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「人はバカになるまで出世する」という法則(信じても良いですか?)【プレジデント】

2011年01月23日 19時05分18秒 | 感想&独り言!!

私から仕事を取ると単なる垢抜けしない~おじさんです。しかし私は自分を嫌いに成った事や嫌に成った事が一度も有りません。だから今でも平然と50年間付き合ってこれたのでしょう~(笑)

「人はバカになるまで出世する」という法則

 http://www.president.co.jp/pre/backnumber/2006/20060306/1076/

能力主義の下では、能力を発揮し成果を上げた人はどんどん昇進していくが、
いつかは能力の限界に達し、成果を上げることができなくなる。
すると、あらゆるポストは無能な人材によって占められることとなる。
心理学のこの法則をいまの企業社会にあてはめると、どんなことが見えてくるのだろうか。

 
 
ベルシステム24執行役員ベルシステム24総合研究所長兼ベルカレッジ統括長
松下信武 = 文
text by Nobutake Matsushita
まつした・のぶたけ●
1944年、大阪府生まれ。京都大学卒業。日本電産三協精機スケート部のメンタルコーチを担当。社会経済生産性本部キャリアコンサルタント養成講座試験委員。世界的な感情心理学者の学会ISREのアソシエートメンバー。
高橋常政 = イラストレーション
illustration by Tsunemasa Takahashiライヴ・アート = 図版作成
 
 

ローレンス・ピーター博士
の法則とは

「政界のプリンス」とか「財界のサラブレッド」と呼ばれる人がいるが、本人にとってはあまり愉快な表現ではない。「帝王」の称号であれば、自分の実力で勝ち取ったと感じ取れるが、「プリンス」や「サラブレッド」には「親の七光りのおかげ」という印象がつきまとう。歌舞伎や茶道などの伝統的文化以外では、親や先祖から受け継いだものを誇ることに、ある種の後ろめたさを感じるのはなぜだろうか。

 創業者の後継者になる運命に生まれついた経営者の多くが、部下からの冷たい視線を感じるとき、「自分はなりたくて社長になったわけではない」とか、「自分のやりたいことがやれる境遇に生まれたかった」と、やりきれない気持ちになるのは、「企業では本人の能力や努力をもとに昇進させるべきである」という考えを正しいと思っているからであろう。この例のように、非合理的な考え方をしたときに、人はネガティブな感情を引き起こすと心理学では信じられている[注1]。

 その一方で、「血統や縁故によらず、有能な人を昇進させる仕組みをつくったほうが、よりよい組織をつくることができる」という考えは実は間違っていると主張したのが、「ピーターの法則」で有名なローレンス・J・ピーター博士である。

 その真意は、能力主義を採用すれば、能力を発揮し成果を上げた人間はどんどん昇進していくが、いつかは能力の限界に達し、成果を上げることができなくなる。「無能レベル」に達した人はそれ以上出世しなくなり、すべての階層はやがて無能レベルに達した人で占められるようになる。つまり、能力主義のもとでは、人はバカになるまで出世するというのが、ピーターの法則である[注2]。

 能力主義の盲点は、昇進する前の能力を評価していても、昇進したあとの能力発揮度を予測していないことである。二世経営者や三世経営者が、親の七光りのおかげで経営者になれたという噂にむきになる必要はない。反対に、サラリーマン経営者が、能力や成果が評価されて経営者になれたと胸をはることもこっけいなことである。リーダーにとって、選考方法が問題なのではなく、リーダーになったあとで何をするのかが問題なのである。

 アウステルリッツ三帝会戦で勝利を収めたナポレオンも、ロシア遠征で敗れたナポレオンも、皇帝の地位にいた。ナポレオンを無能レベルに陥れたのは、彼の傲慢さである。係長が傲慢さによって自分を見失う危険よりも、部長が傲慢さによって破滅する危険のほうがはるかに大きい。そこで私からは、出世と無能の関係に関する次のような新たな法則を提示したい。それは「昇進レベルの高さと、同じレベルのまま無能になってしまうリスクの大きさは比例する」というものである。

 成功するためには自信が必要だが、心理学では自信は「健全な傲慢さ」とよばれることがある。傲慢は自信の一種ともいえるやっかいな感情である。成功体験が大きければ大きいほど、私たちは「不健全な傲慢さ」に囚われ、自分を見失ってしまう危険も増大する。

 ビジネスのリーダーだけでなく、世界のトップアスリートたちにも、どこか「とんがったところ」がある。誰がなんと言おうとも、絶対に自分のやり方を貫く自信は、彼らをトップの座に押し上げたメンタル的な要因の一つである。しかし彼らがメンタル的な賢さを失ったとき、「とんがり」は醜い傲慢さに変わってしまう。

 トリノオリンピックに参加するスピードスケート4選手のメンタルコーチを担当していて、彼らと接しながら常々考えることは、トップアスリートには「エレガントな傲慢さ」を身に付けてもらうことが、コーチの役割だということである。

無能上司の災いから逃れる三つの方法

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表1

 しかしバカになるまで出世したリーダーを頭に戴いた部下たちはたまったものではない。軍隊であれば部下は犬死にを強いられ、ビジネスであれば倒産の憂き目を見たり、失敗のツケを回される。表1を使えば、あなたの上司がバカになるまで出世した人かどうかを見分けることができる。あなたの上司が無能レベルに達していなければさいわいであるが、無能レベルに達していたときはどうすればよいのだろうか。そこで無能な上司の災いから逃れる三つの方法を提案したい。

方法1:上司からなるべく離れて仕事をするため、他部署と共同のプロジェクトに加わったり、顧客企業との共同でやる仕事を多くする。共同案件であれば、上司が指示命令できる範囲外の職務が多くなり、無能の被害を最小限に食い止めることができる。

方法2:上位上司がまだ無能レベルに達していなければ、上位上司と緊密に連絡をとり合って組織ミッションを達成する。しかし、この方法は無能レベルに達した直属の上司との人間関係を壊してしまうリスクが大きいので、あまりおすすめできない[注3]。

方法3:EQ的な解決方法としては、目標を達成するための方法を上司と粘り強く話し合い、チームとして成功するための行動をとっていくことである。たとえ上司が無能であっても、チームが成功すればよいという考え方である。話し合いのときに、決して上司を無能な人として扱ってはいけない。軽蔑の感情が相手に伝わると、人間関係を壊してしまうからである。上司が無能かどうかは、あなたのコントロールできない要因である。コントロールできないことを無理にコントロールしようとすると、いらいらしたり、意欲をなくしてしまい、あなた自身が無能のレベルに下がってしまうおそれがある。

 キャリア・カウンセラーの仕事をする中で、私は無能な上司に苦しめられている人には転職をすすめないようにしている。上司が無能だからといって転職していては、終わりのない転職と闘うことになる。さらにおそろしい話であるが、もしあなた自身が無能レベルに達していれば、すべての上司が無能に見える。無能レベルに達した人が転職するとすれば、キャリアダウンせざるをえない。

 あなた自身がバカになるまで出世しているのか否かを表2で評価していただきたい。すでに無能レベルに達している人や、無能レベルに近づきつつある人には三つの対策を提言したい。ピーター博士も言っているように、昇進を断ったり、降格を自ら申し出ることは、社会的に見て奇異な行動と周囲にとられてしまうリスクがある。プロ野球で、打席がまわってきたときに、自ら代打をたててほしいと監督に申し出たら、打順を下げられるばかりか、二軍行きを言い渡されるリスクがあるのと同様に、もとの職務に復帰できないばかりでなく、閑職においやられる危険が大きすぎる。そこで実際的な対処法を提案したい。

手柄は部下のもの失敗は自ら引き受ける覚悟で


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表2

対策1:コロンブスの卵のような方法だが、無能レベルに達していない、優秀な部下で組織を固めていくことである。自分は仕事をする能力がないと腹をくくることはつらいことだが、事実は事実である。人生を幸福に生きるためにもっともよい方法は「汝自身を知る」ことである。あなたの部下たちはいずれあなたを追い越して昇進していくだろうが、無能なあなたが変に頑張って、組織をめちゃくちゃにするよりはずっとましである。優秀な部下がのびのび力を発揮し、組織目標を達成すれば、あなたの手柄になり、さらに昇進させられるかもしれない。そのためには、手柄はすべて部下のものにして、失敗はすべてあなたが引き受けるとよい。あなたのもっとも重要な仕事は社内に目を光らせて、優秀な人材をひっぱってくることである。

対策2:あなたの会社の経営者が有能であれば、早晩あなたが無能レベルに達していることに気づくはずだ。その場合には、あなたと部下の心身の健康を維持することに留意しながら解任のときをじっと待てばよい。なんとか事態を打開しようとして、部下に無理難題を押し付けると組織が疲弊し、大きなミスを犯してしまうかもしれない。直属上司にはそれとなく後任の人事を相談したり、優秀な後継者を育成しておくことも忘れないことだ。名コーチは必ずしも名選手だったわけではない。あなたが無能のレベルに達していても、あなたより優秀な人材を育成することはできるはずだ。

対策3:能力不足に無能の原因を求めず、無能な行動をしていることに原因を帰属させることである。能力がないから、無能ではないかと反論する読者もおられるだろう。優秀なアスリートは、自分の失敗を人のせいにせず、自分自身で改善でき、改善に時間がかからない原因を求める傾向があるというのがスポーツ心理学の調査結果からいえることである[注4]。能力は先天的な部分もあるが、後天的な部分を開発するには時間がかかる。失敗の原因を能力のせいにするとやる気をなくし、傷口を広げてしまう。あえて自分が無能であるのは、無能な行動をとっているためと考え直し、有能な人の行動を見習うのである。赤ん坊は模倣することによって知能を発達させてきたことを思い出していただきたい[注5]。行き詰まったときは原点に回帰すればよい。

 私たちは、自分が無能レベルにあることを認めたがらないし、認めることにこころの痛みを感じるのはなぜだろうか。私たちが生活している文化が「成功する」ことや「競争に勝つ」ことに価値を見出す文化だからという考えは、説明の一つになりうる。現代の日本文化が血縁的な結びつきや、自然との調和が重視される文化であれば、ビジネス界で有能か無能かということに人々は大きな関心を払わないだろう。

 このように考えれば、日本のビジネスパーソンが常識だと信じている能力主義は、歴史的にも、文化的にもたいへん限定された価値観に基づいており、グローバルな視点にたてば非常識だと言えるのではないだろうか。私たちは自分自身と他人の無能に対して、もう少し寛容であったほうが、生きやすくなることは確かなようだ。



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