じょーもん隠れ里

書くこと、吐き出すこと、作り上げる意志。情熱という一点においてのみ、作家であると私は言いたい。

炊飯器に欲望が湧いた…反省

2008-04-28 | 書くのはサガだ(エッセイ風)
 このブログをこれ以上雑駁なイメージにしないために、極力テーマにあげたものとは関係ない記事を書かないように心がけているのに、キャンペーン、プレゼントという言葉に欲情してしまった。

 反省することしきりである。けれど、今の炊飯器、たまに不機嫌になってスイッチが入らなくなることがあるのだ。でも、結構高いし。しばらく格闘していれば、いうことを聞いてくれる段階なので、家電屋に走ることも、まだチト避けたい。

 というわけで、書かせていただきます。

 gooブロガー『100万人』突破記念、gooブログの旅、

 キーワードは
   【gooブログ たのしい仲間 100万人】

 orz こんなことしても、まずあたらないよねぇ…。
コメント (1)

2006年6月

2008-04-28 | 畳海月日記バックナンバー
畳月(タタミクラゲ)観察記
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 タタミクラゲ。
 それは、畳の上に伏せる形で置かれた
 読みかけ本の姿。
 見かけない日もあれば、
 大量発生の日もあって……。
************************************
2006年6月読了本 14冊 
レビュー入り 2冊
レビューに書かなかったオススメ 5冊

豆腐バカ 世界に挑む?They Call Me “Mr. Tofu”
雲田 康夫
光文社

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厭世フレーバー
三羽 省吾
文藝春秋

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食品の裏側―みんな大好きな食品添加物
安部 司
東洋経済新報社

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不味い!
小泉 武夫
新潮社

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漂民ダンケッチの生涯
神坂 次郎
文藝春秋

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挫折本 2冊

2006年06月29日
『最後の願い 』面白かっただ
 一気読み。海月報告なしのまま、本コーナーへgo。

『食に命懸け』読了
 食べたいものがふえちゃった。お取り寄せできるものはしたい。けれど、高そうだ。(・_・; 

『さらば消毒とガーゼ』こちらも読了
 本コーナーに行こうかどうか悩むところ。……やはり、お勧め本に行こう。
『ナイロビの蜂』
 映画の仇討ちであるとは、先日書いた通り。あちこちで、映画で消化不能だったことが、胸落ちしてくる。しかし、たるいことには変わりない。こういう本は、構えず気楽に淡々と読もう。しかしまぁ、文庫にして二冊分を映画にするっていうのは大変な事なんですね。
とんでもなく、不出来という噂の映画『ダ・ヴィンチ・コード』を見に行くかもしれないので、予習としてとうとう原作を手許に。どんなに駄作であっても、映画館に行かずにいられないという友人から借りたんです。
これが噂の本ですね。さてさて、一気に行けるかどうか……。

2006年06月28日
レンタルDVDで、マルクスブラザーズを見ている所為なんですけどね。夜はワールドカップみてるし。それにしても面白い。次はキートン行くかなぁ。

2006年06月25日
はいはい、久しぶりに繋げたら、しっかり本コーナー復活です。読了本のうち、お勧めかなぁと思った本を2冊ほど書いておきました。お暇にあかせて読む本探しをしてらっしゃる方は、どうぞ、ご覧くださいませ。

『ナイロビの蜂』は敗者復活戦で。というのは、本当によいという前評判のもとに見た映画が、私的には外れ。消化不良もいいところ。う~ん、言いたいことは解るし、問題提起というか訴えたいことだどの辺にあるのかもわかるけど、主人公、そんな行動なぜとるのか? という疑問が……。原作を読めば少しは彼の行動に納得できるのだろうかという、一縷の期待を込めて。いい本だといいな~。

☆徒歩旅行シルクロード☆
張掖まで あと170.0km カシュガルまで3009.0km
4日で60146歩 一日装着忘れ

2006年06月19日
『豆腐バカ世界に挑む』 読了
豆腐バカ世界に挑む 16/JUN/06読了
雲田康夫(くもだ・やすお)著 光文社

海外駐在のジャパニーズ・ビジネスマン奮闘記といいますか、豆腐に対する愛情が溢れた一冊。なにせ、常温で1年保存できる無菌パックの豆腐が、日本で売れなくなって、海外をターゲットにしたものの、豆腐は家畜の餌だと思われていた。しかも、嫌いな食品No.1に輝いたという実績付き。
 一読の労をとっても、いいかなという作品でした。アメリカの労働者にたいする評はかなり辛口なのですが、日本式会社至上主義を是とするか非とするかで、その点に対する評価はわかれるかな。

☆徒歩旅行シルクロード☆
張掖まで あと197.1km カシュガルまで3036.1km
4日で44477歩 ちっと少ないですね。

2006年06月15日

豆腐バカは、サラリーマン・日系ビジネスマン、取り扱い商品を愛する全ての物売りに、共感をもたらし、敬意を評するに吝かでないという気にさせてくれるだろう。しかも、ビジネス用語は必ず英訳付き。学習にもいいかもしれない。

☆徒歩旅行シルクロー
メインにも書きましたが、ついに武威に到着。
    ここから更に張掖(チョウエキ)目指してテクテクあるきま~す。
張掖まで あと217.1km カシュガルまで3056.1km
『ウルトラ・ダラー』(お勧め本)
再挑戦したけれど、本のコーナー書き込めませ~ん。もう、こっちでいいや。
手嶋龍一著 新潮社 1500円
帯を引用しよう。
(引用開始)マカオの資金洗浄、続発する偽ドル、中朝の極秘接触、極小マイクロチップ開発、紛糾する6カ国協議……。衝撃のドキュメンタリー・ノベル! これを小説だと言っているのは著者だけだ!(引用終了)

盛り沢山の内容でしょう。船戸与一とか、好きなアナタは読んで損をしません。恐らく綿密な取材に基づいているのだろうと、唸ること間違いなし。ニュースに敏感な成人のひとであれば、自分がニュースで聞いたことのある事件が、ぽんぽん飛び出してくるので、気分的にドキュメンタリーを読んでいる気分になってくる。
これが、小説でしかないのは登場人物がとっても格好良すぎること。主役も脇役も、敵役すらが、格好よく粋で、人間のよいところを掻き集めて、天賦の才を二つも三つも持っている人達がゾロゾロでてきます。実際の日本の官僚で、いるだけで一つの職場に集う人の息を潜めさせるほどに圧倒的な存在感を有する『女性』がいるとはとても思えないし、居たとしたら活躍の場を与えられるより、男の嫉妬との闘いの方が凄絶になりそうな気がしますね。実際こういう立場で、こんな風に思う存分働けている女性がいるんでしょうかね。国連人権委員会日本政府代表の緒方貞子氏あたりが、私が近いものをイメージできる限界かな。
何にせよ、ストーリーの展開、登場人物の関わり合いが映画の如く映像的に綺麗にスパスパと花開いて、元気なときに映画的に楽しんだり、カッコいい男優女優が闊歩するのに辟易しない素直なタイプの読み手には、格好の面白さを提供してくれるだろう。私的には前半は本当に面白く読ませてもらったけれど、偽札と巡航ミサイルが云々あたりから乗り切れなくなってきました。藪の中的な含みがある方が、小説として好きなのかもしれない。これは、最後で『どうして彼(彼女)がそうしたのか』の尤もらしい理由付けが出てきすぎたかな、と、思いました。よくでき過ぎていることか、ひねくれた読み手には瑕疵に感じられることもあるということで。
それでも、勿論面白かった。偽札を扱った小説は出色の娯楽作品になる事が多いですね。私の読書歴のなかでも面白さで光っていた真保祐一著『奪取』もそうだったし。偽札というとドル札の肖像がルパン三世になってた奴を必ず思い出すんですが……。
14/JUN/06読了
2006年06月12日
(お勧め本です)
『みんな大好きな食品添加物 食品の裏側』安部 司著 東洋経済新報社 1400.-
マニアまでは行かなくても、食品添加物をできるだけ避けようという程度の問題意識は持ち、年会費一万円近くする「食品と暮らしの安全基金」の会員になり、情報誌を読むことで、常に問題意識をすり減らさないよう気をつかってはいるものの、やはり、便利さと手軽さの誘惑には勝てず、加工食品を使ってしまいます。でも、加工食品の便利さと易さを受益しつつも、添加物の摂取量はなるべく減らしたいという欲求が常にあります。加工食品をひっくり返したときに羅列してある添加物名に「やっぱり、何が何だか。でも少ないものを選ぼう」などとやっているのですが、いま一つ選択の基準に自信が持てないのが現状です。
自給自足生活でもしない限り、食品添加物を全く避けることは現在の日本では無理。でも選び方を知らないと、手をそこそこかけていてもコンビニ食と同程度かそれ以上の添加物を摂取してしまうということ。表示にもいろいろからくりがあり、少なく表示してあることが、添加物の種類が少ないこととは直結していないこと。などなど、今まで雑然としいれてきた知識を、整理して問題点を明確にしてもらいました。うん。なかなか、読んで行動の指標をくれる本はありがたいですね。

巻末の「加工食品のウソ・ごまかしを見抜く「安部式」添加物分類表」はコピーして冷蔵庫に貼っておきます。避けるべきものと、デメリットと利便性とをその都度秤にかけて、採ったり避けたりしていくものと、気にしなくていいものと、表示通りに信じてはいけないものと、こましな主婦へのスキルアップ目指して行動しましょうね。

常日頃心がけていますが、やはり、調味料系にコストをかけるのを惜しまないのが、間違いのない省添加物への一歩かなぁ。そして、反省。手抜きのやましさを軽減してくれる、半調理品を安易に使うことは、気休めに過ぎないのでした。添加物的には、全然変わりません。むしろ多量に摂取することになるかも。と、反省しきり。 11/JUN/06読了

2006年06月11日

 食品の裏側 読了
 感動したとかそういうのではないけれど、少なくともスーパーで買い物をする人なら、読んでおくべき本だと思い、本コーナー行き決定。久しぶりですね。
しかぁし、なんか知らないけど書き込みできませんのだ。明日以降にでも再挑戦します。
グイン・サーガ108巻 『パロへの長い道』栗本薫著
『大志の歌』安野光雅著など読了。
大志の方は、新聞で読んで図書館でかりて読んで見たのですが、内容はう~ん。各学校や寮の校章みたいなマークが一番面白かったかな。深くはコメントしがたい。

2006年06月07日
『不味い!』小泉武夫著 新潮社
はい、小泉教授熱は続いております。これだけ食べることに執念と情熱をもった人は、世には少ないでしょう。
美味しい料理を「美味しい」と並べ立てる本は多々あれど、不味かった物をこれでもかと列挙していくものは前代未聞ではないかと。しかも、その不味い内容が、普通の食生活しているものの「不味い」と同レベルのものもあれば、はっきりくっきりまるで世界を異にしているものもあり、脱帽。
先生カラスまで食べてるし……。
読んでて楽しかったし、吹き出すことも何回か、気分が悪くなることも数回あり。文字だけて辟易させてくれるなんて、なんて素敵なんでしょ。教授~。
しかも殆ど、食いしん坊の意地と、自らの「鉄の胃袋」に対する絶対の信頼感から、ちゃんと完食しているらしきことに、敬服する。手にとる際は食間を心がけて。食事の直前後には止めといた方が宜しいかと。

2006年06月06日

『優雅な暮らしにおカネは要らない』 読了

アレクサンダー・フォン・シェーンブルク著
畔上司訳 集英社インターナショナル

本当に優雅な暮らしにおカネが要らないと言っているわけではないですね。最低限のお金は必要悪というか、それがないと実際自給自足生活でもなければ、破綻しますし。
それでも、ちょっと視点と価値観を変えることで、浪費と消費に追われる生活ではなく、また、要らないモノを購入して、要らないものと同居するストレスを抱え込む生活ではなく、「センスよく優雅に暮らそうよ」って事らしいです。
目指すべき生活はそれでいいんですけどね。私はテレビやブランドなくても生きていけますし、作者とそれほど価値観が隔たっているとは思わないです。けれど、住まいを二軒持ってるらしいので、「それって、自分は別ですかい?」なんて聞きたくなりますね。

必要不可欠なものは贅沢でないらしいので、なんとも、なんとも。

2006年06月05日

『蟒之記』 読了じゃ
こんな出しにくい漢字の本は~、困る。
『うわばみのき』と読みますだ。
画数でひっぱって17画と判明。16画だと思ったので辿り着くまでに苦戦。(・_・;

『食の世界遺産――日本編』でファンになった伝統発酵食マニア、小泉教授の書いた小説というから愉しみに読んでみた。
小泉武夫著 講談社

まぁ、なんといいますか、長編かと思いきや、短編集。しかも、酒豪伝。ウワバミって、そっちのウワバミさんですか。そして、資料読みの学者気質が染みついていて、しかも、その資料に作者が感動したことが素直に開帳されてるようで、なんともいやはや。
ま、本読みの皆様には「ちがうだろ」といわれちゃうかもしれませんが、神坂次郎に知識披露大好き司馬遼太郎を混ぜ混み、それをあく抜きしてノウテンキで味付けしたかのような時代劇。
ご本人様は小説と仰ってますが、「悪女列伝」みたいなものの、日本の酒豪版といった作品で、申し訳ない、小説とは思えなかった。これ、資料も全部捏造で、小泉教授の創作ならば勿論平伏するしかないが、私の守備範囲には入っていないジャンルの話なので、与太話なのか、資料に骨太に取材したワイドショー風ドキュメンタリーなのかは判断しようがありません。
面白かったですよ。勿論、小泉教授熱醒めません。でも、小説だと言い張っているので、今回もお勧め本行きは見送られた。(゜_゜)(。_。)ウンウン (最近こればっか?)

☆徒歩旅行シルクロード☆
武威まで あと47.2km カシュガルまで3123.2km
19360歩

2006年06月03日

『厭世フレーバー』 読了
三羽省吾著 文藝春秋

微妙だ。面白かったし、三羽氏お初であれば、お勧め本に行くだけの実力はある。
実質崩壊していても家族としては辛うじて形成されている人達のそれぞれの視点による世界が、独白されることによって、時間的にも空間的にも微妙に押し広げられていく。
実際謎解きものを読んでいるつもりでなかったのに、隠された過去だの事実だのが展開されていく。
章が進むにつれ、今度は誰がどんな語りをするのか期待度も高くなり、それが裏切られることもない。

なのに、うわ~っと来るものが、来なかったのだから仕方ない。名作といってもいいかもしれないが、私の独断と偏見により、お勧め本行きは、見送られた。オシイ。
個人的には七十三歳の爺さまが一番よかったかな。フレーバーというネーミングもグッド。厭世したがってるけど、最終的なところで徹底的な『厭世』まで踏み込んでいない人達を上手く現している。


セプティマス・ヒープ
読み出したが、好みでない。いつまでもノってこないので、挫折。

日本の科学/技術はどこへいくのか 
読みきれないままに、図書館返却期限がきてしまった。
    延長する気になれず、中座。

☆徒歩旅行シルクロード☆
武威まで あと56.0km カシュガルまで3132.0km
27625歩

2006年06月01日
『漂民ダンケッチの生涯』 読了 神坂次郎著 文藝春秋
一気読みでした。

 幕末の紀州生まれの船乗りで、嵐の海に遭難漂流、初代中日英国大使の通辞として帰国、攘夷浪人の手にかかり、死亡。という、物語を地で行く短く波瀾に満ちた人生を歩んだ青年の物語です。

毎度のことですが、神坂氏は念の入った『資料読み』だと思われますね。資料の行間に物語の臭いを嗅ぎつける天才というべきか。

資料自体に神坂氏がトリップしてしまうので、読者はぐいぐいと物語に巻き込まれるというより、冷静な第三者の立場にきっちり据えられてしまう。よって、陶酔型展開を愛する私としてはお勧め本に入れるわけには行かないけれど、冷静な物語読みの方には、お勧めできる一冊。

☆徒歩旅行シルクロード☆
武威まで あと68.4km カシュガルまで3144.4km 22968歩

拍手~♪

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感染地図―歴史を変えた未知の病原体 (No.42)

2008-04-23 | ブックレビュー(オススメ本)
感染地図―歴史を変えた未知の病原体
スティーヴン・ジョンソン
河出書房新社

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☆Copyright(C) 河出書房新社
150年前のロンドンを見えない敵が襲った。大疫病禍の感染源究明に挑む「壮大な実験」と「壮絶な闘い」。恐怖や惨劇の中で進む探偵劇から、公衆衛生の概念の転換点と、現代都市が抱える共通の問題を多面的に検証する。

☆コレラ菌が微生物として正体を現す30年前に、大都市が襲われた脅威! 19世紀半ばのヴィクトリア時代。感染症の原因が微生物だという概念がまだなかったころ、コレラがグローバル化した交易網に乗ってやってきて、世界最大の大都会に成長していたロンドンの水源に入りこんだ。そう、このころのコレラは原因も治療法もわからない致死的な新興感染症だったのだ。

☆この物語には、致死的な細菌と、急成長する都市、そして天賦の才を持った二人の男という四つの主役が登場する。百五十年前のある一週間、底知れぬ恐怖と苦痛に見舞われたロンドン、ソーホーにあるブロード・ストリートで、この四つの主役たちは交差した。
―― 『感染地図』の「はじめに」より


【著者紹介】
〈スティーヴン・ジョンソン〉『ニューヨーク・タイムズ・マガジン』『ワイヤード』等多数の雑誌に寄稿しているコラムニスト。サイエンス、ポップカルチャーなど専門ジャンルは多岐に渡る。著書に「創発」など。


【感想】
 この本をどうしてお勧めするか! 小説にしても読みごたえたっぷりの材料になることは間違いのない、天賦の才をもった二人の男が居たからだ。

 公衆衛生の概念がなく都市というものに人が密集する。病原菌というものの存在が幽霊よりも非現実だった時代に、やはり現状を精密に把握することで正しく『水の中に原因がある』というところまで辿り着いた男。
 そして、それを当時の常識からみて完全に否定する立場で検証を開始し、それが真実だろうという結論に達したとき、潔くそれを認めて、自らが否定していた人間の再考の理解者となったという、まるで一つの物語としか思えない展開。

 その否定を視野にした検証に使われた地図が果たした役割。そして、『井戸のポンプの柄を外す』という、顕かな1シーンが劇的にあること。そして、喉元過ぎれば、『瘴気説』に頑迷に拘る役所気質の滑稽さ。

 都市というものが営めるようになった事は、それだけの人工を養えるだけの食糧生産量ができたということであり、ただまとまって住む、それだけのことも都市という規模を支えるにはインフラなどのハード面と行政というソフトの洗練が必要であり、その過渡期にあった混乱の時代にも、人の(自分のものでない)命を大切にするために確かに生きた人たちがいて、たまたま、『未知の病原体』や『急成長する都市』のような連中と行きあわせたゆえに、ひときわ輝いて見える二人が居たと捉えると、ただの興味本位な実録ものから一歩出て、人間も捨てたものではないという感動にまで行き着くのではないだろうか。

 人間以外の主役級である、この物騒な連中『未知の病原体』『成長し続ける都市』の方は、相変わらず猛威を振るう隙間をうがって常に見え隠れしている。一度牙を剥けば、人間が個人としての終末ではなく、巨大な数字の塊として死んでいくというおそろしい事態がやってくるだろう。そして、無力な一個人としての私たちは、運次第で死者にも残される者にもなるのだろう。けれど、人間というものが、いつも人間であるかぎり、原因を探し、解決策を死力を尽くして捻り出す誰かが必ず出てきてくれて、やがて脅威は慣れ合える隣人となり、過去の恐怖の記憶となり、文字情報として名前が残るのみになっていくだろう。

 そんな風に、人類の未来に楽観を与えてくれる、名著だと思われる。

(^^)// ハクシュ

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解剖医ジョン・ハンターの数奇な生涯 (No.41)

2008-04-23 | ブックレビュー(オススメ本)
解剖医ジョン・ハンターの数奇な生涯
ウェンディ・ムーア
河出書房新社

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Copyright(C) 河出書房新社
膨大な標本、世界初の自然史博物館、有名人の手術、ダーウィンより70年も前に見抜いた進化論…。近代外科医学の父にして驚くべき奇人中の奇人、18世紀英国の鬼才博物学者ジョン・ハンターの生涯を綴った伝記。  
【著者紹介】
〈ウェンディ・ムーア〉イギリスの女性ジャーナリスト。医療や健康分野の記者を20年以上にわたって務めたあと、フリーとなる。1999年に英国薬剤師協会で医学史の学位を取得、同年マカベア・ベスト論文賞を受賞。  

Amazonのレビューも併せていかが?

★ こういう人間が存在していたということ。そして、こういう人間が埋もれてしまうこと。そして、丹念に掘り返してくれる人間がこうして存在していること。事実はまったく小説をやすやすと凌駕する。

(と、ここまで書いたのがなんと2月! やる気が無かったにもほどがある)

 とにかく、科学的手法というものがまだ卵だったころ、徹底した観察に基づき、既成概念に囚われず事実から推論しうる広角な視野で、ダーウィンよりも70年以上前に進化論に辿り着いていた、とか、臨床という概念を治療に取り入れた先見性とか言葉にすると、物凄い知的な科学者のイメージが湧きますが……いやいや、生命そのものに取り憑かれた狂気と紙一重。
 解剖するための死体を手に入れるために墓場泥棒するならまだしも、短命が予測される人間を生きている内から解剖(→標本化)したがる。キリンなどの大型の生き物をあらゆるつてで入手して標本化している傍らで、昆虫など微小な生物まで解剖しまくる。古い頑迷に喧嘩を吹っ掛けつつ、後進の指導にも手を染め、莫大な稼ぎをさらに莫大な借金をも足して、自分のしたいことに邁進する。

 読み出したら止まらない。そして、あんまりにもあっけらかんとしていて、立ち止まって考えると相当エグい状況にも関わらず、なんだか突き抜けてしまっている感触。妊婦というか胎児を解剖している図なんて、普通なら想像もしたくないのに、その細密な絵にむしろ見とれてしまう。胎盤というもので隔てられて、胎児と妊婦の血液は混ざらないことなども、いまでは常識だが、こうやって発見されて来たのかと思うと、なんだか遠く時間に思いを馳せたくなったりしてくるくらいだ。

 人間、色々なことに囚われすぎて、生活を顧みず自分の興味のあるものを最優先に生きている人は少数だろう。みな、そうだったらいいと思いつつ、できないでいる。しがらみや縁や、失敗を先取りして言い訳的に着手を後回しにしたりと、周囲とも自分自身とも馴れ合うことで、可も不可もない毎日を送っている。
 こういう強烈な人間ばかりであったら、世の中はちっとも上手く回らないだろうけれど、いわゆる普通の人間だけでは一つ先に駒を進めることはできないだろう。
 こういう人間が断続的に存在しつづける。その中にたまたま真実に行き当たった人間が何人かいれば、人類としての知識というものが、ひとつ、新たに積み上げられていくのだ。

 我が身が何も成し得ないことを後ろ向きに悲しむより、こういう人間の存在をも含んだ人類というものが、今を作ってきたという事。現代の生活に当たり前のように在る知識というものは、誰かが見つけてくれたのだという事。そんなことを今更ながらに気付けたような気がした一冊。

(^^)// ハクシュ

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『流水の宴』はじまり はじまり

2008-04-03 | 書くのはサガだ(エッセイ風)
 2月か3月にアップ開始すると豪語していた新作、SFと同様、設定は妄想力のみで調べ込みがイラナイというだけで無謀にも選んでいるジャンル、ファンタジー(に、なるはず。多分)、『流水の宴』、めでたく(めでたいのかなぁ?)連載開始にこぎ着けました。
 多分、不定期で完了も二年までは掛からずに終わる予定ですが、はっきりいって本業『作家』ではなく、読書と家事の隙間時間を活用して執筆というスタイルですので、その点については保証できかねます。一気読み派の方はどうぞ無視してください。m(__)m

 開始そうそう早速ですが、なぜ遅れたかの言い訳を。導入部で、一人の少女がハムレットのオフィーリア風に水に浮かんだ死体で登場するんですが、ここに引っかかってしまった! 果たして死体は浮くのか?

 もちろん、腐敗が進んで臓腑が発酵しはじめれば、浮きますがそうでなければ肺に空気がなければ即効で沈むらしいんですよね。死体ってのは。だから、綺麗な死に顔じゃなきゃいけないのに、腐敗してたらちょっと困るし、沈んでたら発見できないし、特に河は川に比べて流れは穏やかな筈なんですが、向こう岸が見えないほどの大河に流されちゃったら……、普通見つからないよなァ。ってことで、悩んでたんですよ。調べてもグロいページに行き当たるばっかりで、なかなか謎が解明できなかったんですわ。

 肺に空気が残ってて、衣装に浮力があれば浮くのか? とも思ったんですが、絞殺されてるし……、肺に空気が残ってるかどうかは全く素人には不明。法医学のプロに知り合いは当然いないし。空気が抜けるまでは浮いてたんだと決めつけようとも思ったんですが、乱暴な気もしたので……。
 しかしまぁ、じゃ~、なんでオフィーリアは浮いてたんだって思ったんですけど、『歌って』た筈なので(うろおぼえ)、登場時点では生存してたんですよね。う……不覚。

 という訳で、本当は清らかな水に浮かべてあげたかったんですが、早期発見されるべく仕組まれた死なので、老人に発見していただくように、わざと老人の小舟の舫い綱に引っかけられたことになってもらいました。生活排水が流れ込む部分に遺棄はさせたくなかったんですが、役割を果たしていただくべく、ミアーヌ嬢には涙を呑んでいただきました……。

 こんな入り口のところに引っかかってたら、何年あってもお話なんか終わらないですよねぇ。 そんなこんなで、とにかく、始めました。という訳で、暇つぶしに皆さんどうぞよろしくお願いいたします。



『流水の宴』
序の前 宴(うたげ)
序章 発端
第一章 越境 
三話というには短いですが、一応一挙にアップー!  感想and応援よろしゅう。


(^^)// ハクシュ

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