「アヴェアは、ニューポートe500の対極にあるベンチレータである」
デザインや色使いが、アメリカ製らしからずお洒落なアヴェアであるが、パステルカラー故か、若干大柄に感じられてしまう。しかし、狭い場所での取り回しには少々気を遣うものの、大き目のキャスターや長めの足のせいか見た目と違って重心も低く、他機種と比べて特に移動に苦労するというほどではない。
操作は、画面にタッチして変更する項目を選択し、ジョグダイヤルで設定を変更し、確定ボタンで確定をするという、エビタ4/XLやサーボi(もっとも、これらの機種は確定ボタンがジョグダイヤルと一緒であるが)、ベネット840などでおなじみの操作方法である。ジョグダイヤルの隣にある決定/取り消しボタンは、他のボタンとサイズや色が同様なので少し使いづらく感じるが、設定ボタンについては画面表示自体をタッチしても確定できるので、実際の使用上はあまり困ることはない。タッチパネルは応答も良く(なんでも、マクドナルドのPOSに使われているのと同じデバイスだとか)、反射も少ない。また、視野角も広く、ディスプレイ部分は左右方向に180度回転させられるなど、使い勝手も優れている。欲を言えば、下向きにもう少し傾けることが出来たらベスト。今の角度では、椅子に座りながら設定をするときにはちょっと足りない(まあ、そういう使い方をすること自体、あまり無いだろうが)。呼吸回数など一部の設定項目では、ジョグダイヤルが敏感すぎる気もするが、ほとんどの設定においてジョグダイヤルと設定値がリニアに変わるので、使用中の違和感は少ない。グラフの軸や数字表示など、画面表示自体の変更も同様に直感的に行える。数字表示の項目も、非常に多くの測定値の中から選択できるのだが、中にはアメリカ版の食道内圧測定機能を前提とした項目もあり、バイコアのCP100がすでに入手できない現在、日本版で食道内圧測定機能が無くなったことは非常に残念である。マニアックな設定項目については「アドバンス設定」として別にボタンを設け、そのボタンを押したときだけ設定項目が表示される(しかも、例えばトリガー感度を選択するとそれに関連がある項目のみ表示されるという感じで)というようにして、多機能をなるべくわかりやすくする工夫がなされている。これは、裏を返すとそのような工夫をしなくてはいけない程に多機能ということでもある。
他の人工呼吸器と違う点は、ヘリオックスガスというガス密度の低いガスを使用できるという点くらいで、それ以外の機能は今までバード社やベアー社、またエビタシリーズやサーボシリーズなどで見られたものがほとんどである。しかし、それら他メーカーの機能でアヴェアに搭載されていない機能は無いというくらいほとんどの機能が、この機種には搭載されている。流行のバイレベルCPAPをはじめ、PRVCやプレッシャーオーギュメント、オートフローや(A)TCなど。もちろんPSVのターミネーションクライテリアや立ち上がり速度も調節できる(さすがに、ニューポートe500のような自動調節ではないが)。コンプライアンス補正も、自動補正以外にも、その回路の過去の測定値を覚えておけば以後は直接その値を入力できる。人工鼻と加温加湿器を選択することで呼気換気量の補正も行うし、リーク補正機能があるのでマスク換気も行える。トリガーはフロートリガーと圧トリガーの統合制御だが、オプションの口元フローセンサーを使用すると新生児にも使用でき、そのときの性能は小児専用機のVIPバードを凌駕するともいわれている。分離肺換気の際に、2台を同期して使用することも出来る。24時間のトレンドも表示できて、しかもイベントまで記録できる。ワンタッチで100%酸素(これは、新生児の場合を考慮して、100%以外の濃度も設定できるらしい)投与とアラームのオフが同時にできる「吸引ボタン」もあるし、P100(P0.1)やオートPEEPも測定できる。しかも内部バッテリーで最大30分(コンプレッサーを使用しないときは最大2時間)の使用が出来、コンプリには小型スクロールコンプレッサーまで内蔵されている・・・。これで、実売価格が競合他社より低く設定されているのだから、スペックだけ見ていると超お買い得機ということになるのだが・・・。
実際に患者に使用してみると、まず気になったのがPCVやPSVの立ち上がりのゆっくりさ。立ち上がり速度を最大にしても、ゆっくりと立ち上がる。それで不都合があるというわけではないのだが、どうも気になってしまう。最初に試したモードはBiPhasic(BIPAP)だったのだが、競合他社のものとは違ってfという概念が無い。高いPEEPと低いPEEPの持続時間の関係で、結果として回数が決まる、ということ。別に、1回の呼吸サイクルで60秒を割って割り切れなければいけないという決まりもないし、慣れればこれはこれで良いかもしれないが、PCSIMVのような使い方をするときは、「換気回数をきちんと決められない」というのは、違和感はあった。まあ、PCSIMVの吸気もセミオープンバルブで制御されているようなので、BiPhasicはあくまでも本来のBiPAPとして使用するのが正しい利用法かもしれない。高いPEEPと低いPEEPの切り替えは、自発呼吸の吸気/呼気に合わせて行われるが、それをシンクロさせるウインドウ時間はアドバンス設定でいろいろ設定できる(シンクロしないようにも設定できる)。BiPhasicで高いPEEPにPSをかけるかかけないかを選択できる点は、自由度が高い。AAC(ATC)もドレーゲル同様PSと同時に作動させることができる(もちろん、使用するかどうかを各々別個に選択できる)。ただ、ドレーゲルのそれと違って画面には計算値が表示されないので、実際どれだけ効果があるのかはわからない(というか、ありがたみを実感できない)。
PCSIMVでも、フローサイクル機能により、自発呼吸に同期した強制換気の場合は吸気の終了を患者のそれと同期させることができる(デフォルトではOFF)。この機能とPRVC,またはフローシンクを組み合わせることにより、一回換気量を保障しながら自発呼吸と同期した従圧式強制換気を行うことが出来る。
従圧式換気では、一回換気量を保障する方法としてもうひとつ、マシンボリュームという機能がある。まあ、動作自体はベアーのプレッシャーオーギュメントと同様なのだが、従量式換気にはフローシンク(ドレーゲルのオートフローと同様)が加わったため、マシンボリュームは従圧式換気で作動するようになっている。しかし、従圧式換気で一回換気量を保障する方法としてすでにPRVCもあることだし、マシンボリュームでは時に気道内圧が設定圧より上がってしまうので、あえて従圧式換気の補助として使用する必要を感じなかったりする。やはりこれは、「従量式換気で、吸気フローの不足を補う」という本来の使用法で使用するのが一番良いだろうし、その意味では前述の通りもはや必要性のあまり無い機能なのかもしれない。
麻酔中のように、患者の意識が無い状況下ではPRVCは安定して動作した。しかし、意識のある患者の場合、気道内圧がどれだけ変動するかについてはよく判らない。
使い勝手の面では、当初予想したとおり、ダイヤルの回転にクリック感が無いので、PIPなどで微妙に設定値を調節するときなど少々使いづらい点もあった。
実際使用してみて一番気になったのは、やはりトリガーである。この機種はフロートリガーと圧トリガーの併用との事だが、圧トリガーのデフォルト値が3cmH2Oなので、実質的にはフロートリガーでの作動を前提としているようである(ちなみに、デフォルトのベースフローは2lpmで、センスフローは1lpm)。しかし、肺からのリークがある患者のようにフロートリガーで心配のある状況もあるわけで、そのような時に異常な設定にして(センスフローをベースフロー以上にするとか)フロートリガーを殺さない限り圧トリガーのみで使用出来ないというのは、精神衛生上あまりよろしくない。しかも、今どちらのトリガーで作動しているのかがわからない。設定上はフロートリガー優位のはずだし、ベースフローも流しているのでデマンドタイプのフロートリガーではないはずなのだが、なぜか吸気のはじめに気道内圧の落ち込みがある。そこで、試しに圧トリガーを1.0cmH2Oと敏感にして、フロートリガーの方は鈍くしてみた。圧の落ち込みのほとんど無い、一見普通の自発呼吸のような呼吸が10回/分程度で出現し、PSVでも普通に換気しているようにみえて、喜んでいたら、実はそれはオートトリガーだったりして、・・・。正直、トリガーについてはいまひとつしっくり来なかったというのが正直な感想である。もう少し時間をいただいて、呼吸の弱い患者とかいろいろ使ってみないと、なんとも言えない気がするが、本国アメリカでは食道内圧を測定して、それを利用してトリガーさせているとか。だとすると、もともとコンベンショナルなトリガーについては、あまり力が入っていなかったのでは?などと意地の悪い勘ぐりをしてしまいたくなったりして・・・。
この機種は、面白いことに同じアメリカ製のニューポートe500とは対極にある機種だと思う。ニューポートの方は、機能を絞り、自動化を進め、調整範囲を制限して、普通の医師が普通の患者に使うのに最も良いベンチレータを目指している。一方アヴェアは、設定項目を開放し、知識のある医師が普通でない患者に使う場合にも、対応できる可能性を残している。しかし、マニアックな設定項目や設定範囲(一体、吸気時間を1/100秒単位で設定する医師なんて、居るのだろうか?)、ほとんど不必要ともいえる機能など、私も含めた多くの医師は、アドバンスモードを開いただけで途方に暮れてしまうことだろう。幸いマニュアルが比較的読みやすく出来てはいるものの、この機種の使いこなしについて(丁度、一眼レフデジカメにあるような)副読本があっても良いのではないか?と真面目に思ってしまうほどだった。ヘリオックスガスを使用できるのは、今のところこの機種しかないし、一部のマニアックな(この機種の機能を見て、使いこなしてやろうと思うような)医師には、これ以上「使いで」のあるベンチレータはなかなか無いだろう。しかし、個人的にはベネット840やエビタと比べ、アヴェアの使用「感」にはまだ信頼性までは感じられない。比較的長い期間、いろいろな状況で、いろいろな患者に使用してみて、初めてわかることもある。今、アヴェアに足りないものは、そのような実績の積み重ねだと思う。
AVEAについての素朴な疑問あれこれ
(1) 換気モードのうち、TCPLとは何でしょうか?カタログ本文には説明されていない様ですが・・・
(2) マシンボリュームについて。VAPSやプレッシャーオーギュメントは「従量式換気のフロー不足を補うために、自発呼吸の吸気流速が従量式換気の設定吸気流速以上のとき作動して、PSV(PCV?)レベルまで圧が上がり、自発呼吸の吸気流速が従量式換気の設定吸気流速まで落ちた時点でそれまでの吸気量と設定一回換気量を比較し、それまでの吸気量が設定一回換気量より少ないときは設定吸気流速で不足分を送気、すでに設定一回換気量以上吸気していたときはそのまま呼気に転じる(VAPS)か、設定ターミネーションクライテリアにて呼気に転じる(プレッシャーオーギュメント)」と理解してましたが、マシンボリュームではどの時点で設定一回換気量と比較するのでしょうか?また、すでに設定一回換気量をクリアしていた場合の吸気終了はいつになるのでしょうか?
(3) AACについて。他社の(A)TCでは「気管チューブの抵抗を相殺する」と言われてましたが、AACも基本的に同じ役割を持つと考えてよいのでしょうか?チューブ先端圧の低下を強調してましたが、(A)TCのように吸気流速によって補助を変えているのでしょうか?ATCの場合は吸気のみでなく呼気においても先端圧の制御(呼気流速を見ながら、回路内圧を低めにする)を行ってますが、AACはどうでしょうか?また、他社は(A)TCにおいて「(気管切開は別だが)気管チューブの長さの影響は無視できる」と公言してますが、AACで気管チューブ長を入力する根拠があれば教えてください(たとえば、これだけ効果が違ってくるというデータとかあれば・・・)。
(4) コンプライアンス補正は、始業点検のようなときに行うのでしょうか?
(5) フローセンサーは(小児用のオプションを除くと)吸気と呼気で2個付いているのですか?それとも1個で間に合わせているのですか?
(6) 小児用口元フローセンサーを使用した場合の性能は、VIPバードと比べてどちらが優れているのですか?
(7) アキュムレーターを内蔵して、200LPM以上のガス供給を可能にしたと書かれてますが、スペック表ではピークフローが150LPMとなってます。実際はどれだけ換気が出来るのですか?
(8) スペック表の「フローシンク」について、本文に詳しい説明がありませんでした。「オートフローと呼ばれることもある」、とも書かれてますが、ドレーゲルのそれのように「従量式SIMVでフローシンクをONにすると、その一回換気量でPRVCになる」みたいな機能と考えてよいのでしょうか?また、PRVCとマシンボリュームがあれば、あえてオートフローを入れる必要がないようにも思えますが、どのような必要性を考えているのでしょうか?
(9) 内部コンプレッサーについて。Tバードとその後継機については、タービンの回転を制御することで吸気流速をコントロールしておりましたが、AVEAのコンプレッサーは単に圧縮空気を作るだけなのですか?それともパイピングに比べ性能的に積極的な利点があるのですか?また、音量と音質について、Tバードとの比較データがあれば教えてほしいのですが・・・。
(10)トリガーについて。圧トリガーとフロートリガーは、切り替え式なのですか?それとも、ベアー1000のように統合制御(?)しているのですか?
(回答)
1
タイムサイクルプレッシャーリミット。新生児用のデフォルト設定(新生児のみ使用可)。
2
基本的にバードがベアーを吸収したようなものなので、VAPSの通りに自発呼吸の吸気流速が強制換気の吸気流速(漸減波)と一致した時点ですでに設定換気量を吸気していた場合は吸気が終了する。(と説明されたが、マニュアルにはPCVのターミネーションに従うと書かれてある。その意味ではむしろプレッシャーオーギュメントに近い??)。
3
AACは吸気のみに作用する。気管チューブの長さのみでなく、ガス組成や酸素濃度、咽頭湾曲率(新生児/小児/成人の3種類)による影響も考慮しているが、それらの与える影響の程度は不明。根拠や計算式も明らかにされていない。
4
始業点検で、リークテストの他にコンプライアンス補正と酸素濃度校正をかけている。
5
呼気には付いている。吸気の換気量も表示できるので、吸気にも付いているのだろうが、未確認。
6
VIPバードより性能が良いらしい。価格的にもバッティングするので、売り方に困っている。
7
まあ、実際は150LPM+α程度でしょう。(その後、実際に吸ってみたら198lpmは出るようなので、200lpmというのは正しい記載だろう。もっとも、そのときは気道内圧がかなりの陰圧になっていたので、その換気が適切かどうかという点については疑問がのこる)。
8
ドレーゲルのオートフローと同様。ということは、PRVCとも同様。
9
もともと、在宅用の機械のために開発したスクロールコンプレッサーを、搭載してみたかったというのが本音らしい。性能的には単に圧縮空気を作るだけで、それ以上のことはしていないよう。当然、パイピングに比べて優位な点もない。(もっとも、音はそれほど大きくなく、パイピングでもコンプレッサーでも最大ピークフローは同じだった。)
10
残念ながら(?)、ベアー1000のような統合制御。フロートリガーの感度はすぐ調整できるが、圧トリガーのほうはアドバンスモードでないと調整できない。しかし、実際の気道内圧をみると、今のところほとんど圧トリガーで作動しているような気も。トリガーに関しては、おおいに不安が残る。
デザインや色使いが、アメリカ製らしからずお洒落なアヴェアであるが、パステルカラー故か、若干大柄に感じられてしまう。しかし、狭い場所での取り回しには少々気を遣うものの、大き目のキャスターや長めの足のせいか見た目と違って重心も低く、他機種と比べて特に移動に苦労するというほどではない。
操作は、画面にタッチして変更する項目を選択し、ジョグダイヤルで設定を変更し、確定ボタンで確定をするという、エビタ4/XLやサーボi(もっとも、これらの機種は確定ボタンがジョグダイヤルと一緒であるが)、ベネット840などでおなじみの操作方法である。ジョグダイヤルの隣にある決定/取り消しボタンは、他のボタンとサイズや色が同様なので少し使いづらく感じるが、設定ボタンについては画面表示自体をタッチしても確定できるので、実際の使用上はあまり困ることはない。タッチパネルは応答も良く(なんでも、マクドナルドのPOSに使われているのと同じデバイスだとか)、反射も少ない。また、視野角も広く、ディスプレイ部分は左右方向に180度回転させられるなど、使い勝手も優れている。欲を言えば、下向きにもう少し傾けることが出来たらベスト。今の角度では、椅子に座りながら設定をするときにはちょっと足りない(まあ、そういう使い方をすること自体、あまり無いだろうが)。呼吸回数など一部の設定項目では、ジョグダイヤルが敏感すぎる気もするが、ほとんどの設定においてジョグダイヤルと設定値がリニアに変わるので、使用中の違和感は少ない。グラフの軸や数字表示など、画面表示自体の変更も同様に直感的に行える。数字表示の項目も、非常に多くの測定値の中から選択できるのだが、中にはアメリカ版の食道内圧測定機能を前提とした項目もあり、バイコアのCP100がすでに入手できない現在、日本版で食道内圧測定機能が無くなったことは非常に残念である。マニアックな設定項目については「アドバンス設定」として別にボタンを設け、そのボタンを押したときだけ設定項目が表示される(しかも、例えばトリガー感度を選択するとそれに関連がある項目のみ表示されるという感じで)というようにして、多機能をなるべくわかりやすくする工夫がなされている。これは、裏を返すとそのような工夫をしなくてはいけない程に多機能ということでもある。
他の人工呼吸器と違う点は、ヘリオックスガスというガス密度の低いガスを使用できるという点くらいで、それ以外の機能は今までバード社やベアー社、またエビタシリーズやサーボシリーズなどで見られたものがほとんどである。しかし、それら他メーカーの機能でアヴェアに搭載されていない機能は無いというくらいほとんどの機能が、この機種には搭載されている。流行のバイレベルCPAPをはじめ、PRVCやプレッシャーオーギュメント、オートフローや(A)TCなど。もちろんPSVのターミネーションクライテリアや立ち上がり速度も調節できる(さすがに、ニューポートe500のような自動調節ではないが)。コンプライアンス補正も、自動補正以外にも、その回路の過去の測定値を覚えておけば以後は直接その値を入力できる。人工鼻と加温加湿器を選択することで呼気換気量の補正も行うし、リーク補正機能があるのでマスク換気も行える。トリガーはフロートリガーと圧トリガーの統合制御だが、オプションの口元フローセンサーを使用すると新生児にも使用でき、そのときの性能は小児専用機のVIPバードを凌駕するともいわれている。分離肺換気の際に、2台を同期して使用することも出来る。24時間のトレンドも表示できて、しかもイベントまで記録できる。ワンタッチで100%酸素(これは、新生児の場合を考慮して、100%以外の濃度も設定できるらしい)投与とアラームのオフが同時にできる「吸引ボタン」もあるし、P100(P0.1)やオートPEEPも測定できる。しかも内部バッテリーで最大30分(コンプレッサーを使用しないときは最大2時間)の使用が出来、コンプリには小型スクロールコンプレッサーまで内蔵されている・・・。これで、実売価格が競合他社より低く設定されているのだから、スペックだけ見ていると超お買い得機ということになるのだが・・・。
実際に患者に使用してみると、まず気になったのがPCVやPSVの立ち上がりのゆっくりさ。立ち上がり速度を最大にしても、ゆっくりと立ち上がる。それで不都合があるというわけではないのだが、どうも気になってしまう。最初に試したモードはBiPhasic(BIPAP)だったのだが、競合他社のものとは違ってfという概念が無い。高いPEEPと低いPEEPの持続時間の関係で、結果として回数が決まる、ということ。別に、1回の呼吸サイクルで60秒を割って割り切れなければいけないという決まりもないし、慣れればこれはこれで良いかもしれないが、PCSIMVのような使い方をするときは、「換気回数をきちんと決められない」というのは、違和感はあった。まあ、PCSIMVの吸気もセミオープンバルブで制御されているようなので、BiPhasicはあくまでも本来のBiPAPとして使用するのが正しい利用法かもしれない。高いPEEPと低いPEEPの切り替えは、自発呼吸の吸気/呼気に合わせて行われるが、それをシンクロさせるウインドウ時間はアドバンス設定でいろいろ設定できる(シンクロしないようにも設定できる)。BiPhasicで高いPEEPにPSをかけるかかけないかを選択できる点は、自由度が高い。AAC(ATC)もドレーゲル同様PSと同時に作動させることができる(もちろん、使用するかどうかを各々別個に選択できる)。ただ、ドレーゲルのそれと違って画面には計算値が表示されないので、実際どれだけ効果があるのかはわからない(というか、ありがたみを実感できない)。
PCSIMVでも、フローサイクル機能により、自発呼吸に同期した強制換気の場合は吸気の終了を患者のそれと同期させることができる(デフォルトではOFF)。この機能とPRVC,またはフローシンクを組み合わせることにより、一回換気量を保障しながら自発呼吸と同期した従圧式強制換気を行うことが出来る。
従圧式換気では、一回換気量を保障する方法としてもうひとつ、マシンボリュームという機能がある。まあ、動作自体はベアーのプレッシャーオーギュメントと同様なのだが、従量式換気にはフローシンク(ドレーゲルのオートフローと同様)が加わったため、マシンボリュームは従圧式換気で作動するようになっている。しかし、従圧式換気で一回換気量を保障する方法としてすでにPRVCもあることだし、マシンボリュームでは時に気道内圧が設定圧より上がってしまうので、あえて従圧式換気の補助として使用する必要を感じなかったりする。やはりこれは、「従量式換気で、吸気フローの不足を補う」という本来の使用法で使用するのが一番良いだろうし、その意味では前述の通りもはや必要性のあまり無い機能なのかもしれない。
麻酔中のように、患者の意識が無い状況下ではPRVCは安定して動作した。しかし、意識のある患者の場合、気道内圧がどれだけ変動するかについてはよく判らない。
使い勝手の面では、当初予想したとおり、ダイヤルの回転にクリック感が無いので、PIPなどで微妙に設定値を調節するときなど少々使いづらい点もあった。
実際使用してみて一番気になったのは、やはりトリガーである。この機種はフロートリガーと圧トリガーの併用との事だが、圧トリガーのデフォルト値が3cmH2Oなので、実質的にはフロートリガーでの作動を前提としているようである(ちなみに、デフォルトのベースフローは2lpmで、センスフローは1lpm)。しかし、肺からのリークがある患者のようにフロートリガーで心配のある状況もあるわけで、そのような時に異常な設定にして(センスフローをベースフロー以上にするとか)フロートリガーを殺さない限り圧トリガーのみで使用出来ないというのは、精神衛生上あまりよろしくない。しかも、今どちらのトリガーで作動しているのかがわからない。設定上はフロートリガー優位のはずだし、ベースフローも流しているのでデマンドタイプのフロートリガーではないはずなのだが、なぜか吸気のはじめに気道内圧の落ち込みがある。そこで、試しに圧トリガーを1.0cmH2Oと敏感にして、フロートリガーの方は鈍くしてみた。圧の落ち込みのほとんど無い、一見普通の自発呼吸のような呼吸が10回/分程度で出現し、PSVでも普通に換気しているようにみえて、喜んでいたら、実はそれはオートトリガーだったりして、・・・。正直、トリガーについてはいまひとつしっくり来なかったというのが正直な感想である。もう少し時間をいただいて、呼吸の弱い患者とかいろいろ使ってみないと、なんとも言えない気がするが、本国アメリカでは食道内圧を測定して、それを利用してトリガーさせているとか。だとすると、もともとコンベンショナルなトリガーについては、あまり力が入っていなかったのでは?などと意地の悪い勘ぐりをしてしまいたくなったりして・・・。
この機種は、面白いことに同じアメリカ製のニューポートe500とは対極にある機種だと思う。ニューポートの方は、機能を絞り、自動化を進め、調整範囲を制限して、普通の医師が普通の患者に使うのに最も良いベンチレータを目指している。一方アヴェアは、設定項目を開放し、知識のある医師が普通でない患者に使う場合にも、対応できる可能性を残している。しかし、マニアックな設定項目や設定範囲(一体、吸気時間を1/100秒単位で設定する医師なんて、居るのだろうか?)、ほとんど不必要ともいえる機能など、私も含めた多くの医師は、アドバンスモードを開いただけで途方に暮れてしまうことだろう。幸いマニュアルが比較的読みやすく出来てはいるものの、この機種の使いこなしについて(丁度、一眼レフデジカメにあるような)副読本があっても良いのではないか?と真面目に思ってしまうほどだった。ヘリオックスガスを使用できるのは、今のところこの機種しかないし、一部のマニアックな(この機種の機能を見て、使いこなしてやろうと思うような)医師には、これ以上「使いで」のあるベンチレータはなかなか無いだろう。しかし、個人的にはベネット840やエビタと比べ、アヴェアの使用「感」にはまだ信頼性までは感じられない。比較的長い期間、いろいろな状況で、いろいろな患者に使用してみて、初めてわかることもある。今、アヴェアに足りないものは、そのような実績の積み重ねだと思う。
AVEAについての素朴な疑問あれこれ
(1) 換気モードのうち、TCPLとは何でしょうか?カタログ本文には説明されていない様ですが・・・
(2) マシンボリュームについて。VAPSやプレッシャーオーギュメントは「従量式換気のフロー不足を補うために、自発呼吸の吸気流速が従量式換気の設定吸気流速以上のとき作動して、PSV(PCV?)レベルまで圧が上がり、自発呼吸の吸気流速が従量式換気の設定吸気流速まで落ちた時点でそれまでの吸気量と設定一回換気量を比較し、それまでの吸気量が設定一回換気量より少ないときは設定吸気流速で不足分を送気、すでに設定一回換気量以上吸気していたときはそのまま呼気に転じる(VAPS)か、設定ターミネーションクライテリアにて呼気に転じる(プレッシャーオーギュメント)」と理解してましたが、マシンボリュームではどの時点で設定一回換気量と比較するのでしょうか?また、すでに設定一回換気量をクリアしていた場合の吸気終了はいつになるのでしょうか?
(3) AACについて。他社の(A)TCでは「気管チューブの抵抗を相殺する」と言われてましたが、AACも基本的に同じ役割を持つと考えてよいのでしょうか?チューブ先端圧の低下を強調してましたが、(A)TCのように吸気流速によって補助を変えているのでしょうか?ATCの場合は吸気のみでなく呼気においても先端圧の制御(呼気流速を見ながら、回路内圧を低めにする)を行ってますが、AACはどうでしょうか?また、他社は(A)TCにおいて「(気管切開は別だが)気管チューブの長さの影響は無視できる」と公言してますが、AACで気管チューブ長を入力する根拠があれば教えてください(たとえば、これだけ効果が違ってくるというデータとかあれば・・・)。
(4) コンプライアンス補正は、始業点検のようなときに行うのでしょうか?
(5) フローセンサーは(小児用のオプションを除くと)吸気と呼気で2個付いているのですか?それとも1個で間に合わせているのですか?
(6) 小児用口元フローセンサーを使用した場合の性能は、VIPバードと比べてどちらが優れているのですか?
(7) アキュムレーターを内蔵して、200LPM以上のガス供給を可能にしたと書かれてますが、スペック表ではピークフローが150LPMとなってます。実際はどれだけ換気が出来るのですか?
(8) スペック表の「フローシンク」について、本文に詳しい説明がありませんでした。「オートフローと呼ばれることもある」、とも書かれてますが、ドレーゲルのそれのように「従量式SIMVでフローシンクをONにすると、その一回換気量でPRVCになる」みたいな機能と考えてよいのでしょうか?また、PRVCとマシンボリュームがあれば、あえてオートフローを入れる必要がないようにも思えますが、どのような必要性を考えているのでしょうか?
(9) 内部コンプレッサーについて。Tバードとその後継機については、タービンの回転を制御することで吸気流速をコントロールしておりましたが、AVEAのコンプレッサーは単に圧縮空気を作るだけなのですか?それともパイピングに比べ性能的に積極的な利点があるのですか?また、音量と音質について、Tバードとの比較データがあれば教えてほしいのですが・・・。
(10)トリガーについて。圧トリガーとフロートリガーは、切り替え式なのですか?それとも、ベアー1000のように統合制御(?)しているのですか?
(回答)
1
タイムサイクルプレッシャーリミット。新生児用のデフォルト設定(新生児のみ使用可)。
2
基本的にバードがベアーを吸収したようなものなので、VAPSの通りに自発呼吸の吸気流速が強制換気の吸気流速(漸減波)と一致した時点ですでに設定換気量を吸気していた場合は吸気が終了する。(と説明されたが、マニュアルにはPCVのターミネーションに従うと書かれてある。その意味ではむしろプレッシャーオーギュメントに近い??)。
3
AACは吸気のみに作用する。気管チューブの長さのみでなく、ガス組成や酸素濃度、咽頭湾曲率(新生児/小児/成人の3種類)による影響も考慮しているが、それらの与える影響の程度は不明。根拠や計算式も明らかにされていない。
4
始業点検で、リークテストの他にコンプライアンス補正と酸素濃度校正をかけている。
5
呼気には付いている。吸気の換気量も表示できるので、吸気にも付いているのだろうが、未確認。
6
VIPバードより性能が良いらしい。価格的にもバッティングするので、売り方に困っている。
7
まあ、実際は150LPM+α程度でしょう。(その後、実際に吸ってみたら198lpmは出るようなので、200lpmというのは正しい記載だろう。もっとも、そのときは気道内圧がかなりの陰圧になっていたので、その換気が適切かどうかという点については疑問がのこる)。
8
ドレーゲルのオートフローと同様。ということは、PRVCとも同様。
9
もともと、在宅用の機械のために開発したスクロールコンプレッサーを、搭載してみたかったというのが本音らしい。性能的には単に圧縮空気を作るだけで、それ以上のことはしていないよう。当然、パイピングに比べて優位な点もない。(もっとも、音はそれほど大きくなく、パイピングでもコンプレッサーでも最大ピークフローは同じだった。)
10
残念ながら(?)、ベアー1000のような統合制御。フロートリガーの感度はすぐ調整できるが、圧トリガーのほうはアドバンスモードでないと調整できない。しかし、実際の気道内圧をみると、今のところほとんど圧トリガーで作動しているような気も。トリガーに関しては、おおいに不安が残る。
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