スピードとは

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スピードシークレットとは (その51) Driver as Athlete

2009-12-09 12:49:17 | SS1
Driver as Athlete

レースドライバーはスポーツマンでしょうか?これはもうずいぶんと長い間、批判されてきた疑問です。が、まあ、そんなことはどうでもよいのですが。私がわかっているいることはレースカーを上手に走らせるためには肉体的なスタミナとスキル、そして精神的な強さが必要だということです。

もし、貴方が僅かでもレースで成功しようと思うのなら、貴方は肉体的に良いコンディションである必要があります。もし、貴方がレースで勝とうとするのなら、或いはレースを貴方の職業としようとするのなら、貴方は肉体的には大変良いコンディションを持たなければなりません。

レースカーのドライビングには筋肉の強さと柔軟性、それから適切な栄養管理を伴うエアロビックフィットネスが必要になります。これを欠くと、貴方は強さとスタミナを欠くばかりでなく安全なドライビングができなくなってしまいます。車のステアリング、ブレーキ、シフト、クラッチ、アクセルなどのコントロール類を使い、大きな荷重に耐えることは一般の人が考えるよりもはるかに大きな肉体的コンディションを要求されるのです。特に極端な熱の中でそれに耐えるのは大変なことです。

毎年、或いは2年ごとのレーシングライセンスの資格維持(これはライセンスのレベルにより異なると思います)のためには医師による健康診断が要求されます。でも、健康診断で問題が無くても、貴方の肉体は一体どのくらいの鍛えられているのでしょう?また、どのくらいの強さ、柔軟性をもっているのでしょうか?

貴方がレース中に肉体的に疲労すると、それは貴方の身体的な能力に影響するだけでなくメンタルな能力にも影響を与えてしまいます。肉体的に疲労してくると貴方は身体の痛みに気がつきます。そしてそれは貴方の集中力をかく乱し本来しなければいけないこと(可能な限り速く走ること)が出来なくなってしまうのです。

肉体的なコンディションが良いほど、貴方はメンタルな注意力が上がり、ストレスと集中力のレベルを効果的に維持することができます。貴方の肉体的な強さを弱めてしまう大きな要因とは強くて、長時間続く集中力の維持にあります。ほんのちょっとした集中力の欠落は大惨事につながるからです。貴方は一体何回、「頭がボーッとして」という言い訳を聞くことでしょうか?

しばしばドライバーのラップタイムはレースの後半に向けて徐々に悪くなることをご存知ですか?ドライバーはそれをタイヤやエンジンの性能が下がってしまったという言い訳を言います。真実は何かと言うと、じつは性能が下がったのはドライバー自身なのです。ドライバーは疲労が出てくるにつれ肉体的、精神的強さを失ってくるのです。

レースすることで肉体的に鍛えられていると主張するドライバーは自分自身をごまかしているだけなのです。毎週末のレースから得られる運動量でも十分ではありません。貴方は規則的な肉体的なコンディションニングのプログラムでそれを補わなければなりません。

Physical Conditioning

貴方は自分をトレーニングすることでさらにしまった肉体を手に入れることが出来ます。管理された環境でランニング、リフティング、ウエイトトレーニングなど貴方の好みのいろいろなトレーニングを通じて身体にストレスを与えることで筋肉の繊維は分断されてゆきます。それから、休息することで筋肉はより強靭になり再生します。運動のあとは休憩してください、そして貴方の身体は強くなってゆきます。

規則的なフィットネスのプログラムで貴方のコンディショニング、強さ、柔軟性、耐久性を向上させることができます。ランニング、テニス、ラケットボール、スカッシュなどは心肺能力とそのコンディショニングの向上には大変よいスポーツです。これに加えて特別にデザインされたウエイトトレーニング、ストレングスやストレッチのプログラムはレースでの勝敗を左右することになるでしょう。これらの運動は大抵、貴方の反射能力にも効果があります。

近代的な空力効果を利用した車ではドライバーの体力的な強さが大変重要になっています、したがってウエイトトレーニングがキーになってきています。でも、あんまり筋肉増強には努めない方がよいでしょう。特に今日のFormulaカーに乗る場合、コックピットはとても狭いので。筋肉の量を増やすというよりも耐久性を上げることに重点を置いてください。

1985年と1986年、私はTrans-Amカーに乗りました。他のファクトリーチームに比べると私たちは比較的低予算のプライベーターでした。そのころ、ちょうどパワーステアリングが登場したころでした。このTran-Amカーをパワーステアリング無しでドライビングするのは本当に重労働だったのです。その車をステアするためには大きな肉体的な力が必要だったのです。最終的には私たちの車にもパワーステアリングは搭載されました。私はその違いに本当に驚きました。それは私の疲労のレベルを改善しただけではなかったのです。私はより速く走れるようになりました。実際、車にはそれ以外の変更は何もせずにラップタイムを殆ど1秒縮めることが出来たのです。違いは、私がコンスタントに限界で走れるようになったことにありました。私はパワーステアリングが無いことのマイナス点に気がつかないでいたのです。特にコーナーでのコースの異常なバンプでは顕著でした。もし、私が限界で走行中にそのバンプに当たったら、私はステアリングホイールを握り続けていられなかったでしょう。ステアリングは私の握った手から飛び出していたにちがいありません。でもパワーステアリングでは私はそのような心配なしで常に限界で走ることができたのです。加えて、私はステアリングを素早く操作してコーナーに飛び込ませた車を受けてコントロールする自身が持てました。この経験から私は肉体的な強さということがいかに重要なのか理解することができました。そして、私は私の肉体的な強さを鍛え上げることでより速いIndyカーのレーサーになれることを確信したのでした。

ここまでで、貴方は車がドライバーに伝える動きに敏感であること、或いは、車のコントロールについて操作が正確であること、がいかに重要か理解できたと思います。このテストを実行してみてください。絵か写真の輪郭を鉛筆で正確に細部までなぞってみてください。それから腕立て伏せを50回行って同じように絵をなぞってみてください。何が起こりましたか?貴方の筋肉は疲れると細かい動きが幾分失われるはずです。その細かい正確なコントロールがレースカーのドライビングに必要なのです。

貴方の心肺機能はレースのときにかなりの運動を強いられます。平均的な人間の1分間の心拍数は50から80回で、その最大の心拍数の半分ほどになります。大抵のスポーツ選手は最大時の60から70%の心拍数で運動をしています。それから、それは休憩の間の数分間だけです。レースドライバーの研究ではドライバーはレースの間を通して最大心拍数の80%でドライブしていることがわかりました。

心肺的に鍛えられていることが勝敗を左右するようになりました。貴方の心肺機能が正常であることを確かめる唯一の方法はエアロビックトレーニングなのです。ランニング、サイクリングなど心拍数を最低20分間は最大時の60から70%に維持するトレーニングです。

貴方の反射機能は訓練により改善することが可能です。スカッシュ、ラケットボール、卓球などのスポーツは貴方の目と手の協調性と反射神経を鍛えるのに適したスポーツです。パソコンゲームなども貴方のメンタルな反応、反射運動を改善するよい道具になります。

私は柔軟性の重要さに気がついてきたのはここ数年の間になります。私のトレーニングプログラムの中で私はストレッチに時間を割くようになってきました。私の身体の柔軟性の訓練です。これを始めて以来私の筋肉痛は改善され、レース中、筋肉がつって痛むことも少なくなりました。また、レース翌日の気分が大変よくなりました。

仮にクラッシュしたとすると、貴方の身体が柔軟であればあるほど、怪我をするチャンスも小さくなるのです。柔軟な身体があれば、貴方の筋肉はクラッシュのインパクトの衝撃をうまく受け流すことができるのです。

貴方の体重はどのくらいですか?もし、貴方が体重超過だとすると減量することは貴方自身だけでなく、貴方の車、チームに対しての義務、責任にもなります。貴方が体重超過だとすると、貴方のチームは何故貴方の車を出来るだけ軽くしようとするのでしょうか?でも、それ以上に大事なことは余計な脂肪は身体の断熱材となってしまうことです。それはレースカーコックピットのような高熱の環境の中では決してあってほしくないものです。体脂肪を減らす(或いはもうすでに落ちている人にはそれを維持すること)は貴方のトレーニングプログラムの目的の一つにするべきです。

実際、熱はドライバーにとっての最悪の敵なのです。耐熱スーツ、継続する肉体的に激しい運動、それからレースカーから発生する熱自身、これらの組み合わせはドライバーに作業環境を劣悪なものにするのです。結果としてドライバーの体温は38度近くに上昇することがあります。

この熱はしばしば脱水症状を引き起こします。ドライバーにはレース中に体重の5%を発汗で失う人もいます。脱水症状は筋肉が疲れて引きつった状態にしてしまいます。また、神経の反応処理時間の遅延にも影響してきます。研究によると発汗によって体重を2%失うと、それは貴方の運動の能力を15%低くさせると言います。脱水症状への対応は一つだけです。水などの飲料を飲むことです。レースのある週末の間、特に暑い時はできるだけたくさんの水を飲んでください。週末だけで少なくとも4リットルの水は必要です。

1994年のSebringでのIMSA12時間レースで、私は重い脱水症状になってしまいました。とても暑い日で私のチームのドライバーに問題が発生したので私は最初の5時間に内の4時間をドライブしなければならなかったのです。私が車の中でボトルから水を飲んだとき、私は胃の気分が悪くなりました。レースに入って9時間経ったところで私はひどい脱水症状になり体は弱く感じ、眩暈も感じてきました。私たちは最後の数時間は交替ドライバーが必要になり、私はメディカルセンターで点滴による水分補給を受けることになりました。私は当日早くから十分な水分補給を心がけていましたが、その水分は私の身体には留まらなかったようです。それは大変不愉快な経験で私たちのレースのポジションを悪くすることにもなりかねませんでした。

スポーツマンの摂食は彼らのパフォーマンスに大きな影響を与えることはよく知られています。マラソンのランナーはレースの前には炭水化物を摂取することは有名です。レースドライバーも同様なのです。もし、レースで勝とうとするのなら適切な摂食管理が必要になります。医師か栄養士に相談してみてください。少なくとも、レースのある週末には脂肪の多い食物は避けるようにしてください。代わりに炭水化物を食べるようにしてください。

最後に、貴方はお酒を飲みますか?タバコはすいますか?私たちは飲酒と喫煙が健康に悪影響を与えることをよく知っています。たとえ100万分の1の確率でも、貴方の反射、反応を遅延させ、貴方の視覚に影響し、心肺機能を低下させるのなら、貴方はそのリスクをおかすでしょうか?貴方は自分が成功することにどれくらい真剣でしょうか?

アルコールの貴方の身体と心への影響は長く残ります。それは貴方の反応時間を遅延させ、感覚を鈍くし、貴方の決断能力を遅延させます。貴方のパフォーマンスを向上させるような薬を摂取することは大きな間違いです。それは役に立たないばかりか、危険なのです。



しばしば、才能に恵まれなくて、車にも恵まれないドライバーが鍛えたぬいた身体を持つという理由だけでレースに勝つことがあります。従って、もし貴方がレースに参加し、勝ちたいのなら肉体的に可能な限り鍛えて参加しなければならないのです。


次回は勝つことについてご紹介します。

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© hkomori_2005

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