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田舎の小さな小さな建築や

木の家 完成まで

一級建築大工技能士検定

2014年06月15日 | 「木の家」完成まで

〇一級建築大工技能士検定  実技試験時間5時間30分 

一級の受験資格・・・ 実務経験7年以上、または二級合格後2年

 技能検定は、「働く人々の有する技能を一定の基準により検定し、国として証明する国家検定制度」です。

技能検定は、技能に対する社会一般の評価を高め、働く人々の技能と地位の向上を図ることを目的として、

職業能力開発促進法に基づき実施されています。技能検定は昭和34年に実施されて以来、年々内容の

充実を図り、平成26年4月現在114職種について実施されています。技能検定の合格者は平成25年度

までに385万人を超え、確かな技能の証として各職場において高く評価されています。

 私も、年齢を重ね伝統構法、在来軸組み構法の入母屋等の振れ隅木を自分で墨付けし、建て方をしたのは

随分前になりますが、近年資格の必要性を感じ、若い大工さんに混じり、「振れ隅木」に挑戦しましたので、

実技試験と、学科試験の私の感想を書いてみたいと思います。

              5時間30分を自分なりに振り分けし、この表を目安に試験に挑みました。

午前

1、製図・・・・・・ 50分・・・描き始めてから図面検査に提出するまで。 (50分を目標に何枚でも描く 40分で提出した人もいた)

2、木ごしらえ・・・・・・ 40分・・・隅木の山勾配をも含め。 (私は山勾配は釿で加工しましたが、他の人は鑿で加工されていた)

3、墨付け・・・・・・ 1時間30分・・・全ての材(つなぎ)も含め。 (これを超えると加工時間に無理がきて、製品の精密さを欠く)

           ※ 墨付けは図面を随時見ながらでは、たぶん1時間30分で終わらないと思われ、図面は頭に叩き込んでおく。

            墨付けの検査は寸法の正確さを求められるので正確な芯墨、長さ、幅、隅木の振れ角度、落ち掛かり勾配墨、

              たるき勾配墨、特に隅木の長さと隅木に書くすべての墨、それと全ての合印を忘れず書き入れ検査に提出する。

● ここで1時間の昼休みになるが、午前中に墨付けを全て終わらせ、午後からすぐ刻み加工に入るようにする。

午後

1、刻み加工・・・・・・1時間50分・・・ねこまで含め全ての加工時間。 (各ホゾ穴はインパクトで、18ミリ木工キリを使用)

2、組立て・・・・・・30分・・・(材が割れることがあるので釘打ち箇所はキリで仮穴を開ける  火打ちは最後に納める)

3、間違いがないかの確認時間・・・・・・10分間・・・柱の峠墨、柱上端の芯墨、柱への垂木の流れ墨8寸勾配墨、6寸勾配墨、

  芯墨、隅木への入中、本中、出中、の書入れ、平垂木、配付け垂木への8ミリ上がりの峠墨、当然のことながら

  矩手(直角)、立ち(垂直)。  その他、合印の忘れがないように良く確認して審査に提出する。

「合格率」

一級の技能検定職種は沢山ありますが、その中でも建築大工技能士検定が最も難易度が高く、平均合格率24~28%位です。

私のときも1級は38人挑戦して合格者8人、21%(時間内に提出できずに5人失格)で、

内訳は38人中、11回目の受験者1人、8回目1人、4回目4人、3年連続5人、昨年も受けた人12人、初めて受験する人15人。

この数字を見ても厳しい検定試験ですが、何とか私は初挑戦で突破することが出来ました。

また私の県では2級技能士検定試験(23人)も同時に同会場で行われましたので、総勢61人で実技試験に挑みました。

 

実技試験は下表の採点項目の合計点が65点以上が合格。

 

                               

 

  一見簡単そうに見えるが先人の知恵が結集されている「振れ隅木」

 

 時間内に提出できなければ審査の対象外で失格、また来年と言うことになります。

家や職場では上手く作れても試験会場では多少緊張もしますので、一回でも多く作って

時間内に提出できるようにし、また仕口や継ぎ手、勾、殳、玄、なども良く理解しておきましょう。

 

 〇一級建築大工技能士検定  学科試験時間1時間40分

問題数 50題(A群25題、B群25題)

学科試験は70点以上が合格。

内容としては、3級と2級、1級を含めた勾、殳、玄、軸組構法の仕口、及び継ぎ手、名称、それに建築基準法等。

大工職に携わっておられる方なら、5年位前までに出題された問題の3級、2級、1級を夜1週間ほど勉強すれば

学科は大丈夫かと思われます。

 

実技試験の注意点

〇指定されている道具以外は会場に持ち込まないこと。予備として車に乗せておくのは良い。

〇指し矩や定規に印を付けたり、自由金(自由定規)も印を付けたり固定をして持ち込まないこと。

〇服装に乱れがないようにし、タオルを首や腰に掛けないこと。

〇大工職人らしい態度で安全作業を心がけ、履物はスニーカー、地下足袋、安全靴。

〇作業時、自分の周りは片づけながら作業をし、終わったら綺麗に掃除をすること。

〇また試験開始前に一人一人の道具箱の中の厳しい検査が行われる。

 以上のような事も採点の対象となるので厳守するようにしなければならない。

 砥石は会場に持ち込んでも良いが、刃物を研ぐ時間はないと思われるので、すべての刃物の研ぎは前日に済ませておく。  

昼休みの1時間は会場から全員外に出されるので、墨付けした材料の確認や大工道具に触れることが一切出来ない。

 

◆1級(最高峰)と名が付けば大工職だけでなく、どの分野でも合格に至るには難しいものです。

大工職人になるには長年に渡り、厳しい親方(棟梁)の指導の下、技術や技能を教わりながら

数多くの住いや建築物を経験し、難題に突き当たり、それを自分で解決し、また違う問題に突き当たる。

これを幾度も繰り返してこそ立派な職人になり、また棟梁にも繋がるのかと思います。

1級大工技能検定の振れ隅木は、木造建築物では最も難解視されているもので、長年建築

大工に携わっている私も、隅木はすべてをマスターするには至っていません。 

プレカットではどうしても出来ない、人の手に頼ざなるを得ない伝統技法の複雑な仕口や継ぎ手、

その中の一つが「振れ隅木」です。

どのような建物のとき隅木が振れるのか、また故意に振らすのか、を含め、

真の日本建築、伝統構法、在来軸組み構法をよく勉強し、また理解し試験に挑まなくては、

言葉が悪いようですが一夜漬同然では合格率が示す通り厳しいものかと思われます。

 

注 これはあくまで「私が受験した感想」です。思ったより案外楽かもしれませんし、また個人差もありますので

   さほど参考にならないと思いますが、検定試験に挑まれる方は頑張って下さい。