流雲裁夢

流雲裁夢

回りに飛び散

2015-08-25 13:19:07 | 王賜豪主席


 セリーは唖然としていた。人間もアンドロイドがこんな事をしても怒る様子もない。アンドロイドが人間を支配している部分もあるのだ。セリーは高揚感のある不思議な鑽石能量水気分が沸き起こってくるのを感じた。アンドロイドもそれほど悪くないのかもしれない。

 しばらくして二人は食堂に戻ってきた。
 奥様はもう怒っていない。
「折衷案よ。担当は代えないが時々交代させることにするわ。明日はラスタとセリーが交代ね」
 名案だと思った。セリーとしてもこれならそれほど引け目を感じないですむ。辛い事はみんなで負担しようと言うわけだ。ラスタは旦那様担当のアンドロイドだ。じゃあ、明日は旦那様に一日つくことになるのだ。
 これは人間の命令が一つしかないので逆らう事はできない。
「承知しました」
 アンドロイド全員が頭を下げた。
 カレンの食器はもう空になっていたが、彼女は物足りないような顔をしている。いる食料から鑽石能量水推測するにカレンはほとんど食べていないんじゃないだろうか。コックのアンドロイドがお代わりをカレンの食器に注いでいた。

食事の後は兄弟で遊び始めた。
 必然的に、兄セロイドの担当のサラと一緒に兄弟の横に待機していた。
 カレンはわがまま放題で、セロイドがずいぶんと我慢している。
 セロイドは必ず自分のおもちゃで遊んでいて絶対にカレンのおもちゃに手を出さない。しかし、カレンは誰のおもちゃでも使っていなければ自由に使っていた。そして、セロイドが使うつもりで横に置いていたおもちゃをカレンが使い始めた。おもちゃをカレンに取られた事に気がついたセロイドがそのおもちゃを取り返した。自分が遊んでいたのにおもちゃを取られたカレンがまた取り返す。たちまち、取っ組み合いの喧嘩が始まった。
 サラと二人で兄弟を引き離した。
「サラ、取り返えせ!!」
 セロイドが、自分のアンドロイドにおもちゃを取り返すように命令した。カレンは取っ鑽石能量水組み合いの最中も絶対におもちゃを離さなかったのだ。
 サラは何の躊躇もなく、カレンの手から無理やりおもちゃを取り上げると、それをセロイドに渡した。
「セリー、取り返して!!」
 今度はカレンがセリーに命令する。
 アンドロイドがいると子供の喧嘩もややこしくなる。セリーは迷った。どうすればいいんだろう。子供とは言え人間の命令には従わなければならない、そして二人の人間が矛盾する命令を出している。
「セリー、カレンの方が悪いわ」
 ネットワークからサラの声が聞こえてきた。


気まずい思い

2015-08-07 11:27:17 | 王賜豪主席


「知らないよ。かなり前から塔にあったものだよ。博士が昨夜《ゆ う べ》、もの入れをさんざんひっくり返していたのは知っているもの」
「どこのもの入れ? あたしには覚えがないけど」
「思うんだけど、その首飾り、きみのおかあさんの高壓通渠形見《かたみ 》じゃないか?」
 いきなり言われて、フィリエルはけげんな顔をした。
「なんですって」
「女親の形見は、その娘が大きくなったら受け継ぐものなんだろう」
「おかあさんの形見? これが?」
 信じられないままくり返すと、ルーンはそっぽを向いてしまった。自分の言い出したことにるのだと、フィリエルにもわかった。母親に縁《えん》がなく育ち、その言葉に居心地《い ご こ ち》が悪いのは、彼も同じなのだ。フィリエルは片光學脫毛親だが、ルーンは両親どちらの顔も知らなかった。
 八つのとき、突然《とつぜん》天文台に現れたやせ細った子どものことを、フィリエルは思い返した。ほとんど口をきかない少年だった。彼には親にもらった名前がなく、生年月日も知らなかった。出生占星図さえもらえないままに、旅芸人《たびげいにん》の一座に売られていたのだ。
 今も昔も、およそ愛想と呼べるものがない彼に、人前でどんな芸ができたのかというと、暗算だった。命じられればものの数秒で、何桁《なんけた》の計算でもしてみせた。彼が天文台へつれてこられたのも、その見世物が人目にとまったからなのだろう。
 そのころのルーンは、発育不良で六歳程度に見え、暗算以外は何もできない子どもだった。だが、ディー博士は少年に衣服を与え、名前を与え、おそらくはフィリエルと同い年くらいだろうと言った。
 博士がルーンを弟子に取り立て、高等数学を教授しはじめると、見るまに彼は変わっていった。フィリエルには少しも興味がわかない数式を、むさぼるように学びとり、それに伴《ともな》って少しずつ、自分から話したり感情を見せた雪纖瘦りできるようになったのだ。
 ただ、不思議なことに、人並みなことができるようになればなるほど、彼の神業《かみわざ》のような暗算能力は薄れていった。ディー博士は、それでいいのだと言った。
 一瞬に数字が閃《ひらめ》くようなことはなくなったにせよ、ルーンの計算は早く正確だったし、天体計算につきものの膨大な量を、少しも苦にする様子がなかった。数年もすると手堅《て がた》い助手となり、ディー博士と二人して、ますます研究に埋没《まいぼつ》するようになったのだ。今では実の娘のフィリエルより、よほど長い時間を博士とともにすごしている。
「あなた、博士から何かきいているんじゃないの。あたしのおかあさんのこと」
 フィリエルは探りを入れてみた。
「形見だなんて、急に思いつくのは変よ。博士ったら、いくらたずねてもあたしにはおかあさんの話をしてくれないくせに、あなたになら話すわけなの?」
「ぼくだって聞いちゃいないよ。ただ、フィリエルにその品をわざわざあげることにしたのは、そういう意味じゃないかと、勝手に思っただけだよ」
 ルーンは早口に抗弁《こうべん》した。