■質問
導入時の留意事項
導入時の留意事項について、予め把握しておきたいと思っている。
■回答
(1)T社の事例
①トップ・マネジメントの理解と支持
・トップ・マネジメントの理解と支援を得ることは導入の必須条件である。しかし、実際にリスク・マネジメント導入の必要性をグループ内に浸透させるのは、プロジェクトチームの役割である。
②社内各部門の理解と協力
・リスク・マネジメントを実際に行うのは各部門、関係会社であるため、最低限、各部門の理解と協力を得ることは導入に際して不可欠である。
・そのため、全部門のキーパーソン(企画担当マネージャークラス)全員の理解と協力を得るように心がけている。
③総合企画部と共同実施
・T社の「参謀本部」である総合企画部の影響力、情報力、経営感覚を導入に十分に活用。
④段階的導入と十分な個別説明
・次の2点に対処するため、T社では、ステップを踏んだ段階的な導入及び各部門のキーパーソンの理解と協力を得るために個別に十分な説明(対面式)を実施。初年度の準備期間では79回の説明をおこなった。
(イ)ERMの導入は、リスクを「各部門に任せる」ことから、「全社全体として管理する」と言う点でパラダイムシフトを伴うものである。
(ロ)リスクに対する考え方や認識は人により異なっており、「リスクは管理すべき」という一般論ではだれでも同意するが、「リスクをどのように管理すべきか」という具体論になると意見が必ずしも一致しない面がある。
⑤その他
・導入時に3つの基本方針を定め、この基本方針に従って検討を進めた。
(イ)実際に稼動し、継続して機能するような通常業務の一環として定着させる。
(ロ)可能な限り実施部門の負荷を軽減すると共に、組織は新設せず既存の組織やシステムをできるだけ活用するなど費用対効果を重視。
(ハ)グループ全体の経営管理やコポーレート・ガバナンスへの活用
(2)A社の事例
①リスクマネジメントの「現場化」が課題
・リスクに向き合っている「リスクオーナー」の自主的な管理意識なくしてERMは浸透しないとの考えに基づいて推進している。リスク管理は、本社部門から「やらされる」のではなく、現場のリスクオーナーが自ら対応していく必要があるという感覚をもってもらうことを最大の推進目的、課題としている。
②リスクオーナーによるPDCAサイクル実施の定着化が課題
・リスクマネジメントの「現場化」が推進され定着化することで、本社部門・リスク管理部門・内部監査部門による全社ベースでのPDCAサイクルに加えて、現場内でのPDCAサイクル実施、機能の定着化が課題となってくる。
(3)外国企業の事例
<ERM導入の重要な成功要因>
・上級経営陣(例えば、CEO、CFO、CRO)から強く、目に見える支持を得ている。
・ERM導入を推進し、運用段階でも後押しし続けるための献身的な機能横断的なスタッフのグループがいる。
・ERMを組織の鍵となる戦略的目的、財務的目的、ビジネスプロセスにしっかりと関連付けている。
・ERMを新規の独立プロセスより、むしろ組織内で既に強固でよく受け入れられたプロセスに対する強化策の1つとして取り入れる。
・社外からの意見を取り込む
・一歩一歩着実に前進し、「初期の成功」を次のステップへの足がかりとして活用する。
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