貧者の一灯ブログ3

マイペースの自己満のブログです。
人生は、振り返ることは出来ても、後戻りは出来ない…
神戸発信…

歴史への訪問・貧者の一灯ブログ

2024-06-11 | 貧者の一灯ブログ

 

 







むかしむかし、紀の関という関所があり、この関所に近い村
に一人の若者が住んでいました。  

ひどくあきっぽい男で、何をやっても途中で投げ出してしま
うので村人に馬鹿にされていました。  

ある日の事、その若者が山道を歩いていると、羽に矢が刺さ
ってもがいている白鳥がいました。  

若者はその白鳥の羽から矢を抜いてやると、空へ放してやり
ました。  

そのとき白鳥は一声鳴いて、うれしそうに飛び立っていきま
した。  

さてその晩、若者の夢の中で白鳥が現れて、「昼間は危ない
ところを助けてくださり、ありがとうございました。

お礼に、お前さまの願いをかなえてあげましょう」と、言うで
はありませんか。  

若者は少し考えてから、「それなら、きれいでやさしい嫁を世
話してほしい」 と、言いました。  

それから三日後、若者のところへ美しい嫁がやって来たのです。  

嫁さんはとてもいい嫁さんで、家の仕事も畑仕事もがんばり、
そして若者をとても大切にしました。  

けれども若者の方は、嫁さんよりも鳥やけものの狩りに心を奪
われるようになりました。  

そしてある日のこと、若者は嫁さんにさんざん小言をいったあ
げく、空に向かって叫びました。

「白鳥よ、おらあ、この嫁にはあきあきした。嫁より、狩りを
するのが楽しいんじゃ。もう嫁はいらんから、代わりに立派な
弓矢をくれ」  

嫁さんはそれを聞くと一晩中泣いていましたが、朝になると嫁
さんの姿はなくて、その代わりに立派な弓矢が置いてあったの
です。

「おおっ、これさえあれば、鳥でも鹿でも取り放題だ」  

若者は弓矢をつかむと、大喜びで狩りに飛び出しました。しか
しいくら立派な弓矢を持っていても、狩りの腕が悪いので山鳥
の一羽も射止められません。  

一緒に狩りに行った村人に馬鹿にされた若者は、くやしまぎれ
に弓矢を放り投げました。

「こんな弓矢、もういらん!」  

すると弓矢は美しい白鳥に姿を変えて、若者の手をするりと抜け
ると山峠のかなたへ消えていきました。

「まてー、まってくれー!やっぱりあの嫁を帰してくれー!」  

白鳥を追いかけた若者は、関所を駆け抜けようとして関守に呼び
とめられました。  

びっくりした若者は、あわてて頭を下げて言いました。「怪しい
者では、ございません。このあたりの百姓でして、逃げた嫁を探
していたのです」  

そして恐る恐る関守の顔を見上げて、若者はあっと叫びました。
なんとその関守は女で、しかも姿を消した嫁さんだったのです。  

嫁さんは、目からみるみる涙を流しながら言いました。「どん
なことがあっても、この関は通しません。お前ののぞみは、も
うかなえられません」  

そして涙に濡れた袖はみるみるうちにまっ白な羽に変わり、それ
を見た若者は転げるように逃げていきました。  

このときから紀の関は、不死鳥の関とよばれるようになったのです。

おしまい






私の家族は、父、母、私、そして弟の四人家族です。

弟は私より十二歳も年下で、その当時はまだ六歳でした。とて
も可愛い弟です。

しかし、私は遊び盛りで、家にいれば父と母が喧嘩をしている
ことが多かったため、家に帰ることが少なかったです。

弟はきっと毎日、とても寂しかったでしょう。

ある日、久しぶりに家に帰ると、普段はお酒を飲んでいる父が、
一冊のノートを手に取り、涙を流していました。

私もそのノートを覗いてみると、弟がまだ拙い字で書いた物語
が書かれていました。

「ごめんな」と父が急に言いました。
ノートには、こんな言葉が綴られていました。

「僕には楽しいパパ、優しいママ、いつも笑顔のお姉ちゃんが
います。いつもみんなで美味しいご飯を笑いながら食べます。

毎週日曜日は、家族でお出かけをします。僕はいつもみんなに
可愛がってもらっていて、幸せいっぱいです。

毎日笑顔がいっぱいです」

これは、一家にとっては現実とはかけ離れた理想の家族像でした。
しかし、弟の純粋な願いが詰まったその物語を読み、私と父は涙
を流しました。

その日、パートから帰ってきた母もノートを読んで、泣きました。
その夜、家族そろって鍋を囲みました。

弟にとっては初めての経験で、彼はとても楽しそうに笑っていま
した。父も母も私も、照れくさくなりながらも笑いました。

その日を境に、家族は少しずつ変わり始めました。弟の夢が書か
れた物語が少しずつ現実のものとなり、今では笑顔でいっぱいの
家族になりました。 ・・・