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ミケマル的 本の虫な日々

映画『ロスト・キング』


 YCAM(山口情報芸術センター)のワイカムシネマで映画『ロスト・キング』を見ました。
ここは映画館の無い山口市で映画が見られる貴重なところです。
ちょっと個性的な映画を上映しています。
単館系映画というのかしら?

『ロスト・キング』は実話を元にしたもの



 シェイクスピアが描いた『リチャード3世』
この中で、リチャードは生まれつき背中が曲がっていて足も悪く、そして性格も暗くて、兄の王が死んだ後に自分が王を継承したいために、甥の王子二人をロンドン塔に入れて殺した酷い王として描かれています。
そして、そのイメージが定着しているけれど、本当にそうなんだろうか?と思う人も。
昔読んだ『時の娘』という本もそのイメージは後のチューダー朝の画策だったのでは?そして、本当のリチャード3世は全く違う人だったのでは?ということが書かれていたそう。私はすっかり忘れてしまいましたが。

 スコットランドのエジンバラに住むフィリッパ・ラングレーはリチャード3世の劇を見たことをきっかけに、リチャード推しになるのでした。
彼女は2人の息子を持ち別居中の夫と一緒に育てているのだけれど、持病もあって仕事も評価されずに色々とストレスがある生活。
そんな彼女がリチャード3世の真相を解明し、その行方不明だった遺骨を見つけるべく奮闘するの。
リチャード3世はスコットランドとの戦いの場で戦死して、遺骨は行方不明となっていた。

 自分の直感と信念と情熱を信じて進む彼女を描いているのだけれど、家庭もあり、体の事情もあり、資金の問題もあり、全く順調では無い中の奮闘。
女性であること、病気のハンデ、専門家との葛藤などなど、色々な問題を描きながらも、淡々と進んでいくのがイギリス映画のいいところだな〜好きだな〜と思いました。
そして、旅行で行ったスコットランドのエジンバラの街やお城の風景も美しく懐かしかった。

 フィリッパの別れた夫がすごく紳士的でいい人なのが、めちゃくちゃ良かった。
彼のフィリッパへの対し方が、言ってることがわからないけど全否定はしないというところから、協力的に励ますところまでに変わっていくんだけど、最初から最後まで一人の人間として尊重しているところが素晴らしい(当たり前のことですがなかなかできない)
2人の息子との関係もよかった。
そして、映画全体に感じられたのがイギリスらしいジョークとウィット。
真面目なテーマだし、社会の仕組みに対するモヤモヤもあるけれど、所々で笑わせてくれるので重くならない感じでした。

 とても面白くて勉強になった映画でした。
実際にフィリッパの働きにより、リチャード3世の遺骨は見つかり、正式にレスター大聖堂で葬儀が行われ再埋葬され、フィリッパはエリザベス女王から大英帝国勲章第5位を授与されたそうです。

 同じ建物の中の市立図書館で関連書籍として『リチャード3世は悪人か』(小谷野敦著)を借りてきて、ざっと読みました。
この中でシェイクスピアの戯曲と史実の違いなどが書かれています。



 この時期のイギリスの歴史的な資料が少ないそうで、次に王位を継いだヘンリー7世は別系統のチューダー朝を形成したので、リチャード3世を意図的に悪人として語り継いだとも考えられる。
そして、それをもとに100年後にシェイクスピアが戯曲を書いた。
というのがリチャード3世のイメージだったそうな。
実際のリチャード3世は珍しく庶民に人気があったそうで、もしかしたら良き王だったのかもしれません。
しかし、即位して程なく戦争で亡くなってしまうのでした。
500年後にきちんと王として埋葬されて、その正統性を再認識されてる過程を知ることができて興味深かった!

 山口じゃ映画見られないと思っていたけれど、ワイカムシネマはこれからも面白そうな映画を上映するようなので、また楽しみです。


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コメント一覧

ミケマル
あおいちゃん
多分あんまり商業的じゃない映画なのかな?
でも、面白かったから、配信とかあったら観てみて!
sakunoaoi
これ、私も見てみたかったけど見逃してしまった作品です!
…というのもすっかり忘れていました(汗)。
上映場所が限られていてなかな時間も合わずに過ぎてしまった
んだった…。思い出させてくれてありがとうございます!
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