あともう少しだけ

日々の出来事綴ります。やらずに後悔よりやって後悔。

対話 思い出せない

2014-06-09 00:22:07 | コラム
「まずい」
「どうしました?」
「休日だったから、一日中のほとんどを読書に費やしていたんだけど」
「外に出ましょうよ。不健康な」
「休みの日くらいどう過ごそうと勝手でしょ。大体今日は雨だったし」
「それはそうですね。失敬。それで、本がどうしました?」
「午前、午後でそれぞれ1冊、計2冊読んだんだけど、午前中に読んだ本が何だったのか思い出せない」
「・・・はい?」
「ちなみに今さっき読み終わったのがこれ、『46番目の密室』」
「有栖川有栖ですか。ミステリーを読むんですか?」
「読む事は読むけど、たまに。この人の作品は初めてだ」
「何かきっかけでもあったんですか」
「この前『アリス殺し』って小説読もうかなとか言ってたじゃん」
「ああ、言ってましたね」
「そういう理由だ」
「訳がわかりません」
「頭の中にアリスってキーワードが残っている状態で本屋に行ったから思わず手に取ったって訳だよ。察しろ」
「とんだ興味の持ち方があったものですね」
「俺の興味のベクトルは無限大だ」
「自慢になってません」
「それはいいとして、問題はさっき言った通り」
「午前に読んだ本が思い出せない。・・・・『内容が思い出せない』ではなく?」
「タイトル、作者、内容その他何もかもだ」
「重症ですね」
「笑えるな。はっはっは」
「他人事だったら笑い話で済みますけど、自分事ですからね?」
「何だっけなぁ」
「いっそ思い出さなくていいじゃないですか」
「いや、ここで思い出せないと何か負けた気がする。て言うか人として致命的な気がする」
「そもそも本当に読んだんですか、本」
「根底を否定するなお前。読んだという記憶は確かに残っているんだ」
「午前中の行動を思い返してみてはいかがですか?イモヅル式に記憶が出てくるかもしれませんよ」
「うーん、まず今日は朝起きてプリキュアを見て」
「・・・」
「今露骨に引いた顔したな」
「気のせいです。その後どうしました?」
「返却期限が今日10時までのDVDがあったからTUTAYAに行ったんだ」
「そして?」
「DVDをBOXに入れて・・・あ、思い出した!」
「出てきました?」
「その後本を立ち読みしたんだ。で、そのまま本を読み切ったから、その本の記憶が飛んだんだ、そうかそうか」
「迷惑な客ですね」
「立ち読みだと本が血肉にならないと。いい教訓になったね」
「記憶力が定かでないという根本的な問題が解決していませんが」
「人は忘れる事で前を向いて歩いて行けるんだ」
「思い出すのも恥ずかしい過去だらけの貴方が言うと無駄な説得力がありますね」
「何故忘れたか、その理由がわかってすっきりしたからそれでいいじゃん」
「それで結局何の本を読んだんですか?」
「『一流の男になるには』みたいなタイトル」
「一流の男は立ち読みで本読破しますかね?」

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