百姓修業中。

山里に受け継がれてきた人々の営みと思い、大切なものを受け継いでいくために…
熊野の山里・色川を拠点に試行錯誤中です。

春の息吹

2008-01-24 00:13:08 | Weblog
21日は大寒。
1年でいちばん冷え込む時期とされる、今日この頃。
南紀とはいえ、色川は山の中なので、それなりには冷える。

事務局も、朝起きて部屋の気温を見ると、2度…とか、0度…とか…
夜の会合がない日は、練炭で夕飯をこさえて、夜は部屋に火鉢を置いて
湯を沸かして湯たんぽに入れて…残った火でお芋を焼いて… そんな日は、
すきま風だらけの家だけれど、一酸化炭素対策として 念のため窓を少し開けていても、
朝の気温が5,6度くらいあって、「あぁ今日はぬくといな」と感じる。

昨年まで、20年間 横浜の気密性の高いマンションで育ち、
「15度!?うわー寒い」→設定温度22度の石油ヒーターに着火
という環境だったのが、夢のよう。
でも、意外と辛くないもんです。

小学生のときから、冬は毎年、手の甲が荒れて
いくら保湿クリームを塗ってもひび割れていたけれど、
今年は ときどき思い出してゆず種化粧水を塗る程度で、しっとりすべすべ。
一人暮らしになって、水を触る機会は確実に増えたはずなのに。
瞬間湯沸かし器がなく、基本的に冷たい水のみ、石鹸もあまり使わない…
という暮らしで、手の脂分が保たれているのだろうか。

いわゆる「快適」な暮らしではないかもしれないけれど、
慣れてしまえばこれが当然、苦にもならないし、
かえって体のためにいいような。

さて。
そんな寒さのなかでも、季節は確実に春の準備をしているようで。


たんぽぽが咲いたり、
(こっちのたんぽぽ白いんですね、関東人の事務局にはカルチャーショックでした)


梅がほころんだり。
(この梅、数日であっという間に花盛りになりました)

写真撮り忘れてしまったけれど、すでにふきのとうも食べ始めてる。

冬至のころは、5時のチャイムを聞くころには外仕事をやめなければならなかったけれど
最近は、5時半くらいまで畑にいられるようになった。
朝 明るくなるのはまだまだ遅いけれど、日が長くなったなぁと実感する。

季節の移り変わりに敏感になったのも、こっちに来てから。
寒さの盛りには、すでに春の息吹が感じられるからこそ、耐えられるんだなぁと思う。

たくあん用の大根ひき:1月9日

2008-01-23 23:38:47 | Weblog
色川のなかでも、もっとも多く もっともおいしいたくあんを漬けるといわれるご夫妻。
その技を盗むべく、塾生はこの日 大根ひきをお手伝いに参上。



ひいた大根は、そのまま畝の上でしばらく乾かしてから
葉っぱをわらで縛って、4本ずつの束にする。
それを、水で洗って、
 手、冷たい。腰、痛い。

干す。
 美しい。

夜や雨の降るときは、上に毛布とシートをかぶせて
干すこと半月あまり。
次は、干しあがったころ 漬けるところをお手伝いに行く予定。

「干しあがったころ」とはいえ、
漬ける塩分の加減によって、ほどよい干し加減は変わってくるのだとか。
(塩分控えめなら干しかたは浅く、しっかり漬けるなら干すのもしっかり…)

そして、塩分の加減は、「いつごろそのたくあんを食べたいか」によって変わってくるのだとか。
(早く食べるなら塩分控えめ、古漬けにするなら塩分高め)

いつごろ、そのたくあんを食べるか。
夏場は、キュウリやなすび、うりのぬか漬けがおいしいから
たくあんにはそれほど手が出ないだろう。
夏野菜が終わる9月、10月ごろにひきあげると喜ばれるのでは…
そこまで想像力を働かせて、漬けるのだという。

毎年 同じことを繰り返しているようでいて、
干し方・漬け方も、決して毎年同じではない模様。
今はやっていないけれど、洗わずにわらでこすってみたり、
葉っぱの芯をかきとってみたりしていた時期もあるという。
ぬかはふだん自分のところでとれたお米のものを使うけれど
一度足りなくなってよそで買ってみたら、やっぱり味が違う…とか、
漬ける前にぬかを日に干すのだけれど、干しすぎるとまた香りが変わる…とか、
ウン10年のベテランでも、その時その時によって
失敗することもあれば、工夫してやり方を変えることもあるという。

百姓の営み。
祖母、母からの味をそのまま引き継ぐ部分も もちろんあるだろうけれど、
自分なりに工夫をこらして、前の反省を次に活かして、
少しずつ変えていく部分も大きいようで…

私たちも、ただ教えていただくばかりではなく
基本を押さえたら、自分で実際にやってみて、
試行錯誤しながら 自分なりのものにしていかなければ。
そうしてこそ、生きたかたちで 百姓の営みを受け継ぐことになるんじゃないか。

お弓取り、そしてなれ寿司:1月2日

2008-01-23 18:23:19 | Weblog
1月2日、中学校のグラウンドにて、「お弓取り」があった。

かつて、色川内の各集落でお正月に行われていたという、豊穣祈念の神事。
戦後いったん途切れたけれど、学校のある大野集落では30年ほど前に復活、
今も 地元住民と移住者とで構成される「お弓保存会」の方々を中心に、毎年続けられている。
6名の男性が、交替で矢を射るのだけれど
今回は、塾生唯一の男性も参加させていただき、皆でその雄姿を見学に。



以前、この神事を県の無形文化財か何かに指定したいという話がもちかけられたとき
大野集落の人たちは、その話を断ったという。
山村での日々のくらしがきちんとベースにあって、その上にあった神事。
その、ベースの部分はろくに守られもしないのに
お弓の形だけ残してくれ、なんて無茶な話! ということだったらしい。

復活当初は、地元の元気で熱心なおじさんたちが仕切っていて
弓を射る一挙手一投足に細かくチェックが入り、
装束の下に防寒用の下着を着るのもダメ、神事中の私語なんてもってのほか!
という、かなり厳格なものだったそうだけれど…
今や、地元のおじさんたちは年を召されて引退。
移住者や、地元のなかでも若手(といっても60前後)の人が中心になっていて、
だいぶそこらへん、ゆるやかになってきている模様…

さて、お弓の神事が終わった後、午後は
先月12日、なれ寿司を習いに行ったお宅へ。
3週間経って、完成したなれ寿司を試食することに。

塩水の中で熟成したなれ寿司は、仕上げに
「逆押し」といって、桶ごとさかさまにして、
軽い重石で2~3時間 水をきり、落ち着かせる。

これが、逆押しの終わった状態。


取り出して、お皿に乗せる。
これが、3週間ぶりに対面する完成品…


なんといっても塾生にとっては、人生初のなれ寿司。
勧められるままに、七味醤油で食べてみると…
思っていたより、ずっとくせがなく、食べやすかった。
教えてくださった方によれば、これでも多少なれすぎで
初心者にはどうかな? と思っておられたそうだけれど、
全員 おいしくいただくことができた。
次は自分たちで作ってみたい!

今年もよろしくお願いします

2008-01-23 12:07:06 | Weblog
例によって、更新が遅れておりますが
今更ながら 百姓養成塾のお正月について…

元旦。
事務局は牛当番なので、6時半に家を出て、
自転車+徒歩で約30分離れた、ゆりの待つ牛舎へ向かう。
色川は、山間にあるので 日の出が遅い。
ゆりと一緒に初日の出が見られるかなーと思いきや…
のんびり干し草を刻んでいるうちに、お日さまあがってしまった。


2008年、初のお日さまを背に浴びて、えさを食べるゆり。

最近のゆりの食事内容は、
干し草中心に 青草少々(暖冬につき、まだ多少は刈れている)、
時により 大豆ガラ(乾燥)、さつまいものつる(乾燥)、小麦フスマ。
正月くらいは、ちょっといいものを食べさせてあげたいと思い
朝は、人間の食用には向かない くずの里芋とさつまいもを持参。


気に入っていただけたかしら。

ちなみに、彼女のお家には…

手作りのしめ縄が飾られている。

ゆりに朝ごはんを食べさせた後、帰宅して ようやく自分の朝ごはん。

見よ! 題して「0円おせち」。
あるもので作り、特別に買い足したものは一切ありません。

一の重。縁起もの。


1.きんとん2種。
 さつまいもベースのものと、かぼちゃベースのもの。
 いずれも、七輪で蒸して潰して、
 昨年豊作だった栗で正月用に保存しておいた甘露煮を砕いて合わせました。
 さつまいもも、かぼちゃも、そのものが十分に甘かったので
 砂糖は入れず、栗の甘露煮の汁も足さず。

2.かぶの紅白漬け。
 ラディッシュの甘酢漬け(ゆず酢+栗の甘露煮汁)と、
 白いかぶの塩もみ(ゆず皮トッピング)。

3.煮豆。
 …黒豆は作らなかったので、豊作だった落花生を下ゆでして
 栗の甘露煮汁+醤油で味付け。

4.こぶまき。
 たまたまいただき物で、にしん煮の真空パックがあったので
 戻しただしこぶで巻いて、ちょっと煮含めて。

5.たつくり。
 たまたまいただき物で、ごまめがあったので
 七輪で炒って、砂糖+みりん+醤油をからめて、一味とごまをふって。

二の重。酢の物。


1.さんま寿司。
この地方を代表する郷土料理。
脂ののっていない、ここ勝浦のさんまだからこそ、おいしくできる。
今の感覚じゃ、さんまは すぐそこの勝浦港で山のようにあがる安い大衆魚、だけど…
かつての色川では、引き売りさんが自転車で売りに来る丸干しのさんまを
1尾買って、家族で分けあったとか、
生のさんまなんて、年に1回、お正月しか口に入らないごちそうだったとか。
塾生も、ふだん食べるのはお野菜ばかりで わざわざお魚を買ったりしないので、
このさんまも、研修時のいただきもの…

2.めはり寿司。
やはり、この地方を代表する郷土料理。
この高菜は、昨春 塾が始まった頃にいただいて、ぬかに漬けておいた古漬け。
すでに畑には高菜ができてきてるので、
それを新しく塩漬けにしたら、鮮やかな緑色のめはり寿司になったんだけど。

3.なます。
甘酢にはゆず酢を配合し、ゆず皮トッピングで。

三の重。煮物。


さといも、にんじん、大豆、高野豆腐、干し椎茸、昆布。
一瞬ちくわのように見えるのは、しわしわになってしまった小さいにんじん…

おせちとお餅、
それに大家さんからいただいたお雑煮(大晦日につぶした廃鶏+小松菜)で
正月気分を満喫。ごちそうさまです。

自分ばかりごちそうを食べていては申し訳ないので、
ゆりの夕ごはんには、「牛はアレがどえらい好きなんや!」とかねてから聞かされていた
「味噌汁」を作ってみた。
(夏作った麦味噌を水で溶いて、くず里芋を入れただけだけど…)
そしたら、本当に喜んで飲んでくれて、ほっ。

というわけで、塾生にとってもゆりにとっても、ごちそうに恵まれた よいお正月でした。

年末の過ごしかた

2008-01-09 07:55:12 | Weblog
12月も下旬に差し掛かると、年末ムードが色濃くなってくる。
会う人会う人、「帰らんのか」と聞いてくるけれど、
百姓としての年末年始の過ごしかたも、勉強のうち。
塾生はみな、里帰りせずに、色川で年越しを迎える。


12月22日、餅つき。

色川ではないのだけれど、同じ那智勝浦町内に 20数年前に移住してきて
自然農法を続けてこられた方がいて、
その方の玄米もちが ここら一帯ではちょっと有名。
武術の心得もある、その方の気迫こもった餅つきを学ばせていただくべく
自分たちの田んぼでとれたもち米を持参。



大雨だったため、やむをえず ブルーシートの下でのもちつきに…
モミやゴミ、虫食いやカビで色づいた米粒などを丁寧により出して、浸水2~3日。
蒸気があがってから蒸し40分、石臼に移して搗くこと200回ほど。
今回、私たちのもち米は 時間の都合で
米粒をよるのも、浸水するのも、中途半端になってしまったけれど…
辛抱強く搗いたら、ちゃーんと玄米もちになってくれて、感動。。


12月26日、しめなわづくり。

棚田を守ろう会のイベントで、11月にしめなわづくりを指導してくれたおじさんのところへ
改めて、わらを持って遊びに行く。
芯を入れて太くなった縄に、七・五・三本のわらを通すのだけれど
お手洗い用には四・五・三(汚さん)、井戸用には二・五・三(濁さん)
なんだとか。

しめなわを作りながら、
「年が明けたら今度は米俵やみのを作ろう」という話で盛り上がる。
おじさんが若かりし日に自作したという、わら製の みのがこちら。



ビニールの雨ガッパと違い、
通気性がよくて蒸れないし、冬は暖かだし…
試着してみると、意外に軽くて動きやすい。
これはぜひ、近日中に作って実用にしてみたい!


ところで年末は、今も門松を飾る家が多い。
ここらの門松の基本は、稲を干す なる木を立てて、竹と椎と松…
「なるたけ始末」の語呂合わせなんだそうで。
けれど、それぞれの家によって、作りかたはさまざま。
この家は、ちょっと凝っていたので思わず記念撮影。



塾生はというと、門松までは作れなかったけれど
自作のしめなわを 玄関、トイレ、自転車、牛小屋に飾った。

30日・31日は大掃除をしたり、おせちを作ったり…
いつもお世話になっている近所のお宅のもちつきを手伝わせていただいたり、
牛小屋の堆肥を切り返したり。
なんだかめまぐるしかったけれど、旧年中にやったほうがいいと思ったことは
無事、だいたい終わらせて、心穏やかに新年をむかえることができました。