
ファンタスティック・カップル 第9話(4)
ビリーはチャン・チョルスの家にやってきた。
「彼女がアンナと会ったら大変だ。何とかしなければ・・・アンナは家にいるのかな・・・」
辺りをうかがいながら考えた。
「彼女も写真を見たら黙ってるはずがない。まだバレてないんだ」
誰かの声がした。子供たちの声だった。
ビリーは身を伏せた。
「僕が先だ」
子供たちは駆けっこして家に駆け込んでくる。
「ただいま~!」
子供たちに見られて怪しまれるのはまずい。ビリーはとっさに盥の中に隠れた。
しかし、帰ってきた子供らは家にはいっていかない。長男のジュンソクがすぐサッカーボールを持ち出してきた。
「おばさんもいないからサッカーやろう」
「うん、やろう」
野外に設置されたテーブルと椅子の場所にカバンを置き、子供たちはサッカーを始めた。
ビリーは盥から出られなくなってしまった。
「どうするか・・・」
チョルスはつぶやいた。
そばにいたドックが手を止めてドックを見る。
「サンシルのやつ、今日も食事してる時、しょっちゅう俺を見てたんだ」
「恋人だなんて言ったからさ」
「まいったな・・・記憶が戻れば、それも解決できるよな?」
「そりゃそうだろう。好きだったと信じてるのも錯覚なんだから」
「・・・」
「思い出したら、恨みの方でドキドキさせられるな」
「その方がマシだ」
「ああ、兄貴は違うようでよかったよ。兄貴の方が錯覚でドキドキしてたら悲劇だろ」
チョルスは興奮した。
「俺がサンシルにそうなるわけないだろ。仕方なく一緒に住んでるんだ・・・本当は俺の敵なんだぞ。まったく・・・何、言わせるんだ」
ボールを蹴って子供たちの遊びは続く。
ボールはビリーの入っている盥に当たったりした。
狭い盥の中で身動きも不自由なビリーは身体に苦痛を覚えだす。
「あ、足がしびれた・・・! これじゃあまずい。子供しかいないし、チャンスを見て早く逃げよう」
ビリーはそーっと盥を持ち上げる。狭い隙間から外を窺う。
すると、そこに駆け込んでくるカンジャの姿が目に入った。
「お姉さ~ん・・・! お姉さん、ここにいる?」
ビリーは盥を閉じた。
「あの女だ」
カンジャは子供たちが遊ぶのを見て「一緒にやろう」と声かけた。
カバンを盥のそばに投げ捨てて子供たちと遊びだす。
盥を開けてビリーはそれに気付く。
「あっ、写真だ・・・あれを持って早く逃げよう」
盥から外に出ようとした時、カンジャの声がした。
「お姉さ~ん」
見るとアンナとケジュが仕事を終わって引き上げてくる。
「あら、カンジャもいたの?」
ケジュはアンナを見た。
「三枚肉(サムギョプサル)とマッコリにしよう。チョルスに電話して」
ビリーはあわてて盥を閉じた。
チョルスたちも引き上げてきてみんなでバーべキュが始まった。
「焼けた。さあ、食べて」
「たくさん食べてよ」
「カンジャはそこに座って」
ビリーは逃げ出す機会を得られないまま、盥の中に潜んだままだ。
アンナはおいしそうにマッコリを飲む。
「もう一杯ちょうだい」
ケジュにおかわりをせがむ。
「まだ飲むの? お酒が強くなったのね。もう踊らないでよ。うっふふふ」
子供たちもおいしそうに肉を食べている。
カンジャは肉を焼くドックをうっとり見ている。彼女のドックに対する憧れには強いものがあった。
ドックはカンジャのその目に気付く。狼狽する。
マッコリを飲んでいい気分のアンナはチョルスを見た。チョルスもアンナの視線を感じた。
アンナは言った。
「まだ酔ってない。心配しないで」
ケジュが訊ねる。
「二人はいつ結婚するの?」
びっくりしてチョルスは空咳をする。
アンナはあっさり答える。
「そんな気はないわ」
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