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雨の記号(rain symbol)

韓国ドラマ「病院船」から(連載201)

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  韓国ドラマ「病院船」から(連載201)




「病院船」第19話➡執刀医の不在③


★★★


「いいですか、ソン先生。あなたは善人か―それとも偽善者か?」
「…」
「人の命は平等だと―本気で思っているのかな?」
「いいえ」
「では、どういうことだ」
「命の不平等をなくすために、医療は無償で提供されるべきなのです」
「患者の名前はキム・ソンヒ?」
「そうです」
「患者を救いたいか?」
「当然じゃないですか」
「ならば取引に応じなさい」
「命で取引はしません。命は1つです。その価値は神であっても決めることは許されません」
「…」
「どうか、賢明なご決断をお願いします」
 ウンジェは深々と頭を下げた。
「残念だが、話はもう終わりだ」
 チャン会長は立ち上がった。ドアを開けて無言で出ていった。


★★★


 「”命の価値は神も決められない”だと?」
 側近を従えて歩きながら、チャン会長は悲鳴にような声を漏らした。
「何とも強情な娘だ。まったく折れない。妥協しない」
 立ち止まり、首の後ろに手を回した。当てがって痛そうにした。
「宿に指圧師を?」
 1人が伺いを立てる。
「いや、ヴィラに呼べ。今日はスパで身体を休める」
「分かりました。すぐ手配します」
 男は深々と頭を下げ、もう一人に対して顎をしゃくった。




 ウンジェは廊下に出た。手術の許可をキム院長やチャン会長から得られなかったことに落胆した。ため息をつき、天を仰いだ。
 ここまで時間を引っぱった以上、いよいよ転院はさせられない。手術でのリスクも高まって来るばかりだ。
 苛立ちと苦悩を募らせるのはウンジェだけではなかった。ヒョンたちも同じだった。
 心配を強めているヒョンらのところへウンジェがやってきた。
「どうなった?」
 ヒョンが訊ねる。
 ウンジェは黙って首を横に振る。
「手術―できないの?」とジュニョン。
 ウンジェは力なく頷く。
「誰が…誰が反対を?」
「ジュニョン…」
 ヒョンはジュニョンを見た。
「院長なの?」
「いいえ」とウンジェ。
「ドゥソンですか?」とジュニョン。「まさか、院長は言いなりに?」
 ジェゴルは目を落とす。
「チャ先生―!」
「いいんだ」とジェゴル。「正直に話して―その方が解決できる」
「…」




 キム・スグォンは屋上に上がって来ていた。彼は苦悩していた。
患者の命と医療のビジネスを天秤にかけ、明解な理念に従えない自分がそこにいる。首を絞めつけ、思考の自由を奪っているのは明らかに自分の手だ。それを振りほどけないでいる自分に、スグォンはもどかしさを覚えていた。
 スグォンが考え込んでいる間にも、患者は次々と病院に運び込まれて来る。
 この病院でウンジェはなくてはならない存在にまでなった。そんな彼女を解雇しなければならないドゥソングループと取り交わした契約が、どれほど歪んで醜いものなのかは自分が一番分かっていることだった。
 しかし、ウンジェが救急医療の現場で活躍すればするほど、病院経営が圧迫されてきているのもこれまた現実だった。
 スグォンはその苛立ちを救急室をまかなうカン・ドンジュンにぶつけて来た。
「未収金が増えれば病院の経営は危うくなって来る。救急室を閉鎖することになるぞ」
「でも、身元不明だからと追い返せません」
 その言葉はウンジェの行動を弁護する意味も含んでいただろう。
 スグォンの気持ちの隙間に付け込んで来たのがチャン会長だった…。
 スグォンは大きくため息をついた。


 
 元妻の病床に手をかけたまま事務長は大きくため息をついた。
 患者の”死のリスク”は時間を追って高まり続けている。
 そんな患者を目の前にしながら、担当医のミョン・セジュンもウンジェもゴウンもただ見守るしか出来ないでいた。
 事務長は立ち上がった。ミョン・セジュンに訊ねた。
「ソンヒはどうなるんですか?」
 ミョン・セジュンはただ黙っている。
 事務長はウンジェを見た。
「ソン先生」
「お子さんは病院に?」
 ウンジェは訊ねた。
「ソン先生…」
「…お子さんを呼んだ方がよさそうです」
「それじゃ…諦めるのですか? 何もできずに、このまま…?」
 その時、誰かの声がした。
「諦めません」
 救急室に入ってきたのはキム・スグォンだった。カン・ドンジュン
と息子のジェゴルが後ろに従っている。
「ソン先生。君らしくないぞ」
「院長…」
 ゴウンはヒョンに笑顔を向けた。
「患者を手術室へ」
「麻酔科医を2人呼んだ」とドンジュン。「ミョン先生が摘出し、ソン先生が移植を行う。それでいいだろ」

 ウンジェの目は潤んだ。
「院長…ありがとうございます」
 深々と頭を下げた。

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