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雨の記号(rain symbol)

韓国ドラマ「30だけど17です」(連載101)



韓国ドラマ「30だけど17です」(連載101)




「30だけど17です」第12話(インターミッション)②
☆主なキャスト&登場人物

○シン・ヘソン➡(ウ・ソリ)
○ヤン・セジョン➡(コン・ウジン)
○アン・ヒュソプ➡(ユ・チャン)
○イエ・ジウォン➡(ジェニファー(ファン・ミジョン)
○チョ・ヒョンシク➡(ハン・ドクス)
○イ・ドヒョン➡(トン・ヘボム)
○チョン・ユジン➡(カン・ヒス)
○ユン・ソヌ➡(キム・ヒョンテ)
○チョ・ユジョン(イ・リアン)
○ワン・ジウォン(リン・キム)
○アン・スギョン(チン・ヒョン)


★★★ 

 ソリはあの時の感触と手ごたえを思い返しながらバイオリンを奏でた。
 たまたまそこにウジンが通りかかった。足を止めてソリの演奏に耳を傾けた。
 ウジンはソリの演奏を聴きながらソリの言葉を思い返した。リン・キム監督の演奏を一緒に聴いた後に聞かされた話だった。リン・キム監督のバイオリン演奏を聴きながら彼女は涙を流していた。


 ― 羨ましかったんです。とても悔しかった。”私もステキなドレスを着てあんな舞台に立てたはず、何事もなかったら”って考えると…。
 
 演奏の安定さを保てず、ソリの演奏は中断した。 最後まで演奏を続けられなかった自分にソリはため息をつく。これが今の自分なのだ。
「ダメだわ…」
 ソリはバイオリンを弾かせてくれた女性を見た。バイオリンを返しながらお礼を述べた。
「ありがとうございました」
 そこを離れるソリの顏には演奏を完走できなかった悔しさがにじんでいた。


 バイオリンをソリから返された女性は不思議そうに自分のバイオリンを触り、眺めまわした。どこからあんなきれいな音色が出てきたんだろう、との顏で…。
 その女性の前にミョンファンは立った。
「失礼ですが、君がシューマンの”三つのロマンスを”を?」
「いいえ」女性は答えた。「知らない女性がここで引きましたけど」
 女性の話にミョンファンはかすかに首を傾げた。

★★★


 リン・キムはさっきのバイオリンの音色からウ・ソリが奏でていたのに気づいていた。
 ミョンファンはリン・キム監督の待つ場所に戻ってきた。
「2005年のオーディションで―私が協演者に選んだ子の近況を知ってるか?」
 リン・キムは困惑した。知っているが答えられない。
 もちろん、彼女のことは覚えている。他の参加者も含め、むしろ忘れられないほどに。
 他の者たちも彼女を噂しバイオリンに舌を巻いていた。


― ウ・ソリだっけ? テリンよりはるかに上手だったよね。
― コンクールは正確さが大事。それにテリンにはコネがある。ピアニストの母親に音大教授の叔父。


「…いた気はしますが、覚えていません」
「音楽をやめたのかな?」
 リン・キムは黙って答えなかった。


 ベンチに腰をおろし思い通りに動かない両手を見つめてソリは沈みこんでいた。バイオリン奏者としての技術は眠っていた13年ですっかり錆びついていた。
 そこにウジンの車が走ってきてクラクションを鳴らした。
「あのさー、代表が僕を捜していたら―近くの海で息抜きしてると伝えてください」
「わかりました。いってらっしゃい」
 ウジンの車はゆっくり走りだした。
 しかし、目の前のロータリーを一周してすぐ戻ってくる。クラクションを鳴らす。
 ソリは顔を上げる。
「ヒョンが僕を捜していたら…そうだ、すぐ近くにあって気分がスカッとする―海で憩っていると伝えて」
「分かりました。いってらっしゃい」
「ダメだ、こりゃ〜効果なしだ、ブツブツブツ〜」
 ウジンは顔を上げた。
「い、い、一緒、一緒に」
「一緒に行ってもいい?」
「えっ?」


 ウジンはソリを乗せて静かに車を走らせた。
 車に乗った後もソリの表情は変わらない。じっとどこかを見つめ、考え込んでいる。
 ウジンは訊ねた。
「窓を開けようか?」
「いいえ、大丈夫です」


2人は海岸の磯と砂地へおりてきた。先に波打ち際に歩いたソリは気持ちもだいぶ和んだようで広い海を眺めて「ヤッホー!」と叫ぶ。
「海で”ヤッホー?”
 ウジンは呆れる。
「木霊が返って来るとでも?」
 ソリはもっと大きな声で叫ぶ。
 ソリのはしゃいでる姿にウジンは笑い出す。
「連れてきて正解だ」 
 ソリの横に立ってウジンも大きな声で叫んだ。
「ヤッホー!」
 海の景色に気分を解放された2人は海岸を歩いた。
「さっき弾いてた曲は? とてもよかったけど」
 ソリは足を止めた。
「何のこと? …見てたんですか?」
「…」
「だからここに…」
 ソリは歩き出す。
「シューマンの三つのロマンスです。副題は”素朴に 心から”」 
「”素朴に 心から”か」
「…」
「バイオリンを中断した理由を聞いてもいい?」
 ソリは少し間を入れた。
「10年間、意識不明でした」

 ウジンは足を止めた。
 そうだったのか…ソリの何もかもが見えてきた気がした。


 ― 取り戻したい。私の時間…


 ソリの呟いていたいつかの言葉は夢でなく彼女のほんとの気持ちだったのだ。
 
 ― だっておじさんは担任の先生と同い年…そっか、私は今、30歳だった。
 ― この木は10年前に植えたから…違った、23年前だったわね。ずいぶん大きくなった…私は昔のままなのに…


 彼女の言っていた言葉はすべて10年の空白に符合する。彼女の言葉にひと月前や半年前の出来事がなかったのは長い年月の眠りのせいだったのか…?
 
 そのことに気付くことが出来なかった。表面的な理由で人格形成の未熟さをついてソリを一方的に傷つけた自分にウジンは嫌悪を覚えた。


 ― 君は子供か? いい年してそれも分からない?


 ウジンは居たたまれない気持ちでソリを見つめた。ソリはウジンを振り返った。
「だから、留学も出来なくて」
「…」
「バイオリンを弾くことだけが唯一の取り柄だったのに」
「…」
「寝てる間にこの指はなまって目覚めたら30歳でした。そのせいで、今でも自分の年齢に慣れないし、いろいろと難しいことも多くて」
「…」
「外見は大人なのに中身は子供のままだから」
 ウジンは何の言葉もかけられない。
 黙っているウジンを見てソリは苦笑した。
「またまた…聞かれてもいないことをべらべら話しちゃって」
「そうじゃないです」ウジンは言った。「実は気になってたんです。おそらく、何かあるだろうとは思ってたから」
「…」
「でも、僕の想像よりも…すみません。知らなかったとはいえ、今までひどいことを言ったりして」
 ソリは持ち前の明るさで答えた。
「いいんです。私は平気です」


 2人はまた歩き出して海岸の砂地に並んで腰をおろした。
 穏やかな海に目をやりながらソリは言った。
「インターミッションを?」
 ウジンはソリを見た。
「公演の途中に入る休憩時間のこと?」
 ソリは頷いた。



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