「口に出せない本音」

誰しもある、人には言えない自分だけの思いや本音につき、45歳の弁護士M・Nが告白・独白する、毎週掲載予定の連載エッセイ。

「日本と原発と私」

2015-12-04 08:23:48 | 第6話
早朝の白い砂浜に私は一人立つ。
寄せては引く白い波が妙に切なく見える。
目には見えないが、このふるさとの青い美しい海に、人間を内側から破壊して殺すほど有害な放射能が、どれだけ混じっているのだろう?
事故から4年たっても汚染水がたれ流され、そんな海で取れる魚が本当に安全なのか?
実はそれさえよく分からない。

何十万人もの人が懐かしいふるさとを捨てざるを得なくなり、多くの人々が今なお不自由な避難生活を強いられて関連死も後を絶たない。
地元の農業、漁業や畜産は壊滅的打撃を受け、復興への道のりは極めて険しい。
私たち大人はまだいいが子供たちへの悪影響は特に大きく、私たちの大切な子どもたちの身体を、目に見えない放射能が内側からじわじわ蝕んでいるかもしれない。
それもこれも全て原発のせいなのに、なぜ日本に原発が必要なのか?

CO2は出さなくても殺人的な放射能をこれほどまき散らせば、クリーンなエネルギーと言えるわけがない。
事故と廃炉を考えれば、コストも他の電力より安いどころかはるかに高い。
1電力会社の事故に、国民の多額の血税が平気で投入されるのも信じがたい。
T電の社員が税金で一般人よりはるかに高給を得ているのは一体なぜなのか?
原発が1基も動いていなかった去年の最も電力需要が高い真夏にも、大した節電などしなくても国内の電気は十分足りた。
それなのに原発が必要なのは、実は日本という国ではなく、いわゆる「原子力ムラ」の人々。
原発利権をむさぼる電力会社、原子力官僚、原子力族議員に原子力学界。
電力会社が大スポンサーのマスコミと、原発利権にすがりつく地元の1部の人々。
日本国民ではなく、ごく限られた「一握りの人たち」にすぎない。

4年前から時間を止めたまま、ゴーストタウンになってしまった私の故郷の町。
廃墟のような原発に、隙間なく敷きつめられていく汚染水のタンク。
行き場をなくして荒れ地に山のように積み上げられる、汚染土壌の黒い袋。
私は日本に原発が必要とはどうしても思えない。
いや、これほど科学と文明が発展した現代では、人類には原発は必要ない。
なのに原発利権にまみれた政治は、原発再稼働を強行してしまう。
広島や長崎で悲惨な目にあった日本人は、福島でも反省できないのだろうか?

このきれいな青い海も、中身はどれだけ汚れてしまっているか分からない。
ふるさとの海に大量の放射能をまき散らした原発を、
美しい国を汚して大勢の国民を不幸にした原発を、
日本が本当に必要としている訳がない!
よく分かってはいるが、何もできない自分の無力さに唇をかみながら、引いては寄せる白い波を私はただぼんやり眺めていた。


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3 コメント

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日本と原発と私を読ませて頂いて (白石えつ子)
2016-01-12 10:41:33
心して詩を読ませて頂きました。原発に群がる自分の利権しか考えない人達。目にみえないものをみようとする力養っていきたいです。物が唯一でなく心が唯一の世の中にと願っています。
福島の現状、子ども達の甲状腺ガンの可能性など東村山から声に言葉に伝えていきます。
これからもよろしくお願いいたします。
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Unknown (ひみこ)
2016-01-13 19:35:54
ありがとうございますm(__)m
シェアさせていただきます
http://ameblo.jp/894839
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お礼 (弁護士M・N)
2016-01-15 10:03:52
コメントとシェアありがとうございました。
子供たちの健康で明るい未来のためにも、脱原発を早期に実現して行かなければと考えています。
今後ともよろしくお願いいたします。
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