Chapter 13 Case Studies
この本での私の目的は継続的に皆さんがレースドライバーとして上達してゆく過程をサポートすることにあります。私は私自身か他の誰かがあなたがコースに出かけるときにいつでも同行しコーチできればよいと思っています。そうです、そうすればあなたの現状がどんなレベルでも目に見えて上達できるでしょう。しかし残念ですがそれは現実的ではありません。現実的なのはあなたが自分で自分自身をコーチすることなのです。この章の目的はどのようにドライバーが上達するのかについていくつかの例を紹介することであなたが自分自身のコーチができるようになることを助けようとすることです。
私はドライバーをコーチするときはいつでもセッションの前にプリレース、即ちテストの目的とポストレース、すなわち結果のレポートを記述することにしています。そしてそれはドライバーが何を学んだか、何について練習を続けなければいけないか、そしてセッション全体の感想、評価などを書きとめておきます。私はこれらのレポートのいくつかを見直し、その度にこのレポートが他のドライバーの上達のために何と有効なデータなのだろうと思っています。でも、私はドライバーのプライバシーのためにこれを他のドライバーには見せることはありません。しかし、そこにある情報はあまりにも有益なのでこれを共有せずにはいられません。
それでは私が長年コーチしてきたドライバー達、Speedy,Flash,Stan Donit,Racer X,Aceをご紹介しましょう。前に申しあげたように、彼らを皆さんに紹介し彼らのストーリーを説明する目的は皆さんが彼らの経験から学んで欲しいからです。この実在のドライバー達は皆経験の豊富なドライバーでしょうか?そうでもあるし、そうでもありません。この情報は実際に私が実践したコーチ活動に基づいています、でも彼らの犯した過ちを“かばうために“詳細は多少変更してあります。
あなたが読む以下の文章はセッションの前、途中、後での実際のレポートの抜粋です。繰り返します、私のここでの目的は皆さんに自分自身の状態、少なくとも部分的な自分自身をこれらのドライバーの中に認識してもらい、彼らの経験から学んでもらうことなのです。
Speedy: Re-programming Technique
Speedyは優秀なレースドライバーです。彼は頭もよく、安定してそして速いドライバーです。彼は15年以上のレース経験があります。しかし、彼はあるコースのそれもあるコーナーでテクニックが停滞状態になってしまったようです。彼は彼の競争相手と比べてそこでやや遅いと感じていてそれを改善できないでいました。また、データもそれを裏付けていました。彼はそのコーナーをここ数年同じ速度で周回し続けてきたのです。たとえ車がそれ以上の能力を持っていてもです。
Speedyと私はコースの中のこのセクションでの彼のテクニックについて時間をとって話し合いました。そして私は彼がその問題を解決できると思われるあるプランを思いつきました。私はもし彼が私の与える宿題を実行すればその問題は必ず解決するという自身がありました。
彼が私との会話の中で繰り返していたのは、“私はあそこでそれ以上速く走れる気がしない”とか“私はあそこではお手上げです”ということでした。彼の信念の体系がその限界を作っていることは明白でした。しかし、単純に彼の信念の体系を変えるように言うことは何ら効果は無さそうでした。結局のところ、それは彼の実際の体験から作られていたからです。従って、そのコースのそのセクションのスピードについての彼の信念を変えるためには私たちは彼の心理的、身体的な経験の両方を変えなければいけませんでした。言い換えると、彼は最初にコースのそのセクションを物理的に少し速く走らなければなりませんでした。そしてそれが彼自身がそれができることを証明することになるのです。例え小さな速度の増加でもそれが彼の信念の体系を大きく変える入り口になりえます。それから、彼は実際の走行の前後に心理的なプログラミングにより強化し構築することができるのです。
そして、彼はより速く走ろうと無理をしているのは明らかでした。ご存知のように私は無理をして速くなれるとは思いません。無理をすることは顕在意識でのドライビングをしていることになります。人は潜在意識のレベルでのみレースカーをうまくドライブできるのです。
私の目標は彼の信念を変えることと彼の身体的なテクニックを再プログラムすることになりました。会話の中で彼に一番有効な学習のスタイルは運動感覚による学習であることが分かりました。彼は学習しプログラムされるにはその前に実際に感じ経験することが必要でした。以下が私が考え彼に実行するように話したプランです。
STEP #1: Ask Yourself Some Questions
・シケインを通過するときと脱出するときにもっと速く走れない理由はありますか?
・あなたにはもっと速く走ることを妨げる身体的な問題がありますか?
・あなたにはもっと速く走ることを妨げる精神的な問題がありますか?
・あなたは本当にもっと速く走りたいと考えていますか?
・あなたはもっと速く走るためにはどのようなことでも進んで行う意思がありますか?
・あなたは意識的にレースカーを走らせることができますか?それとも潜在意識のプログラムに任せてドライブする方が楽ですか?顕在意識の心は毎秒2000ビットの情報を処理できます、ところが潜在意識の心は毎秒40億ビットの情報を処理できることをご存知ですか?
Speedy、時間をとって回答を考えてください。これは大変重要なステップですから。
STEP #2: Physical Programming
あなたはシケインの2番目の右カーブに差し掛かる前に車が曲がりやすいように左足でブレーキを少し使うと言いました。あなたはそのためにそこで車の速度を落としすぎてしまうとも言いました。それは驚くことではありません。あなやの左足は普通は何をしていますか?クラッチワークですよね?左足はクラッチを踏みつけるように長年の間プログラムされてきています。あなたの左足はペダルを優しく踏むような習慣(あるいはプログラム)になっていないのです。あなたはそれを変えなければいけません。そして左足をもっと敏感で柔軟にしなければいけません。
来月にかけてストリートをオートマチックトランスミッションの車を運転するときは(必要なら1ヶ月レンタカーを使って)いつでも左足でブレーキをかけてください。右足が持つ微妙なブレーキの感覚を学習する機会を作って身体にプログラムしてください。
高速道路の出入り口のランプなどのコーナーに接近するとき(それも右コーナーのときがとくに重要ですが)はいつでも(たとえブレーキングが必要ないコーナーでも)左足で優しく軽く踏む練習をしてください。このブレーキングを早めに(コーナーに進入する前です)行いアクセルにも早く戻ってください。なるべくシケインの2番目のコーナーをまねるようにしてください。そしてその練習をしているときはそのシケインにいると思ってください。
繰り返します、あなたがしていることはあなたの左足ブレーキングのプログラムを構築し強化することなのです。
次回はChapter 13 Case studiesの続きをご紹介します。
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