首位奪取に挑むも返り討ち。横浜が15年ぶりのリーグV。
26分にティーラトンが放ったミドルシュートをスライディングで防ぎにいった東だったが、東に当たったボールはGK・林の頭上をゆっくりと弧を描いて越えると、そのままゴールマウスへ吸い込まれていった。優勝のためには4点差以上の勝利が必要だったFC東京は、是が非でも先制点を奪いたかったが、このティーラトンの先制ゴールが横浜の優勝へのさらなる追い風となった。まだ早い時間だったが、FC東京は僅か1失点の点数以上にダメージを負っていたように見えた。
仮に、ズバッとファインゴールを決められてとしたら、気持ちを切り替えることはそれほど難しいことではなかったと思う。それが、ややアンラッキーな跳ね返りの失点という形と“防げたはずなのに”という意識が芽生えてしまったことで、その後の展開を難しくしてしまった。本来なら得点を奪いにいくため、前へ前へとボールを奪いにプレスをかけていかなければいけない点差だったが、このゴールにより「もうこれ以上失点してないけない」という気持ちがより芽生えたのだろう。相手が持つボールを早く奪いにチャレンジしていいところも、もし交わされたらという脳裏が過ぎったか、少しずつ受け身になっていく。仲川やエリキ、マルコス・ジュニオールらのドリブルへの対応に苦心しながらも何とか凌いでいた前半だったが、前半終了間際の44分、和田、マルコス・ジュニオールを経て渡ったパスをペナルティエリア中央で受けたエリキがシュート。これがGK・林が手を伸ばした先をすり抜け、横浜が追加点。FC東京にとっては痛恨の失点となってしまった。
FC東京が優勝するためには、残り45分で6得点を挙げなければいけなくなった後半。試合はほぼ決したといえるが、FC東京からは諦観は見られなかった。ゴール裏からは「あと6点！」というコールも飛び出すと、後半開始から東、ナ・サンホを下げて、ユ・インスと田川をピッチに送る。互いに攻守を激しく展開するなか、62分にチアゴ・マルチンスがヘディングで緩くバックパスしたところを永井が猛追。GK・パク・イルギュがクリアする前に永井がボールに触り、パクが永井を蹴ってしまう形に。一度はイエローカードが提示されるも、副審との協議を経て、パクはレッドカードで退場。横浜はGK・中林を投入し、マルコス・ジュニオールを下げて対応。FC東京はこれで得たFKを決め、一人欠いた横浜に反撃の狼煙を上げたかったところだが、FKは溜息とともにバーの上へ。
それでも攻撃を続けるFC東京だったが、一人欠いた横浜も動きが鈍らず、退場の影響を感じさせない。FC東京はゴール前へ迫るも焦りからか決定機を生み出せないでいると、77分、FC東京の攻撃がオフサイドとなった瞬間、横浜は自陣から素早くパスを遠藤へ渡すと、遠藤は左サイドでドリブル突破を敢行。遠藤がカットインする動きにFC東京のDF・渡辺も一度は対応するが、遠藤が素早く外へ切り返してマークを外してシュート。GK・林の手を掠めたボールがゴール右隅へ吸い込まれ、横浜が優勝を確信する3点目を挙げる。ゴール裏へ駆け寄る遠藤にカメラマンが押し寄せる光景を、FC東京の選手、サポーターは眺めるしかなかった。
横浜は終盤7連勝という勢いをまざまざと見せつけた形。開幕当初は途上だった攻撃的スタイルやハイラインも、リーグ中盤から徐々にフィットし始め、仲川、マルコス・ジュニオール、エリキ、マテウスらのゴールゲッターに、チアゴ・マルチンスや畠中といった強固なDF陣、この日は累積警告で欠場したものの中盤で仕事をした扇原や大津、エジカル・ジュニオなどタレントも豊富で、チームとして飛躍的に成長し、完成度を高めていった。
FC東京はディエゴ・オリヴェイラの負傷、室屋の出場停止も大きく響いた。結果としては完敗だったが、立ち向かう姿勢を90分見せ続けられたことは、FC東京にとって大きな進歩だったと思う。ただ、やはり決定力は横浜に比べ足りないところ。この日も立ち上がりから永井に先制機があり、ゴールを決めていたら試合の流れは全く違ったものになっていたはず。それを決め切る力がFC東京にはまだ完全に備わっていなかった。リーグ後半の厳しいアウェイ8連戦後に首位となってホームへ帰還するも、ホーム2試合でドローが続いて足踏みしたのも得点力の不足ゆえ。それでも、圧倒的に不利な状況ではあったが、最終節の横浜との直接対決まで優勝争いを演じたことは、久保やチャン・ヒョンスといったレギュラーが途中でいなくなるも、リーグ年間を通じて最も長く首位にいたことも含めて、堂々と胸を張っていい。
その一方で、ディエゴ・オリヴェイラ、永井への傾倒・依存に加え、攻撃のヴァリエーションの少なさに課題も。相手に警戒、対策された際の打開策がまだ不十分ということは否めない。ジャエル、アルトゥール・シルバのブラジル勢は当初の期待に応えたとはいえず、若手が出てきていない訳ではないが、チーム全体の目覚ましい底上げをするまでの存在であったかというと、物足りなさはある。永井、橋本、室屋などは代表へ選出されることも多くなったが、そのバックアップや選手層の薄さは、来季ACLで戦うことも含めて補充していかなければならない重要課題だ。
優勝はならなかったものの、クラブ史上最高位の2位でのフィニッシュ。優勝を勝ち取るためには、この質を保ちながらさらにチーム力の強化を図らなければならないことも、眼前で歓喜に沸く横浜の選手やサポーターたちの姿を見て、痛感させられた。ルヴァンカップ、天皇杯も結果が出せず、チームとしては発展途上。この成績をフロックにせず、常に優勝争いを演じるチームに生まれ変わったところを、来季の長谷川健太体制3年目に期待したい。
◇◇◇
【明治安田生命J1リーグ 第34節】
2019年12月7日（土）14:03試合開始 日産スタジアム
入場者数 63,854人
天候 雨のち曇 ／ 気温 7.1℃ ／ 湿度 57％
主審 木村博之 ／ 副審 三原純、和角敏之 ／ ４審 岡部拓人
横浜FM 3（2-0 / 1-0）0 FC東京
≪得点≫
（横）： ティーラトン（26分）、エリキ（44分）、遠藤渓太（77分）
（東）：
≪退場≫
（横）： 朴一圭（67分）
◇◇◇
【FC東京】
≪スターティングメンバー≫
GK 33 林 彰洋
DF 14 オ・ジェソク
DF 32 渡辺 剛
DF 03 森重真人
DF 25 小川諒也
MF 10 東 慶悟 → 田川亨介（46分*）
MF 18 橋本拳人
MF 08 高萩洋次郎
MF 45 アルトゥール・シルバ → 三田啓貴（59分）
FW 17 ナ・サンホ → ユ・インス（46分*）
FW 11 永井謙佑
≪サブスティテューション≫
GK 01 児玉 剛
DF 29 岡崎 慎
MF 21 ユ・インス
MF 39 大森晃太郎
MF 07 三田啓貴
FW 24 原 大智
FW 27 田川亨介
≪監督≫
長谷川健太
◇◇◇
◇◇◇
【明治安田生命J1リーグ FC東京 日程・結果】
第01節 02月23日(土)14:00 △FC東京 0-0 川 崎（Ａ・等々力）
第02節 03月02日(土)16:00 〇FC東京 3-2 湘 南（Ａ・ＢＭＷス）
第03節 03月10日(日)14:00 〇FC東京 2-0 鳥 栖（Ｈ・味スタ）
第04節 03月17日(日)13:30 〇FC東京 1-0 名古屋（Ｈ・味スタ）
第05節 03月30日(土)14:00 △FC東京 1-1 浦 和（Ａ・埼 玉）
第06節 04月06日(土)14:00 〇FC東京 2-1 清 水（Ｈ・味スタ）
第07節 04月14日(日)14:00 〇FC東京 3-1 鹿 島（Ｈ・味スタ）
第08節 04月19日(金)19:00 〇FC東京 1-0 広 島（Ａ・Ｅスタ）
第09節 04月28日(日)14:00 〇FC東京 2-0 松 本（Ｈ・味スタ）
第10節 05月04日(土)16:00 △FC東京 0-0 Ｇ大阪（Ａ・パナスタ）
第11節 05月12日(日)14:00 〇FC東京 1-0 磐 田（Ｈ・味スタ）
第12節 05月18日(土)14:00 〇FC東京 2-0 札 幌（Ｈ・味スタ）
第13節 05月25日(土)15:00 ✕FC東京 0-1 Ｃ大阪（Ａ・ヤンマー）
第14節 06月01日(土)14:00 〇FC東京 3-1 大 分（Ｈ・味スタ）
第15節 06月15日(土)19:00 ✕FC東京 0-1 神 戸（Ｈ・味スタ）
第16節 06月23日(日)19:00 ✕FC東京 0-2 仙 台（Ａ・ユアスタ）
第17節 06月29日(土)19:00 〇FC東京 4-2 横浜FM（Ｈ・味スタ）
第18節 07月07日(日)19:00 〇FC東京 3-1 Ｇ大阪（Ｈ・味スタ）
第19節 07月14日(日)19:00 ✕FC東京 0-3 川 崎（Ｈ・味スタ）
第20節 07月20日(土)19:00 〇FC東京 2-0 清 水（Ａ・アイスタ）
第21節 08月03日(土)19:00 〇FC東京 3-0 Ｃ大阪（Ｈ・味スタ）
第22節 08月10日(土)19:00 〇FC東京 1-0 仙 台（Ｈ・味スタ）
第23節 08月17日(土)19:00 ✕FC東京 0-1 広 島（Ｈ・味スタ）
第24節 08月24日(土)13:00 △FC東京 1-1 札 幌（Ａ・札幌ド）
第25節 08月30日(金)19:30 〇FC東京 2-1 名古屋（Ａ・パロ瑞穂）
第26節 09月14日(土)19:00 ✕FC東京 0-2 鹿 島（Ａ・カシマ）
第27節 09月29日(日)14:00 △FC東京 0-0 松 本（Ａ・サンアル）
第28節 10月05日(土)14:00 ✕FC東京 １-2 鳥 栖（Ａ・駅スタ）
第29節 10月19日(土)13:00 〇FC東京 3-1 神 戸（Ａ・ノエスタ）
第30節 11月02日(土)15:05 〇FC東京 2-0 大 分（Ａ・大銀ド）
第31節 11月09日(土)14:00 〇FC東京 1-0 磐 田（Ａ・ヤマハ）
第32節 11月23日(土)14:00 △FC東京 1-1 湘 南（Ｈ・味スタ）
第33節 11月30日(土)14:00 △FC東京 1-1 浦 和（Ｈ・味スタ）
第34節 12月07日(土)14:00 ✕FC東京 0-3 横浜FM（Ａ・日産ス）
◇◇◇
【2019 明治安田生命J1リーグ 最終順位】
01 横浜FM 70／34／22／04／08／68／38／+30
02 FC東京 64／34／19／07／08／46／29／+17
03 鹿 島 63／34／18／09／07／54／30／+24
04 川 崎 60／34／16／12／06／57／34／+23
05 Ｃ大阪 59／34／18／05／11／39／25／+14
06 広 島 55／34／15／10／09／45／29／+16
07 Ｇ大阪 47／34／12／11／11／54／48／+06
08 神 戸 47／34／14／05／15／61／59／+02
09 大 分 47／34／12／11／11／35／35／+00
10 札 幌 46／34／13／07／14／54／49／+05
11 仙 台 41／34／12／05／17／38／45／-07
12 清 水 39／34／11／06／17／45／69／-24
13 名古屋 37／34／09／10／15／45／50／-05
14 浦 和 37／34／09／10／15／34／50／-16
15 鳥 栖 36／34／10／06／18／32／53／-21
16 湘 南 36／34／10／06／18／40／63／-23
17 松 本 31／34／06／13／15／21／40／-19
18 磐 田 31／34／08／07／19／29／51／-22
※（勝点／試合数／勝／分／負／得点／失点／得失点）
◇◇◇
