
アンナは子供たちと縄跳びをやっていた。
「おばさん、下手だな」
グンソクがからかう。
「うるさい」
アンナはグンソクらのように上手になろうと一生懸命だった。
「ああ、もう~、なぜ私にはうまく跳べないの?」
「おばさん、もっと早く回さないと」
ジュンソクが見かねてアドバイスする。
「早く?」
「うん」
ジュンソクは実技でお手本を見せる。
「わかった。どいて」
アンナはジュンソクに言われた通り、ロープを早く回して跳んでみる。
すぐに手ごたえをつかみだす。
「おっ、できた、できたわ」
嬉しさが顔に広がる。子供たちといっしょに遊びながら、チョルスの帰りを待つ楽しさがそれに加わる。
アンナのその様子をうかがいながら、ビリーの心は次第に切なさで染まっていった。
「ほら、できる、できるわ」
アンナは巧みなロープさばきでピョンピョン跳ぶようになりだす。ジュンソクらはアンナの縄跳びに感嘆の声をもらし、手を叩いた。
「できた。できたわ」
縄跳びをやっているうち、アンナはビリーの存在に気付いた。縄跳びをやめ、ビリーの方に近づいていく。
「何か用?」
「僕はここに忘れ物をしたようです」
「何をです?」
「妻の指輪です」
「そんなの見なかったけど?」
「そうですか…」
「あなたはいつも大事な物をなくすのね。猫もそうだし、指輪もそう」
「だからこうして探しにきました」
「ここにはないわ」
話をきりあげ、アンナは背を返す。
ビリーはアンナを呼び止める。
振り返ったアンナにビリーは言った。
「僕が探しに来たことを忘れないでください」
「…?」
「大事な物を探しに来たことを覚えておいてください」
「覚えておくわ。もしも見つけたら返すわね」
「楽しそうですね、いつも…とても幸せそうだ」
アンナの脳裏をチョルスの顔がよぎった。自然にうれしさがこみあげた。ビリーに笑顔を残し、アンナは黙って子供たちのところに戻っていった。
「おばさん、それ、僕にも教えて」
グンソクが言った。
「自分で努力しなさい。ほら」
アンナはグンソクの手を取った。
「もっと短く持って。ここを、そうよ。跳んでみて」
また縄跳びを始めながら、アンナはビリーの方を見た。ビリーは背を返し、寂しそうに引き揚げていった。
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