金木犀が

少し肌寒くなる頃、
いつもこのにおいがする。
すごくすごく好きなにおい。
でもすごくすごくせつないにおい。

いつも哀しいときにこのにおいがして、
思い出しては泣きたくなってた。
苦しくて泣きたかった。

でも今年は違った。

相方と久しぶりにでかけた晴れた日曜日に
そのにおいをかいだ。
でかける途中でも帰り道でもなく、
相方と一緒のときに。

ねぇ、金木犀のにおいだよ。
今年は遅いって言ってたよ。
でもいいにおいがする。
ほんとだ。

ああ、なんでだろ。

ただそれだけで、もう哀しいにおいではなくなった。
いろんなとこでこのにおいがすると、
なんだかうれしくて、落ち着く。
今何してんだろう？って思ったり
声が聞きたくなったり。

ああ、不思議だね。

今日はいろいろ怒っちゃったんだけど、
走ってきてくれたことにびっくりして、
息を切らしたまま手渡してきたチョコがおかしくて、
ほんとはそれでもうよかった。
でも怒るとこは怒らないとね。

楽しかったんだって聞いて、
うちもうれしかったんだ。
そんでほんとに好きだなあと思った。

もう少し金木犀ににおいが続けばいいなと思った。