017/01/01(日)14:00 A ✕ B(吹 田)
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