まちかどBOOK研究所

小さな事から歴史をひもとく。そこから広がる世界がある。

松浦武四郎「知床紀行」

2021-10-20 18:13:31 | アイヌ語
今回は武四郎の紀行文のうち、「知床紀行」をご紹介します。

「知床紀行」
ウペウ、ウペウコエキ、ヒラ、ピラ、アマクウ、クウ、ソウ、シュンク、ウヌンコイ、ル、チノミノウシ、カムイノミウシ、チャシ、ラン、リイポクヲマナイ、リイホコヲマイ、ヲタツネタツカルウシ、ヲタツニウシ、イチヤヌイ、シヤケンベ、セムイ、ウルツプ、チャロクンネ、レプン、シララ、ホロムイ、シベ、チナ、ルイベ、アタツ、チカプコエキ、サキムイ、カモイコエキ、カモイ、カモイチセ、ヲルンチセ、チロンヌプ、チロンヌプコエキ、トベニ、ルイ、ルウ、トノカルウシ、トウヌカルウシ、クウ、アマッポ、アマポ、アマホウ、キキル、ルシャ、ルエサン、ルエシャニ、フプ、トトロップ、トカル、トッカリ、ムイ、キムンカムイ、リウ、ピラ、ヲケタ、モエレ、ツーカリ、トカリ、ペケレ、ノツ、メイ、メウシ、ホル、ニカルウシ、シネシュンエト、シュネウシエト、ペケレホル、イナラ、アンラコル、トマ、トレップ、ハル、シラコル、サラパ、サランパ、シユム、タ、タンネ、シラリ、ヲンネ、パシクロ、カルマイクシ、カラマヨコウシ、カラベイヨクシ、ウンチセ、ウチセ、チセ、ワタラ、フウレソウ、ポンソウ、フプ、ウシ、シリエト、クツタラ、プトソウウシベツ、ソウランベツ、ショウランベツ、チャラセ、ポル、シュプニウシ、スフヤニ、フプウシノツ、フプウシナイ、ユワヲソウ、サンケ、タッコブ、タッコプ、ヲツプ、マレプ、カウリリ、エトピリカ、エト、ピリカ、プクシヤ、キトビル、モチップ、イシカリ、チカポイ、チカプポロ、フレペ、プクシャウシタッコプ、プクシャウシノツ、フレ、ベ、ペ、プウ、ニ、ア、パッ、テ、ペケレ、ペレケ、チヤシ、コツ、エト、フンベ、ヲマ、シャリクシ、シャリ、クシ、チライ、ヲンネ、ノッカマプ、ミトシ、カンナルシ、シイキナ、ウマサキナ、ムリ、カトギ、クといったアイヌ語が記載されています。


ウペウエペウはアイヌ語でヒラメの意味、
ウペウコエキはアイヌ語でヒラメ捕りの意味、
ヒラとピラはアイヌ語で崖崩れの場所の意味、
アマクウはアイヌ語で置弓仕掛け弓の意味、
クウはアイヌ語での意味、
ソウはアイヌ語での意味、
シュンクはアイヌ語でエゾマツ
ウヌンコイはアイヌ語で両岸の絶壁が迫っているところ
はアイヌ語で
チノミノウシカムイノミウシをこのように書き取ったもので、アイヌ語で神にいつも祈るの意味、
チャシはアイヌ語での意味、
ランはアイヌ語で落ちるの意味、
リイポクヲマナイはアイヌ語で高い崖の下にある沢の意味で
リイホコマイリイポクヲマナイをこのように書き取ったもの、
ヲタツネはアイヌ語での意味、
タツカルウシ・タツネウシタプカルウシをこのように書き取ったもので、それぞれタツカルウシはアイヌ語で樺皮をいつもとるところ
タプカルウシ人が踊っているような形の木が多いという意味、
ヲタツニウシはアイヌ語で川口に樺が多い
イチヤヌイ・シヤケンベ・セムイ・ウルツプ・チャロクンネはアイヌ語での意味、
レプンはアイヌ語での意味、
シララはアイヌ語で大岩の群がっているところの意味、
ホロムイはアイヌ語で大きな湾の意味、
シベはアイヌ語での意味、
チナはアイヌ語で乾鮭
ルイベはアイヌ語で凍った鮭
アタツはアイヌ語で乾いた肉
サキムイはアイヌ語でわずかばかりの川
カモイコエキはアイヌ語でクマ猟
カモイはアイヌ語でクマ
カモイチセはアイヌ語でクマの穴
ヲルンチセはアイヌ語で暗い庵
チロンヌプはアイヌ語でキツネ
チロンヌプコエキはアイヌ語でキツネ捕り
チカプコエキはアイヌ語で鳥を捕る(鳥を捕るといえば宮沢賢治の銀河鉄道の夜が有名である。)、トベニはアイヌ語でカエデ
の意味、
ルイ・ルウはアイヌ語で砥石の意味、
トノカルウシは、トウヌカルウシをこのように書き取ったもので、アイヌ語で日和を見るところの意味、クウはアイヌ語での意味、
アマッポ・アマポ・アマホウはアイヌ語で仕掛け弓の意味、
キキルキキリをこのように書き取ったもので、虫や昆虫などの意味もあるが、ここではアイヌ語での意味、
ルシャはアイヌ語で道越えるの意味、
ルエサン・ルエシャニルシャの語源となったもので、道下るところの意味、
フプ・トトロップはアイヌ語でトド松の意味、
トカル・ツーカリ・トカリは、トッカリをこのように書き取ったもので、アイヌ語でアザラシの意味、
ムイはアイヌ語での意味、
キムンカムイはアイヌ語で山の神の意味、
リウはリーをこのように書き取ったもので、アイヌ語で高いの意味、
ヲケタはアイヌ語で脚を出すの意味、
モエレはアイヌ語で遅いあるいは休む
ペケレはアイヌ語で明るい
ノツはアイヌ語で
メイはメアンをこのように書き取ったものでアイヌ語で寒い、
メウシメウンをこのように書き取ったもので、アイヌ語で寒いところの意味、
ホルはアイヌ語で洞の形
ニカルウシはアイヌ語で木を取るには多い
シネシュンエト、シュネウシエトはアイヌ語で樺皮を灯して魚を捕る
ペケレホルはアイヌ語で明るい洞
イナライナウをこのように書き取ったものでアイヌ語で木幣
ハル・シラコル・アンラコルはアイヌ語でクロユリ
トマはアイヌ語でエンゴサク
トレップはアイヌ語でウバユリ
サラパ、サランパはアイヌ語でさようならの意味、
シユムはアイヌ語で西
はアイヌ語であるの意味、
タンネはアイヌ語で長い
シラリはアイヌ語で岩磯
ヲンネはアイヌ語で大きい
パシクロパシクルをこのように書き取ったもので、アイヌ語でカラスの意味、
カルマイクシは、カラマヨコウシ、カラベイヨクシをこのように書き取ったものでアイヌ語でチョウザメを狙うところの意味、
ウチセウンチセをこのように書き取ったものでアイヌ語でそこにある家の意味、
チセはアイヌ語で
ワタラはアイヌ語で険しい岩の意味、
フウレソウはアイヌ語で赤い滝
ポンソウはアイヌ語で小さい滝
フプはアイヌ語でトド松
ウシはアイヌ語で多い
シリエトはアイヌ語で
クツタラはアイヌ語でいたどり
プトソウウシベツはアイヌ語で川口に滝がある
ショウランベツソウランベツをこのように書き取ったもので、アイヌ語で滝が落ちる川
チャラセはアイヌ語で
ポルはアイヌ語で洞窟の意味、シュプニウシ・スフヤニはアイヌ語で寄木が多いの意味、
フプウシノツはアイヌ語で少しの出崎にトドの木が多いという意味で、
フプはアイヌ語でトドマツ
ウシはアイヌ語で多い
ノツはアイヌ語での意味、
フプウシナイはアイヌ語でトドの木立が生い茂っている川
ユワヲソウはアイヌ語で硫黄水の流れ落ちている滝の意味で、
ユワヲはアイヌ語で硫黄
ソウはアイヌ語での意味、
サンケはアイヌ語で下るの意味、
タッコプタッコブをこのように書き取ったものでアイヌ語で丸山の意味、
ヲツプはアイヌ語で括(くくり)槍(やり)の意味、
マレプはアイヌ語で鉤(かぎ)槍(やり)
カウリリはアイヌ語でケイマフリの意味(ケイマフリはよく天売島や焼尻島においてみられることが有名だが、知床もこれらの島と並び繁殖地の一つとなっている)、
エトピリカはアイヌ語で花魁(おいらん)鳥の意味、
エトはアイヌ語で觜(くちばし)
ピリカはアイヌ語で美しいの意味、
プクシヤ・キトビルはアイヌ語でギョウジャニンニクの意味、
モチップはアイヌ語で持府船の意味、
イシカリはアイヌ語で行き留り
チカポイは、チカプポロをこのように書き取ったものでアイヌ語で岩穴に種々の水鳥が巣をつくるところの意味、
フレペはアイヌ語で赤い水の意味、
フレはアイヌ語で赤い
は、をこのように書き取ったものでアイヌ語での意味、
プクシャウシタッコプはアイヌ語でギョウジャニンニクが多いところ
プクシャウシノツはアイヌ語でギョウジャニンニクが多い岬
プウはアイヌ語で倉庫・庫(くら)
はアイヌ語で
はアイヌ語で鈎(つりばり)
パッテはアイヌ語で釣る
ペケレ・ペレケはアイヌ語で明るいの意味、
チヤシはアイヌ語で
コツはアイヌ語で地面
エトはアイヌ語で鼻岬の意味、
フンベはアイヌ語で
ヲマはアイヌ語で入る
サルクシシャリクシをこのように書き取ったもので、アイヌ語でそのあたりの湿地に芦萩が多いの意味、
シャリはアイヌ語で芦萩
クシはアイヌ語であるの意味、
チライはアイヌ語でイトウの意味、
ヲンネはアイヌ語で大きいの意味、
ノッカマプはアイヌ語で岬の突き出たところにある川(根室地方にも同名あり)の意味、
ミトシはアイヌ語で樺桶の意味、
カンナルシはアイヌ語で菰(こも)の意味、
シイキナはアイヌ語で
ムリはアイヌ語で蒒(てん)草(くさ)
カトギはアイヌ語で水葱(ねぎ)の意味です。

次回は松浦武四郎の「ノシャップ日誌」についてみていこうと思います。

松浦武四郎  「蝦夷漫画」

2021-10-05 16:54:48 | アイヌ語
松浦武四郎 「蝦夷漫画」
次に松浦武四郎について書いていきます。
武四郎編の第一回は蝦夷漫画について取り上げます。
幕末の探検家松浦武四郎は1818(文政15)年の2月に三重県松坂市で生まれ、
その後1845(弘化2)、1846(弘化3)、1849(嘉永2)、1856(安政3)、1857(安政4)、1858(安政5)の6回ほど北海道を探査に訪れています。
そうした探査の結果生まれた紀行文のなかからいくつか紹介していきたいと思います。


武四郎が探検後に書いた紀行文では、安政期のものがまず知られていますが、
このうち、「蝦夷漫画」では、イナヲ、マウシ、ヒンネ、マチネ、ヤンカラブテ、ヤンカラブツテ、ウムサ、ヲンガミ、キナ、マレック、イタオマチプ、タンネプ、エモシホ、シトギ、ヌサシャン、ヌシヤサン、アシンペ、イオマンテ、ニカラ、トツプ、ラツプ、トツプラツフ、キタイ、チセ、プ、カモイ、カムイ、ヤアラ、ヤラ、メノコ、カムイチセ、ヘペレセツ、
ヘペレオイペップ、シャリキ、サラキ、キ、ムンシロ、ビヤバ、ムイ、シュウ、アママ、カンタツ、カンタチ、カムタチ、イヂリ、ワッカ、オマン、シラリ、キナ、イクハシ、イクバシ、ケマウントク、ウシハチ、カックミ、セカチ、カナチ、ヘカチ、チタラペ、イナウソ、アヤキナ、キナ、タカイシャラ、タカイサラ、トウキタイチャラ、トゥキ、シントコ、キサルシパッチ、
キラウシパッチ、エトウヌプ、タプカリ、リムセ、ウホホ、サルルンタフカリ、プタウンハチ、ユトネツフ、キサラウンハチ、ケマコルシントク、マサシントク、カンタチフタ、ニシユイ、ユタニ、カリバ、カー、トンクル、ネシコニカレフ、ネシコニカレップ、ムツクリ、エタシペ、
チレカレツ、チレッテクッタル、レックタル、トマ、アンラユロ、
アンラコロ、フレイフイケ、ヘカンペ、キナ、シンシツ、シンリツ、エナヲ、
チタラベ、アヤギナ、アヤキナ、コタンコロカムイ、カムイチカップ、ノボリ、カタキ、
カマカツヒ、カマカプ、アフンカ、アフンカニツ、ベカ、ペカウンニ、ヲサ、ウオサ、
アトスペラ、イシトムシビ、イシトムシプ、アツシ、アツトシカル、アツ、トシ、カル、
アトウスィ、アツ、ルシ、アツシカラペ、チミツフ、ホシイがあり、


それぞれ日本語では
イナヲはイナウのアイヌ語をこのように書き取ったもので幣束、
マウシは願う、
ヒンネはピンネをこのように書き取ったもので男あるいは雄、
マチネはマッネをこのように書き取ったもので女あるいはメス、
ヤンカラプテ・ヤンカッラブッテはイランカラㇷ゚テをこのように書き取ったもので、こんにちはの意味、ウムサは場所請負制下の蝦夷地における儀礼であったヲムシャをこのように書き取ったもの、
ヲンガミはオンカミをこのように書き取ったもので、拝礼の意味、詳しくはアイヌ男性の礼法のひとつで、ヲムシャの際に松前藩主や幕府の役人など、身分の高い人の前に出たときのものです。

また、アイヌの女性の礼法の一つを意味するアイヌ語にはライミックとウルルイエがあります。
キナは、アイヌ語で草の意味です。
マレックは川漁でアイヌ民族が用いる漁具のこと、イ
タオマチㇷ゚はアイヌ民族独特の外洋船で縄綴じ船あるいは板閉じ船の意味、
タンネプは太刀のアイヌ語で詳しくはアイヌ語で宝刀のことのタンネプイコㇿ、
エモシホはアイヌ語で短刀の意味、
シトギはアイヌ女性の代表的な装飾品で、玉を連ねた胸飾りのこと、
ヌサシャン・ヌサシヤンはヌササンをこのように書き取ったもので、祭壇のアイヌ語です。
詳しくは、家の入口の反対側にあった神窓の外につくられ、儀式などを行うためのもの、

アシンペはアイヌ語で賠償・罰金の意味、
イオマンテはアイヌ語でクマ送りの意味で、詳しくは人間の国に遊びにきた神を神の国に返す儀礼で、ヌササンを使用した重要な例送り儀礼の一つ、
ニカラはアイヌ語で、はしごの意味、
トップはアイヌ語で笹の意味、
ラップはアイヌ語で葉の意味、
キタイはアイヌ語で葺くの意味でここでは屋根の意味も持っています。

チセはアイヌ語で家の意味、
プはアイヌ語で倉庫の意味、
トツプラツフはアイヌ語でクマザサの意味、
カモイ・カムイはアイヌ語でクマ、
ヤアラはアイヌ語で木の皮の意味、
ヤラはエゾマツ・トドマツ・キワダ等のコルク質の厚い樹皮を意味するアイヌ語で、はぎとった樹皮の意味、
メノコはアイヌ語で女の子の意味、
カムイチセはアイヌ語でクマの檻の意味、
ヘペレセツはアイヌ語で子熊の檻の意味、
ヘペレオイペップはアイヌ語で子熊の食器の意味、
シャリキはアイヌ語で芦の意味で芦の幹のアイヌ語のサラキをこのように書き取ったもの、
キはアイヌ語でアシやカヤの幹のこと、
ムンシロはアイヌ語で栗の意味でムンチㇿをこのように書き取ったもの、
ビヤバはアイヌ語で粟の意味でピヤパをこのように書き取ったもの、
ムイはアイヌ語で箕の意味、
シュウはアイヌ語で鍋の意味でスをこのように書き取ったもの、
アママはアイヌ語で飯の意味で、アマムをこのように書き取ったもの、
カンタツはアイヌ語で糀の意味でカンタチあるいはカムタチをこのように書き取ったもの、
イヂリはアイヌ語で笊の意味、
ワッカは水のアイヌ語、
オマンは入れるのアイヌ語、
シラリは粕のアイヌ語、
キナはアイヌ語で蓆の意味、
イクバシはイクパスイをこのように書き取ったもので、儀礼用の道具の一つ、
ケマウントクはアイヌ語で行器の意味で、儀式用の道具の一つ、
ウシハチはアイヌ語で耳盥の意味で儀礼用の道具の一つ、
カックミはアイヌ語で柄杓の意味、
セカチ、カナチ、ヘカチはそれぞれアイヌ語で子供、女、子供の総称の意味、
チタラペはアイヌ語で文様を編み込んだ筵の意味でイナウソ、アヤキナと呼ぶこともある。
キナはアイヌ語で筵の意味、
タカイシャラ・タイチャラはアイヌ語で天目台の意味でタカイサラをこのように書き取ったものでこれも儀礼用の道具の一つ、
トゥキはアイヌ語で盃の意味、
シントコはアイヌ語で行器の意味、
キサルシパッチはアイヌ語で耳盥の意味でキサラウンハチをこのように書き取ったもので当時のアイヌ民族が使用していた漆器の一つ、
キラウシパッチはアイヌ語で角盥の意味でこれも漆器のひとつ、
エトウヌプはアイヌ語で女性が片口でもってお酒を飲むための道具の意味、
タプカリはアイヌ語で踊りの意味でリムセ・ウホホとも呼ぶこともあるものです。
サルルンタフカリはアイヌ語で鶴の舞の意味で、現在のウポポイのプログラム等でも見ることができます。

プタウンハチはプタウンパッチをこのように書き取ったもので、アイヌ語で蓋物の意味、
ユトネツフはエトウヌプあるいはエトンヌプ、エトヌプをこのように書き取ったものでアイヌ語で片口の意味、
キサラウンハチはキサラウシパッチをこのように書き取ったものでアイヌ語で耳盥の意味、
ケマコルシントクはケマコロシントコ・ケマコルシントコとも呼ばれ、アイヌ語で脚付き行器の意味、
マサシントクはアイヌ語で曲げ物の行器の意味、
ニシユイはニスをこのように書き取ったもので、アイヌ語で臼の意味、
ユタニはイユタニをこのように書き取ったもので、アイヌ語で杵の意味、
カリバはカリンパニあるいはアイヌ語で桜の皮の意味のカリンパをこのように書き取ったものでここではカリンパニの方にあたるアイヌ語で桜の意味となっています。
このカリバ・カリンパ・カリンパニと呼ばれる桜ないしは桜の皮は、アイヌ文化では狩猟用の弓などに用いられています。

カーはアイヌ語で五弦琴の意味で、トンコル・トンコリとも呼ばれています。イラクサの皮を使用し、主に樺太や宗谷のアイヌ民族が用いていたもので、現在もウポポイ内等でその演奏を身近に聞くことが可能です。
ネシコニカレフはネシコニカレップあるいはネシコニカリプをこのように書き取ったもので、アイヌ語でくるみの笛の意味でくるみの皮をむいて巻き上げたものです。クルミの木の皮をらせん状に巻き上げたもので、戦国時代に武田信玄などが軍事作戦の合図に多用していたほら貝と似た音が出るとされています。また、シベリアの諸民族や岩手県の一部でもこれがつくらていました。
ムツクリはムックリをこのように書き取ったもので、アイヌ語で口琴の意味です。主にクマザサなどでつくられていました。
イタシベはエタシペをこのように書き取ったものでアイヌ語でトドの意味です。
チレカレツはチレッテクッタル・レックタルをこのように書き取ったもので、アイヌ語でヨブスマソウの意味、
トマはアイヌ語でエゾエンゴサクの意味です。アイヌ民族はトマの根を食料として利用していました。アンラユロ・アンラユルはアイヌ語でクロユリの意味で、アンラコロをこのように書き取ったものです。アイヌ民族はこの鱗形を食料として利用していました。
フレイフイケはフレエフイ、あるいはフレエプイをこのように書き取ったもので、アイヌ語でかたくりの意味です。アイヌ民族はカタクリを、その根からでんぷんをとりだしてそれを粥に炊き込んで食べることに利用していました。
ヘカンベはペカンペをこのように書き取ったもので、アイヌ語で菱の意味です。アイヌ民族は、ゆでて乾燥したそれを炊き、また粥にして食べたりしていました。キナはアイヌ語で草の意味、シンシツはシンリツをこのように書き取ったもので、アイヌ語で根の意味、さらに樺太アイヌ語では四月の意味でもあります。

エナヲはエナオとも呼び、イナウをこのように書き取ったもので、アイヌ語で木幣の意味で、儀式時に神の世界と人間世界をつなぐ大切な存在となったものです。
コタンコロカムイ・カムイチカップはアイヌ語でシマフクロウの意味、
ノボリはヌプリをこのように書き取ったもので、アイヌ語で山の意味、
カタキは、オヒョウからとった糸を臍巻きにすること、カマカツヒはカマカプをこのように書き取ったもので、アツシ織をする際に織機の縦糸の上下を分離するための道具、
アフンカはアフンカニツをこのように書き取ったもので、横糸を通す道具、
ベカはペカウンニをこのように書き取ったもので、アツシ織機の上糸と下糸を分けているもの、
ヲサはウオサをこのように書き取ったもので、縦糸を整える道具、
アトスペラは横糸を打ち込むへらのこと、
イシトムシビはイシトムシプをこのように書き取ったもので、尻当てのこと、
アツトシカルはアイヌ語で木皮布を織ることあるいはアットウシを織ること、アツ、トシ、カルはそれぞれアイヌ語で集まるあるいは楡皮という意味、
トシは筋、カルは造るという意味で、
ルシはアイヌ語で衣服の意味、
アツシカラペはアイヌ語で織機の意味、
チミツフはアイヌ語で衣服の意味でルシとほぼ同義、
ホシイはホシピをこのように書き取ったもので、アイヌ語で帰る、戻るの意味です。

次回は松浦武四郎の知床紀行について書いていこうと思います。

アイヌ語の成り立ち3

2021-09-29 12:59:11 | アイヌ語
前回のブログでは、近世期にアイヌ語が登場する文書のうちの「蝦夷島巡行記」について紹介しました。

今回のブログでは、アイヌ語について記載されたもう一つの文書「蝦夷地周廻紀行」について書いていこうと思います。この文書は「蝦夷島巡行記」の2年後の享和元年(1801)のことになります。

「蝦夷地周廻紀行」の著者は磯谷則吉氏であり、磯谷氏は幕府から蝦夷地巡検を命じられた蝦夷地御用取締係の3人(松平信濃守忠明、石川左近将監忠房、羽太庄左衛門正養)のうちの松平信濃守忠明に随行し、箱館(現在の函館市)からムロラン、ユウフツ、シコツ、イシカリ、ソウヤを経てオホーツク海側を南下し、シャリ、クスリ(現在の釧路市)、ウラカワなどを周廻し、箱館に帰着するまでを書いたものです。

この「蝦夷地周廻紀行」では、宗谷地方においてアイヌの謡曲と題して様々なアイヌ語が記されています。
(半角の小さなカタカナは小さく発音する)
例えばパシクロ(アイヌ語でカラスのことを言う もとはパと発音する単語)や、
カバチリ(カパッチㇼをこのように書き留めたものでアイヌ語でワシの意味)、
レタチリ(レタッチㇼをこのように書き留めたものでアイヌ語で白鳥の意味)
フンベイ(フンペをこのように書き留めたものでアイヌ語でクジラの意味)
ムニ オシケ(ムン オッタをこのように書き留めたものでアイヌ語で草の中の意味)
アフカシ(アㇷ゚をこのように書き留めたものでアイヌ語で歩くあるいは歩いているの意味)、
メノコ(アイヌ語で女性の意味)、
ヘカチ(アイヌ語で子供の意味)
トウノ(トゥラノをこのように書き留めたものでアイヌ語で一緒に行くの意味)などがあります。

また、謡曲の説明が終わった次のところでは
ソヤ(アイヌ語で蜂の意味)
ヒリカニカリ(アイヌ語でよい道の意味)
タンネツプ(アイヌ語で太刀の意味)
エモシ(アイヌ語で短刀の意味でエムシをこのように書き留めたもの)
トウキ(アイヌ語で盃の意味)
イクバシ(イクパスイをこのように書き留めたものでイクパスイはトゥキとともに儀礼用に使われていたアイヌの民具)
ヤイカチノアン(アイヌ語で暇があるという意味)
シメシンキ(アイヌ語で大いに苦労するの意味)
シノウエン(アイヌ語で大いに難儀するの意味)
シャクマ(アイヌ語で波の意味)
ヲタニシテ(砂が固いのアイヌ語)
ルーピリカ(アイヌ語で道がよいの意味)
ポロンノオカイ(アイヌ語で多くあるの意味)
キキリ(本来は虫の意味だがここではアイヌ語で蚊の意味)
ブヤ(アイヌ語で穴の意味)
オマン(アイヌ語で入るの意味)
シュマ(アイヌ語で石の意味)

といったアイヌ語がこの周廻紀行には登場します。

また、アイヌ語地名ではオホーツク海側にあるトウブツについての説明でブツが港の意味のアイヌ語であると説明されていたり、網走の意味では、アバシリのうちのアバが網の日本語から来ているのに対してシリは数の子のアイヌ語であることが説明されています。

以上が「蝦夷地周廻紀行」にでているアイヌ語の概要です。

次回は松浦武四郎の紀行文について書いていこうと思います。


トゥキとイクパスイ



エムㇱ



エムㇱニㇷ゚


写真は手元にあった「先住民アイヌ民族」(別冊太陽より)



アイヌ語の成り立ち 2

2021-08-30 15:09:53 | アイヌ語
お時間が空いてしまい申し訳ございません。

前回はアイヌ語の原型と最古のアイヌ語辞書について書きました。
今回は、江戸時代の和人側によるアイヌ語の記載があるものを中心に書いていこうと思います。

 さて、文書中にアイヌ語が登場するものの一つに「蝦夷島巡行記」があります。
これは、1798年(寛政10)に江戸幕府が蝦夷地(現在の北海道)に派遣した江戸幕府の使節団のうち、西蝦夷地(現在の千歳市と恵庭市を除いた石狩管内と小樽市の一部、空知管内、上川管内の大部分、留萌管内、宗谷管内、オホーツク管内)の調査団に随行し、ほかに石狩川や苫小牧周辺などを巡見した公暇斎蔵(こうかさいぞう)氏によって寛政11年(1799)に取りまとめられたものです。

ここでは、主にアイヌ語地名や川の名前等についてまとめられており、主に石狩地方や宗谷地方、留萌地方などの川・山の名前等記載がありました。

アイヌ語地名では、
現在の札幌圏に関係するものとしては
イベツトウ(イベチトウと書いてあるものもあり)・トイシカリ(現在の江別市)、
フシコベツ(現在の札幌市)、
クタレウシ・シクツシ(現在の小樽市)
それ以外ではルルモッペ(現在の留萌市)
バッカイベツ(バツカイ、バツカイベイニ)(現在の稚内市)、
ヲシャマントモナイ、トベナイ、ウエンヘツ(現在の遠別町)、
テブレ・アンケシリ(現在の天売・焼尻島)、
シュシャンベツ(現在の初山別村)
ツクベシ(現在の羽幌町)
などがあります。

また、「かっぱ伝説」にまつわる部分をご紹介しますと、
文書中に書かれている語「ミリチ」は、かっぱの意味を表すアイヌ語と言われていますが、宗谷では主に蜆(しじみ)の意味として使用されております。

天塩では「ミリチ」は、かっぱの意味として使われていなかったようですが、道内各地の伝承にはあったようです。

上原熊次郎(詳細はアイヌ語の成り立ち1を参照)氏や田村すゞ子氏のものでは「ミントゥチ」をかっぱの意味として用いるとされています。
(ちなみにかっぱといえば札幌市内では定山渓温泉、札幌圏では小樽が有名です。)


話は地名に戻りますが、
現在の稚内市抜海である「バッカイベツ」の由来は、波が荒く、石や木が多いといったその地の特徴をあらわし、子供を歩かせるのも大変な場所であったことに由来しています。

また、アイヌ語の植物名であり、地名と関わるものとしては、留萌管内の現在の留萌市と増毛町の間にあった「タンテウシナイ」があります。
蓼の由来についてアイヌ語のタンテから来ていると説明されていたり、多くあるという意味をウシと言ったりするといった説明がされています。

また、現在の積丹町のアイヌ語については、「シャコタン」はもとは「シャココタン」と言っており、シャコはサㇰで夏、コタンは村といった意味であることが紹介されています。


アイヌ民族の男性の仕事関係のアイヌ語の紹介もあります。
ここでは、一例としてアイヌの男性が行っていた古式舞踊をアイヌ語で「スツウチ」といい、小さいころから練習していたものであるといった説明があります。

また、アイヌ民族が日常身に着けていた民具に関する説明もあり、例えば、アイヌ語で小刀のことを「マキリ」ということや、たばこのことは「セレンボ」といったりしたといったことが説明されています。魚の名前についての説明もありました。

以上が巡行記に書かれているアイヌ語の大まかな内容となります。

次回はもうひとつのアイヌ語について記載された近世期のもう一つの文書である蝦夷地周廻紀行について説明をしていこうと思います。










アイヌ語の成り立ち1

2021-08-18 13:09:49 | アイヌ語
アイヌ語についてこれから扱っていくうえで、まずはアイヌ語とは何か
といったことについて書いてみようと思います。

現在北海道北東北の縄文遺跡群の世界遺産登録で注目されている北海道ですが、
実はアイヌ語の原型はこの縄文時代にできていたといわれています。
この当時のアイヌ語についてはまだよくわかっていないことの方が多く
現に縄文時代の言語について解読するのは
これ以降もなかなか難しいことが考えられますが、
アイヌ語の原点に迫るといった点でも、
今後の縄文研究の一層の進展が期待されるところです。

また、知里真志保の分類アイヌ語辞典では、時々「古語としてこの語を使っていた」旨の記載があることから、ここでの「古語」がいつくらいの言語なのかや、擦文文化期や続縄文時代など、アイヌ文化以前の言語とのかかわりの有無について私自身は注目しております。

さて、アイヌ文化は文字を持たない文化として知られていますが、アイヌ文化期から使用されていたアイヌ語を初めて文字化したのは知里幸恵氏のアイヌ神謡集が有名です。

しかしながら、実はそれ以前にも和人による記録のなかにはアイヌ語が多く記録されています。
最古のアイヌ語辞書とされるものは、江戸時代後期にアイヌ語・ロシア語通訳として活躍していた上原熊次郎有次という人が書いた「藻汐草」になります。

このような古い時期からもうすでに和人側の視点からではあるが文字によるアイヌ語の記録が始まっていたことには驚きがあります。下にURLのリンクをつけておりますので、気になった方はそちらのリンクからwebページの方をご参照していただけると幸いです。

その後、寛政期(1789~1801)に入ると「蝦夷島巡行記」が書かれ、ほぼ同じ時期から加賀家による文書にもアイヌ語が登場してきます。そして、享和期(1801~1804)には「蝦夷地周廻紀行」、1800年代後半、大体1850年くらいから幕末の蝦夷地探検家松浦武四郎の紀行文等によるアイヌ語の記載がみられるようになります。
また、加賀家の記録は広く明治初期にまで及んでおります。

そのあたりについては、詳しくは次回またお話していきたいと思います。



藻汐草 上原熊次郎 アイヌ語・ロシア語通詞 最古のアイヌ語辞典編集者(1792年:
寛政4年 ラクスマン来航の年)
https://www.wul.waseda.ac.jp/kotenseki/html/ho02/ho02_05038/index.html