3メートルの槌 ~ほぼクラシック音楽ブログ~

その日に聴いたクラシック音楽の演奏会やCDを気ままに書き綴っていきます。

FMラジオでNHK響定期公演を聴く ~ 尾高忠明×金川真弓のブリテン、バーバー、エルガー

2022-02-16 20:51:51 | Radio

今日は、久しぶりにN響#1953定期公演の模様を、FMラジオで聞いてます。

プログラムは、

  1. ブリテン歌劇「ピーター・グライムズ」~4つの海の間奏曲Op.33a
  2. バーバーヴァイオリン協奏曲Op.14
  3. エルガー変奏曲「謎」Op.36
ヴァイオリン:金川真弓
指揮:尾高忠明NHK交響楽団

当初のパーヴォ・ヤルヴィの指揮、ヒラリー・ハーンのヴァイオリンから変更になりましたが、尾高さん十八番のイギリスものなので、これは聞き逃せません。

    

1曲目。ブリテン(1913-1976)の4つの海の間奏曲歌劇「ピーター・グライムズ」の中にある6つの間奏曲から4つを選んで編成された作品です。第1曲「夜明け」、第2曲「日曜の朝」、第3曲「月の光」、第4曲「嵐」からなっています。リハーサルで尾高さんはかなり細かい指示を出していたようで、4曲それぞれの曲想が映像として伝わってきた気がします。

    

2曲目。バーバー(1910-1981)のヴァイオリン協奏曲

ヴァイオリンの金川真弓さんは、ドイツ生まれ。4歳の時日本でヴァイオリンを始め、その後ニューヨーク、ロサンゼルスを経て、現在ベルリンを拠点に活動しています。同地のハンス・アイスラー音楽大学でコリヤ・ブラッハーに師事。名倉淑子、川崎雅夫、ロバート・リプセットにも学ぶ。2018年、ロン・ティボー・クレスパン国際音楽コンクールで第2位入賞および最優秀協奏曲賞を受賞。さらに翌年、チャイコフスキー国際コンクールで第4位となる。これまでにハンヌ・リントゥ、ユーリ・シモノフ、パスカル・ロフェ、ヒュー・ウルフなどの指揮者、マリインスキー劇場管弦楽団、ドイツ・カンマーフィルハーモニー管弦楽団、フィンランド放送交響楽団、ベルギー国立管弦楽団などと共演しています。

旋律主体の前半2楽章では歌を歌うように華麗に演奏し、第3楽章での技巧的な楽章では激しく煽り立てるような演奏を披露していたのが印象的でした。

アンコールは、黒人霊歌Deep River

    

休憩後の3曲目。エルガー(1857-1934)のエニグマ変奏曲Op.36。主題と14の変奏曲からなっていますが、それぞれの変奏の表情の使い分けが実に素晴らしい。さすがに尾高さんお得意の作品という感じです。第9変奏「ニムロッド」は、この作品の中心となる部分で、荘厳な響きを見事に披露してくれました。


シューマン&ブルックナーの遺作を聴く

2022-02-12 22:00:00 | CD

遺作とは、未発表のまま死後に残された作品のこと。ということで今日は、シューマンのヴァイオリン協奏曲とブルックナーの交響曲第9番を聞いていこうと思います。

    

まずは、シューマン(1810-1856)のヴァイオリン協奏曲ニ短調WoO23

1853年。ヨーゼフ・ヨアヒムとのベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲の共演をきっかけに、ヨアヒムが依頼し、わずか2週間で作曲されました。しかし、ヨアヒムはこの作品を取り上げることななく、クララ・シューマンもこの作品を封印してしまいます。というのも、シューマンがライン川に身を投じる直前に書き上げたピアノ「天使の主題による変奏曲」の主題と、この協奏曲の第2楽章が似ていたためと言われています。

その後1937年になってから、この作品がヨアヒムの蔵書から発見され、ゲオルク・クーレンカンプのソロ、カール・ベーム指揮ベルリン・フィルで初演されました。

  • ジョシュア・ベル (vn)
  • クリストフ・フォン・ドホナーニ指揮/クリーヴランド管弦楽団

1994年の録音。最近になって徐々に演奏される機会が増えている作品ですが、録音当時はとても珍しい曲として認知されていました。ベルのソロはとても軽やかで、この作品の魅力を存分に発揮しているように思えます。オーケストラの音も明るい。アメリカ的な楽天主義かな。

 

    

続きまして、ブルックナー(1824-1896)の交響曲第9番ニ短調

1887年の交響曲第8番完成後に着手されました。が、第8交響曲に対する酷評が原因で、過去の作品の改訂に手を染め、第9交響曲の作曲はおろそかになり、1894年にようやく第3楽章まで書き上げます。そして、死去する直前の1896年10月11日まで第4楽章に取りかかりますが、第3楽章までの未完成のまま残されることになりました。

初演は1903年2月11日。フェルディナント・レーヴェの指揮するウィーン交響楽団(の前身のオーケストラ)によって行われました。

  • クリストフ・フォン・ドホナーニ指揮/クリーヴランド管弦楽団

1988年の録音。演奏時間1時間を切る快活テンポの演奏。オーケストラの響きがここでも明るく、ブルックナー特有の重厚さを求める人には物足りないかもしれません。2014年のフィルハーモニア管弦楽団とのライヴの方が、聞き応えがあるかも。


アクセルロッド×富田心×都響 ~ プロムナードコンサート No.395

2022-02-11 20:07:27 | 演奏会

朝早く大阪を出まして、お昼に東京到着。東京都交響楽団プロムナードコンサートを聴くために、そのままサントリーホールへ。大好きなチャイコフスキーの第4交響曲と、グラズノフのヴァイオリン協奏曲なのでテンション上がります。

プログラムは、

  1. チャイコフスキー歌劇「エフゲニー・オネーギン」~ ポロネーズ
  2. グラズノフヴァイオリン協奏曲イ短調Op.82
  3. チャイコフスキー交響曲第4番ヘ短調Op.36
ヴァイオリン:富田心
指揮:ジョン・アクセルロッド東京都交響楽団/コンサートマスター:矢部達哉

指揮のアクセルロッドさんは、去年の12月からずっと日本に滞在して色々なオーケストラと共演していますが、どれもが素晴らしい演奏だそうで。それにしてもレパートリーどれだけあるんだろ。

     &     

チャイコフスキー(1840-1893)の歌劇「エフゲニー・オネーギン」交響曲第4番は、ほぼ同時期の作品。傑作が続々と誕生した時期ですが、その背景には不幸な結婚があることを忘れてはなりません。結婚破綻後、失意のうちに海外へ旅立ち、スイス、フランス、イタリアで保養することになり、そこでこの2作品を書き上げます。

歌劇の内容は、厭世的な青年詩人エフゲニー・オネーギンと田舎地主の娘タチアーナを中心とするもので、タチアーナの一途な愛を拒絶したオネーギンが、時が経って侯爵夫人となって成熟したタチアーナに再開し、今度は彼の方がタチアーナに求愛するものの彼女に拒絶される、というもの。

「ポロネーズ」は、第3幕冒頭、ペテルブルクの上流階級の人々が集まるパーティで踊られるもので、極めて華やかな作品です。冒頭のトランペットのファンファーレが聞きもの。アクセルロッドが登場し、拍手が止むと間髪入れずにファンファーレ。熱気がオーバーアクションな指揮ぶりとともに伝わってきます。オーケストラをグイグイ引っぱっていく力がありそうです。

プログラム最後の交響曲第4番同様に、アクセルロッドのドライブ感がすごい。華やかな「ポロネーズ」のファンファーレとは対照的に、第1楽章冒頭のホルンとファゴットによる運命の動機のファンファーレからかなり力が入り、熱のこもったものを感じました。音の強弱といい、テンポの緩急といい、一時も気が抜けない。第1楽章の終わり方は、バーンスタインが指揮した演奏によく似てました。バーンスタインの元で学んだことがあるので、影響を受けたんでしょうね。

第2楽章の哀愁を帯びた印象、第3楽章のおどけた感じと表情をコロコロと変え、再び第4楽章で大爆発。これだけブラスをガンガン鳴らすとは。耳が壊れそうです。それにしても、何度聞いても気分が盛り上がります。

    

プログラム2曲目。グラズノフ(1865-1936)の唯一のヴァイオリン協奏曲イ短調。本格的に作曲が行われたのが1904年で単一楽章で書かれています。

ヴァイオリンの富田心さんは、Coco Tomitaとして活躍中。2002年生まれ。2017年イーストボーン交響楽団ヤング・ソリスト・コンクール優勝。2019年ウィーン国際音楽コンクール、ベルリン国際音楽コンクールにおいてともに金賞受賞。カール・フレッシュ・アカデミーにれカール・フレッシュ賞を受賞。2020年BBCヤング・ミュージシャン2020弦楽器部門優勝。という素晴らしい経歴の持ち主。

緑のドレスで登場したCocoさん。冒頭の一音から貫禄のある響き。音がよく鳴り響き、情熱さと甘美さとを合わせもった表現力が感じられました。カデンツァでの高度なテクニックも素晴らしい。フィナーレでの華やかさも良かった。

アンコールは、エネスク(1881-1955)の「幼き日の印象」~ I. 辻音楽師Op.28-1。音がきれいで、テクニックも抜群。若いのに堂々としていて、これからの活躍に期待したいです。

    

グラズノフのヴァイオリン協奏曲のフィナーレでもトランペットのファンファーレが鳴り響きます。ということで、今日の3曲に共通するのは「ファンファーレ」でしょうか。2日連続の演奏会は今までにもありますが、今回は距離が長すぎた。疲れたので寝ます。


尾高忠明×大阪フィルの「ブルックナー第5番」 〜 大阪フィル #555

2022-02-10 22:36:38 | 演奏会

木曜日休み&東京が雪ということで、1年半ぶりに大阪に来ちゃいました。目的は、大阪フィル音楽監督、尾高さんのブルックナー第5番。大阪フィルの本拠地フェスティバルホールに初めてお邪魔しました。

プログラムは、

  • ブルックナー交響曲第5番変ロ長調 (ノヴァーク版)
指揮:尾高忠明大阪フィルハーモニー交響楽団/コンサートマスター:崔文洙

朝比奈隆時代が終わってから20年経ちますが、ブルックナーと言えば大阪フィルの代名詞のようなものです。尾高さんのブルックナーも定評があるので期待が持てます。

     

初めてのフェスティバルホールは、空間が広く、響きも良い感じ。なるほど、大阪フィルがブルックナーを得意とする理由がわかった気がします。

演奏時間約80分の交響曲第5番ですが、インテンポで演奏しても最後は盛り上がりますが、聴いてる側とすると徐々に飽きてくることがあります。その点尾高さんは、テンポでメリハリをつけ、聞き手にも飽きさせない工夫があったように思われます。特に第4楽章のテンポの緩急は凄まじく、一気に駆け抜けたかと思うと、穏やかな箇所でテンポを落としたり、コーダで曲が終わるのを惜しむような一音一音アクセントを加えたスローテンポを取ったりと、目まぐるしく風景が変わるようで面白さがありました。

オケは16型の2管編成。ブラスのドスの効いた迫力は朝比奈時代の演奏を思わせます。安定のホルン。そして管楽器も素晴らしい。弦楽器に美しさと荒々しさと両方を併せ持たせたのは、ブルックナーのロマンティシズムと野生味を表現したように思えました。

また大阪に来たい。今度はゆっくりと2泊以上で満喫したいです。

明日は9時台の新幹線で戻り、都響です。

 


テンシュテットのブラームス/交響曲第3番ヘ長調

2022-02-05 21:33:16 | CD

昨日のケネディのブラームスに引き続いて、今日はクラウス・テンシュテットが指揮したブラームスの交響曲第3番を聴くとします。

クラウス・テンシュテット(1926-1998)は、ドイツのメルゼブルクで生まれ、ライプツィヒ音楽大学でピアノをローデン、ヴァイオリンをダヴィッソンに学び、1948年にハレ市立劇場の第1コンサートマスターになりました。52年同劇場の首席指揮者になって本格的に指揮活動を開始。58年からラーデボイル州立劇場の音楽総監督、62年よりシュヴェーリンのメクレンブルク国立劇場の音楽総監督。70年にはベルリンのコーミッシェオーパーに登場と、活動のほとんどが旧東ドイツだったために西欧には知られることがありませんでした。

71年に初めて国外に移り、スウェーデンのエーテボリ国立劇場、スウェーデン放送交響楽団に客演。72年当時の西ドイツのキール市立歌劇場の音楽監督に就任してから、次第に西側にも知られるようになります。79年北ドイツ放送交響楽団の首席指揮者、翌年にミネソタ管弦楽団の首席客演指揮者に就任。

そして、83年からロンドン・フィルハーモニー管弦楽団の音楽監督となります。85年に癌を発症してポストを辞任しますが、オーケストラから桂冠指揮者の称号を与えられます。

テンシュテットのCDと言えば、デビュー時期のベルリン・フィルとのワーグナーが名盤です。手兵だったロンドン・フィルとはマーラーの交響曲全集がこれまた名盤。闘病生活から復帰した晩年の第6番&第7番の荒々しい演奏は感動的です。

 

  1. ブラームス交響曲第1番ハ短調Op.68
  2. ブラームス交響曲第3番ヘ長調Op.90
  • クラウス・テンシュテット指揮/ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団

第1交響曲が1992年10月、第3交響曲が1983年4月のライヴ録音。テンシュテットによるブラームスの正規録音盤は、第1交響曲とヴァイオリン協奏曲、ドイツ・レクイエムしか見当たらず。第3交響曲は、このLPOレーベル盤だけかもしれない。放送録音らしく生々しい音が聞えてきます。